ハッピーになれるuchuu,の魅力(前編)
Music Sketch
今、最もライヴを心待ちにしているバンドがuchuu,だ。このバンドを知ったのはYouTubeで見たのが先か、送られてきた音資料を聴いたのが先だったか定かではないけれど、昨年4月に発売されたミニアルバム『HELLO,HELLO,HELLO,』を聴き始めた途端にとても気に入ってしまった。すぐにその前のミニアルバム『HAPPY』もゲットした。当然早くライヴを見たくて仕方がなかったのだが、大阪在住のバンドとあってようやく最初に見たのは昨年の5月21日の代官山UNIT公演。でもその時のライヴは、あまりに音源を聴き過ぎていたせいもあってか、印象が良くなかった。でもそれをきっかけにマネージャーやメンバーと話をする機会を得て、そこからかなりの回数のライヴを見るようになり、現メンバーが揃ってからの進化の様子を体感してきた。今では、もうライヴを見ているとハッピーな気分に染まれる、楽しくてたまらないバンドになってしまった。最新アルバム『+1』の話も含め、メンバー5人に話を聞いた。
■ 音楽を辞めると言ったKを引き止めてから、uchuu,が始まった。
uchuu,というバンドのメンバーの年齢はバラバラ、音楽的背景も全く違う(後半に紹介)。厳密に言うとオリジナルメンバーで残っているのはKだけだ。しかも最初は遊びのつもりで結成したという。というのも、Kが以前にやっていた3ピースのバンドが解散したばかりだったからだ。結成のきっかけは2009年10月に、彼の才能を前から評価していたSujinから「今度イベントをやるので、1枠空けておくから何かやって」と言われたことからで、Kは友人を集めてその4ヶ月後にuchuu,として初めてライヴをする。ただ、遊びのつもりでやっていたのでメンバー交代が数回あり、2011年の終わりに当時のドラムが辞めた頃に真面目にやろうと決意し、新たにAiriが加入する。その後ベースが抜けた時には、他のバンドでギタリストだったSujinがベースを担当することになったという。
Sujin(以下S):「Kの前のバンドを見に行った時に、結構衝撃を受けて。3ピースでダンスミュージックをやってたんです。僕もダンスミュージックをやってて追求していたから、ちゃんとできてる奴は少ないなと思っていたので。僕はファンク系のダンスミュージックが好きで、Kはロックのダンスミュージックが好き。当時ちょうど4つ打ちが流行り出していた頃で、でも彼はその前からやってて、4つ打ちのリズムに歌を合わせて歌がダンスしてるなと思って、“才能あるな”と思った。そんな才能あるのに、“解散して音楽をもうやめる”って言い出しているから、もったいないなと思って、絶対やったらいいなと思ったんですよ」
その後に加わったHiroshiは、当時はエレクトロテクノユニットをやっていたが、実は音楽面から誘われたのではないという。
K:「すでに音楽的には4人で成立していたんです。でもパーソナル的なパワーが何か足りないと感じていました。今の4人でずっとやっていくのは難しいんじゃないかと思って、僕が“Hiroshiはどうですかねぇ”」ってみんなに提案したら、誰もノーって言わない。音楽的というより、ライヴハウスで喋ってる時の人柄とか良くて、人としてバンドに必要だった」
そして最後に参加したのがNao。2015年7月のことだ。ここでパズルのピースがガチッと嵌り、以前とは段違いのパフォーマンスを展開していくようになる。
■音楽をやりたいということ=人と関わっていく職業をやること。
―初めてライヴを見たのが去年5月のUNIT公演でした。そこから段々良くなっていって、11月の東京公演が凄く良かったんですよね。今年7月に見た時はKさんの髪の色やSujinさんの髪型がガラリと変わっていて、何か吹っ切れるものがあったのかなと思いました。最初の頃に感じたバラバラ感が、今はバンドとしてのまとまりがとてもあって、それぞれみんな自由なことを楽しんでやっているけど、最終的にはお客さんに向けて方向性がまとまっていて。いつぐらいからバンドとしてまとまってきたの?
