Music Sketch

地域密着型イベンター、カウアンドマウスの活動存続のために。

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新型コロナウイルスの感染拡大により、エンターテインメント業界にも多大な被害が生じている。コトリンゴなど、多くのミュージシャンからの支持が厚いイベンターの「COW and MOUSE(カウアンドマウス)」も数多のツアーキャンセルをせざるを得ず、困窮し、このままでは活動が存続できない状況のため、クラウドファンディングを立ち上げた。具体的には3〜5月のほぼすべてのイベントが中止、または延期となり、6月以降も再開未定のため、4月30日〜5月28日の期間で目標金額250万円を達成すべく、支援をお願いしたいという。資金の使い道はイベントの中止や延期にかかった費用などが中心になる(詳細はこちら)。

クラウドファンディングとは、自分たちが実現したい目的や事業計画をウェブ上で公表し、それに協賛して資金を拠出してくれる人を募集するもの。今回のような購入型クラウドファンディングの場合、支援者はお返しとして物やサービス、権利といった形でのリターンを受け取ることができる。今回は、ライブチケットやオリジナルグッズで、リターンを予定している。

ミュージシャンに合わせた会場選びからイベント開催まで、素敵な音楽をひとりでも多くの人に伝えたいと丁寧に唯一無二の活動をしてきたカウアンドマウス。応援したい気持ちを込めて、早速取材した。設立者のひとりである波々伯部 曜子(ははかべ あきこ)さんに、これまで行って来た活動や、今後への思いを聞き、後半ではよく一緒にツアーを行うコトリンゴにその仕事内容の魅力を話してもらった。

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高松・アマンダンカルムでのライブ。海の見える会場では、夕方から夜にかけて周囲の情景の雰囲気が変わるのも堪能できる。

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■最初は趣味で、好きなミュージシャンを呼んでイベント制作を。

――カウアンドマウスは、ミュージシャンの全国ツアーの企画・制作をはじめ、「港町ポリフォニー」「御影ロマンス」などのフェスや、日本酒のイベント「音うらら」など、神戸を中心にさまざま行ってきています。まず、この仕事を始めたきっかけを教えてください。

カウアンドマウスとしての活動は2013年からですが、活動名を付けていなかった15年くらい前から趣味で好きなミュージシャンを呼んでイベントを作ったり、ツアーをしたり、ゆったりとライブが見られるライブスペースを作ったり、気ままに活動しておりました。ずっと音楽に関わってきているうちに、自然とカウアンドマウスの基礎となるミュージシャンとの繋がりや、各地に知り合いがたくさんできたのが(いまの仕事の)きっかけです。

――自分たちのスタイルが定着してきたと思ったのはいつ頃、どのミュージシャンとのどのような仕事でしたか?

カウアンドマウスを始める前から、全国を回る、独自のイベント制作スタイルはあったのですが、特にカウアンドマウスとしてスタートしてからのコトリンゴさんとの初めてのツアー、14年のコトリンゴのアルバム『birdcore!』リリース記念「コトリの巣めぐりツアー」がとても印象的です。北海道、四国、中国、九州、関西、名古屋と全15公演巡りました。

――どのようなツアーだったのでしょうか。

はじめて観たコトリンゴさんのライブがとても衝撃的で、行ったことがない場所にもたくさん行きましたし、そこでまた新たな繋がりも生まれました。

――というと? 

毎回ですが、何かが宿ったような圧巻のピアノ演奏が素晴らしかったです。生で見るべきアーティストだと思いました。そのことをまずは現地の方や会場の方にお伝えして、一緒にやってみよう!という方と作っています。

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札幌・モエレ沼公園にあるガラスのピラミッド。 ピラミッド型のガラス張りの美術館のスペース内で開催された。コトリンゴ曰く「響きも深くてとても気持ちが良かった」とのこと。

――北海道まで遠征したんですね。行ったことがない場所に行くようになったきっかけも教えてください。

コトリンゴさんとの初ツアーでも初の北海道ツアーを敢行しました。北海道の場合は、「港町ポリフォニー」が縁で繋がった方に協力いただきました。現地に協力してくれる人がひとりでもいてくれれば、やってみようと思っています。1回目はかなり実験的ですが、北海道ツアーは大成功し、札幌はカフェ(コトリンゴのオリジナルのコーヒーブレンド提供)、旭川はファーム(キャンドルの装飾)、小樽はオルゴール館(ライブが初)、函館はカフェ(ライブが初)など、それぞれの会場ならではの雰囲気のなかのイベントになりました。このツアー後はなるべく生ピアノで見てもらいたいと思い、ピアノがある会場やなくてもピアノを運んで会場作りをしています。

■ミュージシャンに合った会場を探し、重要文化財でライブを実現。

――公演するミュージシャンや会場選びなどでこだわっている点を教えてください。

オファーするのと、逆に依頼されるのと半分半分くらいの割合ですが、どちらの場合でも音楽を聴いて、純粋に好きな方と決めています。繋がりを大切にしているので、誰も彼もではないです。会場はそれぞれのミュージシャンに合いそうなところを探します。重要文化財などや芝居小屋など、これまでライブで使えなかったり基本的に貸し出ししていなかった場所でも、何度も足を運び、時間をかけてコミュニケーションを取ることにより、いまでは信頼して貸してくれる会場も各地にはたくさんあります。 

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写真左:大阪・旧桜宮公会堂。重要文化財で、コトリンゴのソロの他、バンドツアーも行った。写真右:左から、コトリンゴ(Vo, P)、須藤ヒサシ(Ba)、 鈴木カオル(Dr)。

――素晴らしいですね! この仕事をしていて良かったと思ったり、楽しく感じたりするのはどんな時ですか?

