伝説の個展から2年。アーティスト小松美羽が再び台湾へ!

インタビュー

国際的に活躍する現代アーティスト小松美羽の、2年ぶりとなる台北での大規模個展『神祈 Prayer』がスタートした。初日の12月7日(土)にはそのオープニングイベントとして、同市内のパブリックスペースでライブペインティングが開催された。

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個展オープニングの前日である12月6日(金)、ギャラリー内で行われたVIP向けのライブペインティングにて。

台湾で「グローバル籍のアーティスト」、「映画『千と千尋の神隠し』の主人公の生き写し」などと讃えられ、絶大な人気を誇る小松美羽は、過去に伝説を残している。

さかのぼること2年。台北のギャラリー、白石畫廊・台北(Whitestone Gallery Taipei)で行われたライブペインティングには1,000人以上の台湾人が3時間以上行列し、道に人があふれ出てギャラリーが警察署に届け出を出すほどの事態に。会場内には入場制限がかかり、100人ずつ入れ替わらせたものの、最後までひと目も見られない人が続出。さらに、個展での作品は瞬く間に完売。そんなニュースとともに、小松美羽は台湾中にその名を轟かせた。

今回はできるだけすべての来場者にライブペインティングを観てもらいたい、アートを通して日台交流をしたい、との小松の想いに台北市政府観光伝播局が共感。そのバックアップを得て、日本人アーティストとして初めて台北でいま最も賑わう話題のエリア、信義のパブリックスペースでのライブペインティングを開催することとなった。ライブペインティング当日は、パブリックスペースを囲む建物の2階まで人であふれかえるほどの盛況ぶりで、描きあげた絵は3分で即売するなど、今回も新たな伝説を残した。

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12月7日(土)、信義のパブリックスペースで開催されたライブペインティング。

個展がスタートする前日、ギャラリーのVIP向けにクローズドで行われたライブペインティング直後の小松美羽に、いまの想いを聞いた。

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ライブペインティングを終え、絵の具に染まった白装束を纏ったまま笑顔でインタビューに応じてくれた小松美羽。

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今回の個展は、台湾での集大成。

−−ライブペインティングは大盛況でしたね。ギャラリーのVIPたちが記念写真やサインを求めて、いつまでも行列を作る姿が印象的でした。さまざまな国で活躍する小松さんは、台湾の人たちにどのような印象をお持ちですか?

台湾の方々はいつも優しく迎えてくださるので、とてもありがたいです。印象的だったのが、2年前のライブペインティングで絵を描き終えてふと我に返り、多くの人が最後までひと目も観られなかったと気付いた時のことです。「せっかくギャラリーまで来て、2〜3時間も並んだのにひと目も観られないなんて」と怒る方もいらっしゃるかもしれない、と覚悟したのですが、逆に皆さんが「大成功でよかったね!」と拍手してくださって。その寛大さにとても驚きました。

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ギャラリーでのライブペインティング直後の小松美羽。

−−今回の個展タイトル『神祈 Prayer』にはどのような思いを込めましたか。

前回の個展から台湾とのご縁が始まって、HTC VIVE ORIGINALS()とVR作品『祈祷=INORI』でコラボレーションすることになり、その製作のために何度も台湾を訪れました。そのたびに現地の皆さんからたくさんの祈りを感じて、それにこたえる集大成のような展示にしたいと思ってこのタイトルを付けたんです。

VR作品のテーマも「祈り」ですが、こちらは宗教や富の有無などにかかわらず、祈るという行為は平等であることから、世界に向けて発信する作品にふさわしいと思ったので、このテーマを選びました。

HTC VIVE ORIGINALS世界におけるバーチャルリアリティの先駆者、HTC CORPORATIONのコンテンツ部門。

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今回の個展のテーマでもある大型作品『神祈 Prayer』の前で。

−−『祈祷=INORI』は今年、世界三大映画祭のひとつであるヴェネツィア国際映画祭のVR部門にノミネートされ、招待作品となりました。今回このVR作品は台北の個展会場でも体験できるそうですね。

VRのために360度から撮影されるというのはとても緊張しましたし、製作過程では紆余曲折ありました。でもHTC VIVE ORIGINALSのプロジェクトマネージャーがとても気を遣ってくださって。台湾製の筆を作ってくれたり、仕事以外でも自ら飲み物を買ってきてくれたりと、私たちを尊重してくださったので、最後までやり遂げることができたと思います。実際にヴェネツィアで完成したものを確認した時、チームの苦労が形になったことに身震いするくらい感激しました。

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ヴェネツィア国際映画祭のVR部門にノミネートされた『祈祷=INORI』は、個展の会場内にて体験可能だ(事前予約制)。

−−小松さんは著書でも「いにしえから伝わるその土地の人々の祈りの色を作品として描き出す」とおっしゃっていますが、台湾という場所についてはどのように感じていますか?

