ハッピーになれるuchuu,の魅力(後編)
Music Sketch
引き続き、uchuu,の話を。
前回のインタビュー記事でSujinが話していたように、このバンドの魅力の軸にあるのはKのソングライティング。しかもKの家でレコーディングしているほか、ミックスをKとSujinの2人で担当するなどDIYで自分たちの音楽の細部までこだわっている。CDのアートワークもデザイナーであるKが担当しているほどだ。
■uchuu,の曲はオーケストラの気分で演奏する
―曲に関しては大体の楽器を演奏できるKさんが細かくフレーズまで考えて打ち込みで作り、スタジオで全員が曲を自分のものにしながらレコーディングしていくというスタイル。音源で作ったものを、ライヴでどう見せていく、聴かせていくかは、どのように考えていますか?
K:「まず、今までの作品はわりと僕のデモを再現するみたいなところがあって。でも今回は音源に関してベーシックは変わらないけれど、僕がメンバーに“こうしてほしい”と言うことがなくなった。それなりにみんなの感触はあると思うし、演奏も信頼できるようになって、“自分が作ったものと若干違うけどいいや”と思えるようになった。ライヴでも音源とアレンジが違う曲もあるけれど、メンバーが“ライヴはこっちのほうがいい”と言ってきたら、その人がプレイして伝えるから、“そっちのほうがいいんじゃないかな”って。結論を分けて考えています」
―Kさんはドラムも演奏できるため、手が3本ないと演奏できないような物理的に不可能なドラムパターンは考えないものの、でも音数が多かったり、変則的なものもあり、叩くのは難しいですよね。それにリズム隊としてガッチリ嵌まっているというよりは、5人セットで聴く感じがするんですよね。
Sujin(以下、S):「それは多分そうだと思います。Kが持ってくるフレーズは5人のことが考えられているフレーズになってて、自分で弾く時も“俺のフレーズを聴け!”みたいなタイプではないし、どっちかというとオーケストラの気分でやってますから。もちろん“この曲にはこのグルーヴしかないわ”みたいなこだわりは頑固にやってますけどね」
―最初に『HELLO,HELLO,HELLO,』を聴いてCD評を書いた時に“ドラムが面白い”と書いたんですけど、フレーズはKさんによるものだったんですね。
Airi(以下、A):「もらった時に自分のドラムでは出てこないフレーズとかが入ってきて“面白いな”って思うんですけど、自分の(叩く)癖も凄くあるから、それとなかなか一致させるのが凄く難しいですね」
K:「ドラムは難しいです。グルーヴはダンスミュージックなんですけど、フレーズはポストロック。そしてAiriに譜面を渡した時点で、やっぱりスウィングするんです。いくら僕が“めちゃカッコええ!”って思って渡しても、Airiの感じのドラムになるんです。でもそれでいいと思っていますね」
―そこまで完璧に考えて作っているのなら、Hiroshiさんの動きも考えてるとか?
K:「僕はHiroshiに関しては何も言ったことはない(笑)」
―自由人だから?
K:「はい(笑)」
Hiroshi(以下、H):「楽曲は基本的にはシーケンスと4人で完成するので、実際に“この曲、どうしよう”と思う時はあるんですけど、自分が考えているのは“この曲はこういうふうに見せたら、もっと伝わるな”、“ここは邪魔したらいけないな”、“ここは盛り上げていこう”とか、ライヴでどう見えているのかなというのを想像しながらやってますね」
■歌心が軸にあるダンスミュージック
―あと、曲自体がギターの弾き語りで成立するところからスタートしているので、楽器がいろんなことをやっていてもちゃんと歌詞とメロディが入ってきて、歌心がちゃんとあるバンドだなと思いますね。
K:「唄で引っ張っていこうという想いが、最近は凄くあります」
―それに今回は韻を踏んでいる歌詞がとても入っていて、そこも聴き応えあります。
Nao(以下、N):「歌詞はカッコイイなと思って聴いています。特に『Sing For You』ですね。言葉が凄い綺麗だなって思うんですよね」
―曲作りもAメロやBメロなど関係ない面白いタイプの曲が増えましたね。
K:「そうですね。『Let It Die』、『Yes or No』、『Yellow』もそうですね」
S:「今回はデモが63くらいあったんですけど、曲を選ぶ時もみんなで審査員みたいに『星4つです!』みたいのをやって」
―uchuu,の曲の魅力はどこにあると思います?
