編集KIMのシネマに片想い

『カイロの紫のバラ』と、シネマな恋愛。

編集KIMのシネマに片想い

こんにちは、編集KIMです。
♪Heaven I’m in heaven~~
この「Cheek to cheek」の歌詞を目にするだけで、往年のミュージカル映画ファンならすぐに、アステア&ロジャースが軽やかなダンスシーンを思い出されるかもしれません。
映画『トップ・ハット』からの曲ですが、この曲がとても効果的に使われ、シネマ愛と切ない現実の交差点が描かれた、映画好きのための映画がウディ・アレン監督作『カイロの紫のバラ』です。

190621_purplerose-BH1212-WA_SD_S2.jpg©2012 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

ミア・ファローが演じるセシリアは、下町に暮らすウエイトレスの主婦で、いつも映画の世界に逃避する

この映画を観たのは、KIMが大学生の時でした。
DVかつ働かない怠け者の夫に尽くしながら、映画の世界にのめりこむ、ちょっとおとぼけな愛らしい女性セシリアを演じたミア・ファロー。当時、ウディ・アレンのパートナーであり、ミューズだった彼女と創った映画は、『ブロードウェイのダニー・ローズ』(84年)『ハンナとその姉妹』(86年)含めて、大好きな3本です。映画好きにとっても、スクリーンの世界に夢中になっているヒロインの姿は自分自身を重ねてしまいます。
そう、この『カイロの紫のバラ』は同じ映画を何度も何度も観ていたら、演じていた俳優ではなくキャラクターそのものが観客の熱い視線に気づき、スクリーンから声をかけ現実世界に抜け出してきて、彼女と恋に落ちるというストーリーなのです。

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©2012 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

虚構と現実を行き来する役を演じたのは、俳優ジェフ・ダニエルズ。『スピード』にも出てましたね。クラシックなムードがある俳優でハマリ役だったかもしれません。コメディの演技も、いかにもフツウに演じてくれるところがかえっていいのかも。レストランの場面写真はまさにエジプトのカイロからやってきた冒険家役トム・バクスター。支払いの時にフェイクのお札を出してこの後食い逃げします。コートを纏っているのは、慌ててトム・バクスターを探しにきたギル・シェパードです。

ここに、俳優本人ギル・シェパードが役柄が問題を起こさないかと、トム・バクスター役の自分を説得すべく登場して、セシリアと三角関係に…‥と、複雑に見えて実はシンプルな物語なのですが、登場人物たちの戸惑いや自分勝手さが、コメディ映画としてのリズム感となって、すごく楽しめるのです。

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どうして突然この作品について書こうと思ったかというと、『キネマと恋人』という舞台を先日観てきたからです。東京・世田谷パブリックシアターでの公演は2019年6月23日で終わってしまいますが、6月末に北九州、7月には兵庫、名古屋、盛岡、新潟で公演が続きます。
初演は2016年で、その際にもたくさんの賞を受賞した名舞台。ケラリーノ・サンドロヴィッチ台本・演出で、私は今回の公演が初めてでしたが、大笑いしちゃいました。  

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撮影:御堂義乘 © SETAGAYA ARTS FOUNDATION/SETAGAYA PUBLIC THEATRE. ALL rights reserved

映画『カイロの紫のバラ』が着想源、というか、そのままストーリーを拝借して、日本の昔の時代劇と引っ掛けてリメイクされた舞台『キネマと恋人』は、フィガロジャポン2019年8月号に登場する妻夫木聡さんが、ジェフ・ダニエルズと同様に銀幕から飛び出す間坂寅蔵と寅蔵を演じる俳優・高木高助を演じています。ミア・ファローの役どころに当たる森口ハルコを演じたのは緒川たまきさん。
すごいのは、編集してどうにかなる「映画」とは違って、舞台上で、スクリーンと生身の俳優がかけあいをする場面です。ライブの俳優たちが、舞台に巧みに設置された上映画面内の俳優と対話するのですから。コメディである以上、少しでもテンポが遅れたり早すぎたりしたらしらけてしまう。でも、パーフェクトなタイミングでした! オドロキものです。
緒川たまきさんはミア・ファローのあどけないムードそのまま愛らしかったです。妻夫木さんは……ジェフ・ダニエルズよりも、切なくて素敵でした。観客であるハルコに対する想いが、『カイロ~』のジェフ・ダニエルズよりも深く印象的なのです。

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撮影:御堂義乘 © SETAGAYA ARTS FOUNDATION/SETAGAYA PUBLIC THEATRE. ALL rights reserved

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映画『カイロの紫のバラ』も、舞台『キネマと恋人』もラストは、スクリーンを眺める観客であるヒロインの、悲しい現実も忘れ憧れの世界にのめり込む姿をとらえて終わります。あまりにも切なく、でも、それこそが、生きていくことの美しさに思えてきます。
舞台でコレをやる……でも舞台って現実の、生身の俳優が「そこ」にいるじゃないですか? 余計に期待してしまうんじゃないかな、観客って? と、あとから思いました。
だって、どうしますか、もしも妻夫木さんが「観てくれているの5回目だよね?」って言いながら舞台を降りてきて観客であるあなたを劇場から連れ出してくれたら……?
あまりにも萌え~な妄想ですが、ケラさんは、そんな観客の萌えも意図しているのでしょうか……映画ではなく「舞台」だからこそ?

最後に、アステア&ロジャースの『トップ・ハット』の場面をお見せしましょう。マッチョ好きなKIMはジーン・ケリーのほうが個人的には好みでしたが、タップダンスの洗練された美しさはアステアにあり!という意見が圧倒的に多数派です。

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音楽はアーヴィン・バーリン。30 年代のRKO作品の軽妙さ、男女の恋の駆け引きのおもしろさを味わってください。スクリーンでは、洒脱で美しいものが観たい! 世界の観客たちが映画という娯楽に恋していた時代の、天国からのギフトのような映画です。

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『カイロの紫のバラ』 
●監督・脚本/ウディ・アレン 
●出演/ミア・ファロー、ジェフ・ダニエルズ、ダニー・アイエロ、ダイアン・ウィーストほか 
●1985年、アメリカ映画 
●本編82分 
●DVD ¥1,533 発売・販売:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2012 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

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『トップ・ハット』 
●監督/マーク・サンドリッチ 
●出演/フレッド・アステア、ジンジャー・ロジャースほか 
●1935年、アメリカ映画 
●本編99分 
●Blu-ray¥5,184 DVD¥4,104 発売・販売:アイ・ヴィー・シー
©LOBSTER

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