attitude クリエイターの言葉

カンヌで絶賛された監督が描く、人間味ある北欧の妖精。

インタビュー

超自然的なミステリーを使って、心の痛みや感情を描きたい。

アリ・アッバシ|映画監督

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個性的な映画作家を多く輩出している北欧だが、2018年カンヌ国際映画祭で「ある視点」大賞を受賞した『ボーダー 二つの世界』で圧倒的な注目を浴びたイラン系デンマーク人アリ・アッバシは、いま最も注目すべき監督のひとりだ。ハリウッドでもリメイクされた『ぼくのエリ 200歳の少女』(08年)の原作『MORSE―モールス―』の著者で、スウェーデンのスティーヴン・キングと呼ばれるヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの短編を基にした今作は、北欧の伝承に登場する妖精がモチーフのミステリーホラーだ。

「『ぼくのエリ 200歳の少女』を観た時、ファンタジーと現実を同等に捉えて物語を構築している点で、とても共感したんだ。『ボーダー』の基になった短編もインテリ的なひねりを多く含んでいるにもかかわらず、頭でっかちにならないで人間味があるところに惹かれたよ」

曖昧で人間味のある、北欧の妖精を取り入れた。

主人公は特殊能力を持っているが、他人と違うことで常に疎外感を感じながら生きてきた女性。自分とどこか共通点のある謎の旅行者と出会い、自身の真の姿を知っていく。

「彼女は、ある人から見れば醜いといえる。いっぽうで、違った視点から見ると“完璧”なわけです。通常こういう物語はシリアスな社会派かファンタジーか二極化しがちだけれど、この物語は見事にその真ん中に位置する。超自然的な物語ともいえるかもしれない。でも主人公の痛みや感情は本物だし、リアルなんだ」

神話上のキャラクターをうまく取り入れたことで、北欧マジックリアリズムともいえるこの作品は、唯一無二の世界観を創り上げることに成功している。

「ヴァンパイアやゾンビは消費され尽くしてイメージが固まっている。でもこのキャラクターは掴みどころがなく人間味があって、それがいい」

“異質な何か”を媒介することでダイバーシティというテーマを掘り下げた点で、アカデミー賞受賞作『シェイプ・オブ・ウォーター』(17年)を引き合いに出されることも多い。実際に、監督のギレルモ・デル・トロから大絶賛されている。

「シリアスな題材と政治的な様相をファンタジーで創り込んだ『パンズ・ラビリンス』(06年)は大好きだ。超自然的なストーリーながら本物の感情を描くという点でも、映画作家として同じ野心を感じる。ただ僕の場合、この作品はうまくいったけれど、次回作はどうなることやら……未知数だと思っているよ!」

Ali Abbasi/アリ・アッバシ

1981年、イラン生まれ。スウェーデン・ストックホルムへ移り、建築学の学士号を取得後、デンマーク国立映画学校で演出を学ぶ。初の長編『Shelly』(英題)は2016年のベルリン国際映画祭でパノラマ部門に選出された。

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違法なものを見抜く特殊能力を認められ、税関で働いているティーナは、勤務中に怪しい旅行者ヴォーレと出会う。本能的に何かを感じたティーナは彼に自宅の離れを提供し、次第に親密になっていくが……。特殊メイクのクオリティの高さでも話題を呼び、2019年アカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネート。『ボーダー 二つの世界』は、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国にて公開中。

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*「フィガロジャポン」2019年12月号より抜粋

interview et texte : ATSUKO TATSUTA

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