S:「鍵盤が替わって、Naoが入ったことかな。あと、Kが変わったのが一番デカイですね。リーダー的存在になったという」
―MCで喋る内容もとても変わりましたよね。
S:「前は“自分”というのがあって、“みんなのことを背負ってる”って言っていながら、背負ってない部分があったんです。今はちゃんとみんなのこと、もしくはバンドのことを考えて物を言うようになったから、よりリーダー的になって、まとめられるようになったのが僕は一番大きいと思いますね」
―前は自分のことを話している感じでしたが、今は観客みんなに向けてメッセージを発していますよね。その11月のライヴあたりから、uchuu,のライヴに行くととてもハッピーになれるようになって。それは演奏もMCも曲もそうだと思うんですけど、Kさんの人柄にもよるのかなと思うんです。そのハッピーマインド、ポジティヴマインドというのは生まれつきずっとあったんですか?
K:「昔は一人でいると内に籠ってしまうタイプだったんです。友人も浅い関係より、濃くて仲がいい奴が数人いる感じですね。ポジティヴになったのは音楽をやりだして、人と何かを作るっていうのをやりだしてからですね。“オーディエンスが踊ってるのを見たいからダンスミュージックになった”というのと同じで、自分が音楽をやりたいということ=(イコール)人と関わっていく職業をやることなので、ポジティヴシンキングになっていったというか」
―Kさんにとってuchuu,でやっている音楽の先にあるものは?
K:「夢じゃないですか?自分が歩いている道の先に絶対にあるものは」
―その割にはMCでは「夢に向かって頑張ろう」とかあまり言わないよね。
K:「そうですね」
―そこが逆にいいなと思って。曲を作るようになって性格も変わってきているから、気持ち良さや喜びみたいなものもリスナーに伝えていきたいという?
K:「そうですね。こっちが見ている景色をみんなにも見て欲しいと、すごく思います。あんなに笑顔が広がることってないですから」
■自分が変わることの方が、相手を変えるのに一番早い行動
―笑顔になりますよね、本当にuchuu,のライヴは(笑)。曲について聞いていきたんですけど、最新アルバム『+1』での軸となる曲「SI(G)N SEKAI」はどういう思いで作った曲ですか?
K:「先行した3曲を出す時に、英語、日本語、両方が混ざっているのを書こうと思ってて、結局『SI(G)N SEKAI』はBメロの部分が英語になったんです。僕が曲を作り出してから自分が変わったっていう認識があって、しかも自分が変わることで相手が変わって見えるんですね。それが一番理想的な形だなと思って。だから人に“変わってくれ”と望むよりは、自分が変わることのほうが相手を変えるのに一番早い行動と思うので、それを歌詞にしようとして書いたつもりです。それが日本語だったので具体的に書けました」
―歌詞は英語でも日本語でも内容に大差がなくて、短い言葉ではっきり言うことで伝わりやすいですよね。感情や情景描写は曲によって違うけれど、Kさんはストーリーを語るタイプではないですよね?
K:「違いますね」
―でもこの曲に関してはストーリー性があると思ったんですよね。それは?
K:「そうですね。僕はゲームやアニメーションが好きで、ゲームの世界観って人それぞれだと思うんですけど、僕が思っているRPGはわりと自分で(その先を)変えていける感じなんですね。だからゲームやアニメを思い浮かべながら歌詞を書いていました。主人公を自分で操れる方が面白いし、その制約の中で遊ぶことで世界観は作られているわけじゃないですか。『ストリートファイター』みたいなアクションゲームは別として。それがゲームの凄いとこかなと。RPGに関しては映画と同じだなと、僕は思う。ストーリー性はあるし。でも映画では遊ぶことはできないけど、ゲームはその主人公が自分だから。なので『SI(G)N SEKAI』はストーリー性よりもゲーム性ですね」
8月31日からツアーを行うuchuu,のHPはコチラ→
*To be continued