編集KIMのシネマに片想い

LGBTQ映画、結局コレにヤラれました!

編集KIMのシネマに片想い

こんにちは、編集KIMです。

前回のブログで、レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~で紹介される作品のなかで、特に観てみたいと思った映画4本について触れました。ブルックリンが舞台のクレア・デインズ出演作『ジェイクみたいな子』、「女性」の淡い恋心の行方を描いた韓国映画『花咲く季節が来るまで』、南アフリカ産のミュージカル『カナリア』、ピュアな男の生きざまを描いたフランス映画『ソヴァージュ』。実はもう1本、短編集を観て、台湾映画にぐっと来ました。
でも、このなかから特に触れたい!と感じた作品を挙げるとしたら、ダントツ『ソヴァージュ』でした!

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主人公を演じるフェリックス・マリトーを発見しただけで、すごい収穫。

作品を観る前に「こんな感じなのかな」予想しながら告知だけ書いた時とは、まったく違う感慨を抱きました。監督のファーストネームがカミーユで、てっきり女性監督がゲイのことを題材に選んだ珍しい作品かと勘違いしていましたが、映画を観始めてすぐに、これは男性監督だ……と気付きました。同性である男を愛する男性でなければ描けない、表現の力強さを感じたからです。
作品の中では、一度もその名を呼ばれることのない主人公レオ(フェリックス・マリトー演じる)は、ブローニュの森のあたりにいるゴロツキであり、きわどい生活を送る男娼です。その日暮らしで、男娼仲間から施しや仕事(もちろんカラダを売る)をめぐんでもらう青年。観ていて胸騒ぐのは、レオが、この生活がみじめだとか、もっとマトモな生活をしたいとか、人間の社会性に基づいたところから生じる向上心や、その向上心が折られて生まれる劣等感に、心が侵されることなく、ピュアな獣のごとき点です。
レオはパリの道端のドブに流れる水を飲みます。劇中、何度もその水飲み行為をします。八百屋の軒先からリンゴを盗んで食べます。そして、レオが想いを寄せる男娼と、客相手の3Pの後、自分だけ食事に呼ばれないことに怒ります。まるで小さい子どものよう。でも、フェリックス・マリトーの迷いのない、自然な演技のおかげで、現代の都会にありえないような行動であっても、不愉快にも、滑稽にも感じないのです。

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それくらい、フェリックス・マリトーは役者として魅力がある、という印象を持ちました。
原題のSovage(ソヴァージュ)とは、フランス語で「野生」を意味します。
映画の後半、野生の彼を、その美しさを、心から愛する初老の男性が現れ、面倒みることを申し出、細やかな愛を注ぎます。レオが想いを寄せる男娼が何度もアドバイスするのです、「金持ちの老人を見つけて、まともな暮らしをしろ」と。いったん、レオは飼いならされたペットのように、清潔に生まれ変わり、いつもカラダのどこかしらにあったかさぶたもなくなり、ばさばさの髪も整います。
それまでずっと着ていたトレードマークのスタジアムジャンパー、タンクトップはどこかに捨て去られ、ニット&パンツの小粋なパリジェンになるのです……が、デザイン家具で整えられたインテリの部屋のソファに座る彼はあまりにも心もとなそうで、不釣合いです。居心地が悪そうだけれど、あまりにもピュアすぎて、自分自身が居心地が悪いという自覚もなさそう。
映画のラストは、一般的な幸せとは違う方向へと急旋回します。LGBTQの生きざま、という枠に限定されず、幸せとは世間が定義するデータ的な成功のようなものではなく、個々の人が抱くその人だけの「心の風景」に依るもの、というメッセージを受け取ったような気持ちになりました。

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この映画を成功させたのは、先にも書きましたが何よりもフェリックス・マリトーという俳優のおかげです。全身タトゥー、放浪生活していたような時期もある、不思議な魅力のある人物です。唯一無二のムードをもった彼に、今後も注目していこうと思います。
『ソヴァージュ』が一般公開されないのは、本当にさみしいです。

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『ソヴァージュ』 ●監督・脚本/カミーユ・ヴィダル=ナケ ●出演/フェリックス・マリトー、エリック・ベルナール、ニコラ・ディブラ ●2018年、フランス映画 ●99分 ●日本公開未定

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レインボー・リール東京映画祭でも、告知され、チラシも配られていましたが、まもなくエルトン・ジョンの半生を描いた『ロケットマン』が公開されます。この作品を観て、エルトン・ジョンという人物を好きになってしまいました。社会で成功を収めていても、エルトン・ジョンは心底ピュア!という描かれ方でした。いまトレンドの音楽映画であること、『ボヘミアン・ラプソディ』の監督の作品であることが公開時に強調されることでしょう。そして、もちろんタロン・エガートンの演技や、ちりばめられる音楽は素晴らしいと賞賛されると思います。でも、ピュアな主人公のぶざまな生き方にもぞんぶんに感じ入ってほしいです。

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『ロケットマン』●監督/デクスター・フレッチャー ●出演/タロン・エガートン、ジェイミー・ベル ●2019年、イギリス・アメリカ映画 ●121分 ●配給/東和ピクチャース ●8月23日より、全国にて公開 https://rocketman.jp/  ©2018 Paramount Pictures, All Rights reserved.

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