S:「僕は基本的に洋楽しか聴かないし、歌詞も聴かないけど、レディオヘッドは音楽から衝撃を受けるし、ダフトパンクはまさしく歌詞とかないじゃないですか。それでも伝わるものがあるという良さがあるから、僕もこのバンドにいるんだと思う。uchuu,の歌詞に関しても僕は無頓着でわからないですけど、Kの曲は音楽だけで景色があると思うんです。それに、Naoみたいな若い子やお客さんが“歌詞もいい”と言っているのを聞くと、その両方の魅力があるのかなと思いますね」
■音楽背景の全く違う5人の個性派集団。
最後に5人の音楽的ルーツをざっと語ってもらった。
S:「オアシスやレディオヘッド、そこから打ち込みに入ってダフトパンク、そこからシー&ケークとかトータスとか好きでシカゴ音響派をすごく聴いていました。以前はRAYMOND TEAMってバンドをやっていて、P-VINEからCDを出していたこともあります。そこからシックとかブラック・ミュージックに流れていって、ディスコですね。シカゴ音響派ってギターメインじゃないですか。僕はギタリストだったんですけど、ディスコ・ミュージックとか聴いていて、そういう音楽はベースがメインなので、趣味的にベースを買って“ベースを弾く機会があったらいいな”って思っていたら、uchuu,に誘われたんですよ」
A:「子供の頃にエレクトーンを習っていた先生の家にドラムがあって、叩かせてもらっていたら、小学3年生くらいの頃からドラムの方が楽しくなってしまって。5年生から個人の先生に習いに行き、学校の吹奏楽部でも叩くようになりました。専門学校でオリジナルバンドを組んでuchuu,と対バンするうちに、参加することになって。ただ、ここまでがっつり構築されたバンドは初めてで、クリック(筆者注:リズムをキープするための同期音)を聴いてライヴをすることが今までなかったので難しかったですね。今まで自由に(曲を)伝えてきたから、クリックがあることでテンション感をキープするのも難しいんです」
K:「一番最初はヴォーカルではなく、小学校5年生の時に父親が運転する車に乗っていた時に、レッド・ツェッペリンの『Stairway to Heaven(天国への階段)』を聴いて、“これを弾きたい”って父親に言ってギターを始めました。中高はLUNA SEAが好きで、高校に入ってからニルヴァーナとかレッチリ、ナインインチ・ネイルズ、レディオヘッド、いわゆる王道なロックバンドを聴いて。ギタリストとしてはジョン・スクワイア(ザ・ストーン・ローゼズ)が好き。バンドを本格的にやるようになって最初はシューゲイザー系や音響ポストロックをやっていたけど、ライヴをした時のお客さんの反応を見て、“僕が求めているものはダンスミュージックをやらないと返って来ないな”と思い、ダンスミュージック基調の音楽をやろうと、そこから前身バンドを経てuchuu,に繋がっていきました」
N:「4歳から高校1年生までエレクトーンをやっていて、小学校低学年の頃は久石譲さんが好きでした。先生がジャズを好きで自然と私もジャズが好きになり、パット・メセニーの曲もエレクトーンで演奏していました。中学時代にはJ-POPやバンドに興味を持ち出して、その後、PARAのキーボード奏者の家口成樹さんと出会ってからはHIPHOPや、ノイズテクノなどアンダーグラウンドな音楽も聴くようになって。それが今自分を形成していますね」
H:「僕は住んでるところが田舎で、先輩から音楽を教えてもらうことが多かったです。中学校くらいからパンクで、そこからメロコア、専門学校に入った時もモヒカンにするくらいパンク。音楽は好きで裏方を目指そうと思い、音響関係の仕事に就きました。当時流行っていたクラブミュージックの中で、ドラムンベースには激しい曲もあってパンクに要素が似ていて面白いと思ったし、パソコンを多少使えたので、そういった音楽にチャレンジしてみようかなと。打ち込みのユニットからスタートして、女の子ヴォーカルを入れて3人組になった。僕は曲は作ってなかったですけど、当時は作ったものをまとめる役でした」
ライヴではKのMCトークに気持ちを押されながら、音色鮮やかな楽曲と歌に乗って会場がポジティヴなエモーションに染まっていく。観客やリスナーを1人残らず笑顔に染めることを心がけて演奏を展開するuchuu,。ぜひ気になった方はライヴに足を運んで見てください。
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uchuu, “+1” release tour 2016-semi Final 3MAN-
2016/8/31(水) 名古屋@HeartLand -
uchuu, “+1” release tour 2016-semi Final 2MAN-
2016/9/2(金) 渋谷@TSUTAYA O-Crest -
uchuu, “+1” release tour 2016-Final ONEMAN-
2016/9/9(金) 天王寺@あべのROCKTOWN
uchuu,のHPはコチラ→http://uchuu-sound.com/main/
*To be continued