編集KIMのシネマに片想い

ティモシー・シャラメがウディ・アレンの分身に?

編集KIMのシネマに片想い

欧米の映画好き女子の間で昨今圧倒的な人気を誇るティモシー・シャラメ。彼が主演の新作映画が久々に劇場公開されます。

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今作、とても不運な映画で、監督ウディ・アレンのスキャンダルからアメリカでは公開されず、ティモシーはじめとする出演俳優陣が今作で得たギャラをすべて寄付に回すとか、この映画に出演したことを恥ずかしく思う、などとメッセージが世に発信されてしまい、日本での劇場公開も延びていたところ、新型コロナ禍まで……。まさに踏んだり蹴ったりの映画です。

しかし! ニューヨークを舞台にした70年代~90年代あたりまでのウディ・アレン作品に恋していた人たちは、『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』を、懐かしく、温かい気持ちで観られると思います。私、編集KIM自身がそうでした。かつてのクラシックなムードあふれるニューヨークの風景、男女の小気味いい会話、ウィットに飛び過ぎてて意味を把握するのに遅れちゃうくらいのテンポの速いお喋り。まさに、ウディ・アレンが絶好調だった時代の、軽妙なラブストーリーなのです。

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チェックのシャツに丸首ニット姿のティモシー演じるギャツビーと、タートルネックニットにプリーツスカート姿のエル・ファニング演じるアシュレー。ふたりともお金持ちのご子息という役柄。

ティモシー・シャラメは『君の名前で僕を呼んで』で、米国アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされていますし、演技力はお墨付き、ということになっているのかもしれませんが、いやいや、まだ安心はできない、と私は厳しく眺めていました。が、『レイニーデイ~』を観て、彼の演技の「技」を実感しました。

ウディ・アレンって、演じる俳優にウディ・アレン自身を演じさせてしまうところがあります。『アニー・ホール』の時の、『マンハッタン』の時の、大都会で成功「しきれない」、よく喋るインテリゲンチャ。そのルックスの割には女性へのアプローチは積極的で、「なんかあなたオモシロイ人ね」的に女性たちからもモテてしまう。その役割を、ティモシー演じるギャツビーは担っているワケですが、俳優として演じている時のウディ・アレン風味、実によく再現できていたと思います。慌ただしく手をばたつかせるところ、肩をすくめる仕草、街をひとり歩きする時にはやけに深刻にうつむく佇まい(それだけでなんだかクスっと笑えるダサさがこのキャラクターの魅力!)、ずるいことを考える時の目線の泳ぎ方……。こういうことを、監督ウディ・アレンは事細かにティミーに指示したのでしょうか? それともティミーが自分自身で研究した結果なのでしょうか? 今作でティモシーがプロモーションのためにインタビューを受けるということは絶対ありえないので確かめられないですが、とっても気になるところです。ギャツビーっていう役名もすごくないですか? もちろんフィッツジェラルドの小説からですけれど、正々堂々とこういうネーミングにしちゃうところがアレンらしい。

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200520_anniehall-FSPBD1407_SB_S3.jpg©2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

『アニー・ホール』の時のウディ・アレンと、ファッションもどことなくかぶってる……! ニューヨークのうだうだ言う知性派の典型的なムード?なのでしょうか。でもティミーに似合っていますよね、ツイードジャケット、シャツと内側にインしたTシャツがのぞき、カーキ色のパンツ。全体はシックなオータムカラー。

わずか2日間の間に、郊外の大学に通っているギャツビー(ティモシー)とアシュレー(エル・ファニング)のカップルが、雨に濡れるニューヨークを訪れ、ありとあらゆるハプニングに見舞われる、というストーリーです。ふたりとも映画好きで、作家主義の映画監督にインタビューできるチャンスを得たアシュレーの保護者役をかって出たギャツビーが実家のあるニューヨークを案内しよう、という遊びがてらのマンハッタン詣で。雨降って地固まる、という諺どおりのラストですが、ウディ・アレン作品のファンであれば、映画が半分まで進んだところで結末は予測できそう。

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スター・ウォーズシリーズの『ローグ・ワン』にも出演していたディエゴ・ルナはイケメン俳優役。めちゃかっこよかったですよ。

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プレスリリースに寄稿なさっている辛島いづみさんも書かれているように、眩いブロンドのエル・ファニングは、かつてのミア・ファローを感じさせます。なんというか……好人物なんだけれどもちょっとオツムが弱い印象で憎めない。ディエゴ・ルナ演じるイケメン俳優の車に乗り込むシーンでの、無邪気を通り越して無防備で無神経な笑顔のエルは素晴らしいですよ。自立していないようでいて実はタフ、というピュアな女性像です。

こんな風に、過去のウディ・アレン映画がリブートされているような趣の作品なので、現代じゃないのかも?と思いながら観ていると、スマホが出てきたりして、クラシックなものが話題にたくさん出てくるけれど、実はみんな現代っ子と再認識するわけです。超リッチな家柄に生まれたおぼっちゃまのギャツビーは、恋人であるアシュレーをクラシック・ニューヨークの殿堂のような場所に連れていこうと企みます。現役大学生の口から、そんなレストランホテル、バーの名前が出てくることがリアリティに欠けるのですが、ティモシー演じるギャツビーの滑稽さ、厭味ったらしさが軽妙に表現されればされるほど、このリアリティの欠如はまったく気にならなくなってきます。ちなみに、それは、カーライルホテル内のベメルマンズ・バーだったりピエールだったりするのです。

