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監督は探偵か!? 『ジョアン・ジルベルトを探して』

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ボサノヴァの神と呼ばれ、ボサノヴァの創始者といわれるブラジルの伝説的シンガー、ギタリストのジョアン・ジルベルト。「想いあふれて」「イパネマの娘」「デサフィナード」をはじめ代表曲は数多く、誰でも一度は耳にしたことがあるだろう。その彼が、今年7月6日に享年88歳で逝去したことは記憶に新しい。

190820-04.jpg1959年に発表されたボサノヴァ最初の曲「想いあふれて(Chega de saudade)」。作曲アントニオ・カルロス・ジョビン、作詞ヴィニシウス・ジ・モライス、歌ジョアン・ジルベルト。

そして、まさかこのタイミングになるとは日本の関係者は思ってもいなかっただろうが、映画『ジョアン・ジルベルトを探して(原題:Where are you, João Gilberto?)』が公開になる。

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■熱狂的なブラジル音楽愛好家である監督によるドキュメンタリー

不思議な映画である。ストーリーを動かしていくのは監督であるジョルジュ・ガショ。監督自らが登場し、とあるホテルの一室でドイツ人ジャーナリスト、マーク・フィッシャーの著書『 Ho-ba-la-lá À Procura de João Gilberto』を手にしたところから展開していく。

190820-07.jpg監督がマーク・フィッシャーの著書(写真はドイツ語版)を読んだことからストーリーが始まる。

この本では、著者フィッシャーが“ボサノヴァの神様” ジョアン・ジルベルトに魅了され、ジルベルトに会うために彼の住むリオ・デ・ジャネイロに向かった、その顛末が書かれている。そして監督は、当初はフィッシャーの足取りを追っていくが、次第にいまだ見ぬジョアン・ジルベルトに会いたいという思いが強く高まっていくのだ。

フランスとスイスのふたつの国籍を持つというガショ監督は、アルゼンチンの世界的ピアニスト、マルタ・アルゲリッチを取り上げた映画を製作・監督したことで注目された。しかしその後は、マリア・ベターニアをはじめとする、ブラジル音楽にまつわるドキュメンタリー映画を3部作として完成。自他ともに認める熱狂的なブラジル音楽愛好家としては、神様であるジョアン・ジルベルトに会いたくなるのは当然だろう。

190820-01.jpg監督(中央の眼鏡の男性)はマーク・フィッシャーの足取りを追ううちに、ジルベルト自身に会いたいと思いが募るようになる。

さて、この映画、試写を観終わった時は、少し肩透かしを食らったような気になった。それは、自分の中で「こういう映画なのでは?」と思い込んでいたからだ。そしていっぽうで、「こういう映画も作れるんだ」とも感じてしまった。もちろん、作品は監督の自由だからなんでもありなのだけれど、驚きは少なくなかった。

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■「この作品は、映画と文学の狭間に存在する探偵物語」

しかしながら、ネタバレになるので詳しくは書けないが、この映画には時間が経ってから、じわじわとくるおもしろさがある。「やられたなぁ」というか、どこかトリッキーな感じにハマったというか。本当はトリッキーでも何でもなく、ロードムービー的要素のある正統的なドキュメンタリー映画である。ガショ監督はディレクターズノートの中で「この作品は、映画と文学の狭間に存在する探偵物語で、ふたつのストーリーラインがあります」と語っている。確かに、謎解きのように想像や妄想を膨らませながらたどっていく様子には、文学的な要素も十分にあると思う。

190820-02.jpgジルベルトの元妻で親友である歌手のミウシャ(写真右)

登場するのは、ジルベルトの元妻で親友である歌手のミウシャや、ブラジルを代表する作曲者、ミュージシャンであるマルコス・ヴァーリ、ジルベルトのマネージャーなど。なかでも彼を定期的に散髪している床屋さんの話がおもしろかった。“自分の性格は自分が決めるのではなく、相手が決めるものだ”と言われるように、周囲の人の発言がジルベルトの存在をとても興味深いものにさせる。

こういったジョアン・ジルベルトの描き方もあるのだ。彼にふさしい映画作品のひとつと言えるだろうし、何よりジルベルト本人がこの映画を楽しんで天空から観たのではないだろうか。

190820-main.jpgリオ・デ・ジャネイロに行ったことがあるが、海辺の空気はフルーティな香りがして心地よい。

HPはこちら

『ジョアン・ジルベルトを探して』

●監督・脚本/ジョルジュ・ガショ
●出演/ミウシャ、ジョアン・ドナート、ホベルト・メネスカル、マルコス・ヴァーリ
●原題/Where Are You, João Gilberto?
●配給/ミモザフィルムズ
●8月24日(土)より新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開

©Gachot Films/Idéale Audience/Neos Film 2018

*To Be Continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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