台湾には温泉もあり、地脈のエネルギーが大きいんです。そして周りを海に囲まれている島国なので、火と水が交わったような色味を感じます。この点は日本と似ていますが、そのバランスが違うんですね。今日のライブペインティングでは、大地の底から吹き上がってくる龍を描きました。

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絵の中央に、大地の底から吹き上がるように龍が現れるさまが描かれている。

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人々の祈りを描きたい。

−−台湾に滞在中も作品作りをしていて、観光をする時間がほとんどないと伺いましたが、それでもお寺には行かれたのだとか。

はい。お寺に行って自分が祈るというよりは、「この土地の氏神様のところに来ている方たちの祈りを絵にしていきたい」という気持ちを強く持つようになりました。私は毎年タイに修行に行っているのですが、そこで教えていただいた話がとても印象的で。

「とても有名な僧侶がいた。僧侶は毎朝見かける娼婦のことをとても汚れていると思っていた。ある日ふたりが同時に亡くなり、神は僧侶を地獄へ、娼婦を天国へ行かせると決めた。それを知った僧侶は、神にどうしてかと問うた。『私は毎日あなたに祈り、皆からも先生と呼ばれ慕われたのに、どうして私が地獄なのですか。あの女は娼婦で汚れているんですよ』と。神は『あなたは何も知らない。彼女は娼婦になるしか術がなかったけれど、どんな時でも常に祈り続けていた。あなたは彼女を汚れていると思うのではなく、彼女をお救いくださいと祈るべきだったのだ』と答えた」……このようなストーリーです。その話を聞いてから、祈るということについて深く考えるようになりました。

−−明日のパブリックスペースでのライブペインティングにはどんな気持ちで臨まれますか。今日は雨でしたが、晴れるといいですね。

雨の中でライブペインティングをするの、実は好きなんです。大いなる力が渦巻いているのを感じられるので、その中で描くのはおもしろくて。ライブペインティングの時にはいつも、瞑想して深いところまで入ってから、突き上げるように描いていきます。スピードが大切なのでゆっくり考えている時間はなくて、感じたままに描き上げる感じです。明日は大きな金箔のキャンバスに描く予定なので、しっかり備えたいと思います。

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12月7日(土)のイベント当日には雨は上がり、多くの台湾人の前でライブペインティングが行われた。

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アート市場で感じる、台湾の存在感。

−−今回も台湾での個展のためにたくさんの作品を描き下ろしたそうですが、前回同様、作品はすでにほとんど買い手が決まっているそうですね。

ありがたいことですよね。いまのところ私の絵を買ってくださる大半が中華圏の方々なのですが、台湾はその中でさらに過半数を占めていて、とても大きな存在です。2,300万人ほどの人口で、これだけアート市場に存在感を示しているのも、台湾のすごいところだと思います。

また、日本で好まれる絵はキャンバスのサイズが20〜30号(幅727〜910cm)が基本ですが、台湾では大きな絵が好まれるようで、100号(幅1,620cm)くらいが普通なんです。コレクターの方が、リビングにどーんと飾っている写真を見せてくださったりします。

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台湾人コレクターからも熱い眼差しが向けられる。


台北での個展は、2020年1月5日(日)まで開催される。年末年始に台北を訪れる人は、台湾の人々を魅了した彼女の作品をぜひ現地で見届けてほしい。

そして日本国内では、今年12月1日に大阪・なんばに開業した、建築家の隈研吾が設計を手がけた「ホテルロイヤルクラシック大阪」に小松美羽の作品が常設展示されている。そして来年2月29日(土)には1日かぎりの展示会とトークショーが行われる予定だ。小松美羽が「祈り」を込め、全身全霊で描く作品たちに出会いに訪れたい。

小松美羽 Miwa Komatsu
1984年長野県生まれ。女子美術大学短期大学部在学中に銅版画の制作を開始。20歳の時に制作した『四十九日』が称賛され、プロの道へ。2014年に出雲大社へ作品を奉納。15年、庭園デザイナー石原和幸が「チェルシーフラワーショー」で金賞を受賞した作品『江戸の庭』に置かれた有田焼の狛犬が大英博物館日本館に永久展示収蔵される。同年、世界で最も有名なオークションハウス、香港クリスティーズに出品・落札。19年11月「第48回ベストドレッサー賞(学術・文化部門)」を受賞。
https://miwa-komatsu.jp

『神祈 Prayer』
会期:開催中〜2020年1月5日(日)
会場:白石畫廊・台北(Whitestone Gallery Taipei)
台北市內湖區基湖路1號1樓
Tel. +886 2-8751-1185
営)11:00〜19:00 
休)月
www.facebook.com/WhitestoneGallery.Taipei
小松美羽 展覧会&対談トークショー
開催日:2020年2月29日(土)
会場:ホテルロイヤルクラシック大阪
大阪府大阪市中央区難波4-3-3
Tel. 06-6633-0030
https://hotel-royalclassic.jp

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躍動感あるアートで世界を繋ぐ、小松美羽の個展が開催!

photos:TOSHIYUKI KUMAGAI, interview et texte : YAEKO KONDO

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