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ベメルマンズ・バーは、2012年11月号フィガロジャポンのニューヨーク特集にて、有名デザイナーのマイケル・コースのおすすめアドレスとして紹介したこともあります。ウディ・アレン映画は、観光的なニューヨークを紹介してくれるのも魅力。馬車が走っているのはもちろんセントラルパーク。

新型コロナ禍でstayhomeだと、自宅にあるものが鮮やかになってきますが、どこにも出かけられない休みの日にCDを整理していて妙にジャズが聴きたくなり、チェット・ベイカーやセロニアス・モンクを部屋でかけていました。今作のキーとなる『Everything Happens to Me』も流していたのですが、歌詞を字幕で読んで、こんな内容だったのか!とシンパシー。不器用な、不器用が過ぎる男性に災難がふりかかりながらも日々はロマンティックに過ぎていく内容で、今作のストーリーラインそのままです。ティモシーがこの曲をピアノで弾き語ります。それも、アップタウンの豪邸に置かれたピアノをちょいと拝借して、という流れがとてもステキ。

個人的には、セリーナ・ゴメスは突出してよい!と思いました。『マンハッタン』の時の、マリエル・ヘミングウェイを思わせました。エキゾティックなルックスもそうですが、大人びて乾いているところが。トーンを抑えた台詞まわしは見事で、恋の駆け引きをする時にも臆さない大人になったばかりの女性を巧みに演じてました。

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似てませんか? セリーナとマリエル。年上の男性と年下の女性、教える側だった男が実は大人びた年下の女の子に面倒みてもらっている、というシチュエーションもダブる。NYラバーは、モノクロの世界の『マンハッタン』、ぜひご覧あれ。

『マンハッタン』 ●監督・共同脚本・出演/ウディ・アレン ●出演/マリエル・ヘミングウェイ、ダイアン・キートン、メリル・ストリープほか ●1979年、アメリカ映画 ●96分

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セリーナ・ゴメス演じるチャンとギャツビーがメトロポリタン美術館を訪れますが、80年代にヘビロテで観た『恋人たちの予感』も思い出しました。あのエジプトコーナーも出てきていた気がします。メグ・ライアン演じるサリーとビル・クリスタル演じるハリーが紅葉したセントラルパークを散歩するシーンを思い起こさせるのは、まさにラストシーン。1988年に私KIMもセントラルパークを訪れて、友人とデリで買ったターキーサンドウィッチを散歩しながら食べました。ウディ・アレンを愛し、『恋人たちの予感』を愛した80年代の懐かしき思い出です。

ラストシーンの恋人たちのやりとりは、超級ロマンティックかつウイッティかつユーモラスです! アレン作品『ハンナとその姉妹』のラスト、「心臓は弾力性のある筋肉だ」というセリフがありましたが、それと通ずる楽しさ。

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ギャツビーに付き合って、メトロポリタン美術館を訪れるチャン(セリーナ・ゴメス)。

200520_harrymetsally-FSPBD1812_SB_S4.jpg©2018 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

200520_harrymetsally-FSPBD1812_SB_S3.jpg©2018 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

カナダに1ケ月滞在していた時に2回観て、ニューヨークで1回観て、東京でも2回くらい観ましたね、当時。『恋人たちの予感』、この映画の原題は『When Harry met Sally』。男と女に友情はあるのか?というテーマで答えはノーでした。友情が育めるくらい仲がいいと、結局恋人同士になっちゃうっていうオチです。メグ・ライアンのファッションもめちゃくちゃ可愛くて、このくしゃくしゃのヘアスタイルに憧れた~。

ティミーを味わうのもよし、ウディ・アレン節に浸るのもよし、ニューヨークの風景を思い起こすのもよし。『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』の不器用でレトロで愛らしい人々を、楽しんでください。

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自宅ではこういうモノたちに浸っております……

『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』
●監督・脚本/ウディ・アレン
●出演/ティモシー・シャラメ、エル・ファニング、セリーナ・ゴメス、ジュード・ロウ、リーヴ・シュライバー、ディエゴ・ナ
●2019年、アメリカ映画
●92分
●配給/ロングライド
●7月3日より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国にて公開
©2019 Graivier Productions,Inc.
Longride.jp/rdiny
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『アニー・ホール』
●監督・共同脚本・出演/ウディ・アレン
●出演/ダイアン・キートンほか
●1977年、アメリカ映画
●93分
●Bru-lay ¥2,096 販売・発売:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2014 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

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『恋人たちの予感』
●監督/ロブ・ライナー
●出演/メグ・ライアン、ビリー・クリスタルほか
●1989年、アメリカ映画
●96分
●Bru-lay ¥2,096 販売・発売:20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
©2018 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

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