やってみたいイベントができたらすぐ実現できること。特に、13年〜17年まで神戸で開催した室内型の秋フェス「港町ポリフォニー」のコンセプトで、ツアー先で音楽を通じて出会った店や人が、一同に出店などで神戸にお招きすることができました。会場のあちらこちらで、初めましての光景をたくさん見られたことが印象的です。

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2015年の「港町ポリフォニー」に、コトリンゴは良原リエ(Accordion)とデュオで出演。

――ミュージシャンとの信頼関係はどのようにして築いてきましたか?

ツアーを一緒に回ること。1つひとつの公演を一緒に作ることですね。

――カウアンドマウスならではの特典があれば教えてください。

会場の雰囲気や音響など。各地のおいしい出店者などもお招きします。

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松江・興雲閣にて。松江城公園内にある重要文化財で、コンサート用に植物による装飾を。

――では、大変に感じる時はどのようなことでしょうか?

宣伝は毎回大変だと感じています。SNSや新聞、ラジオも大切にしていますが、いちばんは口コミだと思っています。各地ご協力いただける方の力なくしては、有名無名に限らず、地方にツアーに行くことはできません。

――いつ頃からこの仕事で生計が成り立つようになりましたか?

すべてチケット収入のみで運営しています。有名な方だけをやることもないので、これまでもこれからも安定することはありませんが、地道に音楽好きな輪を広めていけたらと思っています。

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■ワクワクするイベントを企画している今秋。店の運営も。

――今回、新型コロナウイルス感染のためにすべての公演をキャンセルせざるを得なくなり、非常な事態ですよね。いまは立ち止まらざるを得ない状況ですが、日常が戻った時に、新たにチャレンジしてみたいことなど何か考えていますか?

本来なら、今年が子年、来年が丑年なので(カウアンドマウスは丑年生まれと子年生まれのふたりで設立)、勝手にカウアンドマウス・イヤーとしてワクワクしたイベントを秋口より考えていました。他、拠点にしている神戸で初めてのお店を運営する予定です。もちろんライブもできる場所です。どんどん全国にアピールしていきたいです。また、これまで国内のアーティストがメインでしたが、海外アーティストにもオファーしてみたいなと思っています。

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浜松・天王山の福嚴寺にて。ピアノがない会場に運び入れての、貴重な雰囲気のライブ。

――楽しみですね。行ってみたい会場や、関わっているミュージシャンも好きな人ばかりなので、ぜひ地方公演にも行ってみたいです。クラウドファンディングがうまくいきますように! 最後に、Stay Homeしている読者に向けて、オススメの音楽があれば教えてください。

イギリス、ブリストルのミュージシャン、Rachael Dadd(レイチェル・ダッド)の新しいアルバム『Flux』がオススメです。2018年、日本で初のバンドツアーを担当しました。その時に披露していた曲の数々がアルバムに収録されているので、思い入れも強いです。

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■コトリンゴが語る、カウアンドマウスとの仕事の魅力。

続いてコトリンゴに、カウアンドマウスとの仕事の魅力について話を聞いた。

――カウアンドマウスと一緒にツアーしていて、楽しい思い出は多いと思いますが、なかでも印象に残っているライブについて教えてください。

印象的なのは車で回った冬の北海道ツアーや、『この世界の片隅に』のサントラコンサート「カタスミライブ」のツアーをお願いした時です。これは鈴木カオルさん、須藤ヒサシさん、徳澤青弦さんとの気心知れたバンド編成で回れたことも楽しかったですし、広島公演の会場、流川教会でのライブは、会場みんながすずさんの生きていた時の広島に想いを馳せていた感じがすごくあった気がして、思い返すととても不思議な体験でした。

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大阪・大阪倶楽部での「カタスミライブ」のツアー。写真左からコトリンゴ(Vo, P)、徳澤青弦(Cello)、須藤ヒサシ(Ba)、鈴木カオル(Dr)。

――ツアーで回っていた時の何かがきっかけになって、曲に新たなアレンジが加わったとか、パフォーマンスに変化が表れることはありますか?

会場選びもどんどん自由に、それと生ピアノを借りてくださることが多かったので、ソロでのコンサートもどんどん楽しみになっています。会場の響きがそれぞれ違い、特にひとりでのライブだと間合いも自由に取れるので、響きを楽しめる自由がある気がします。なのでピアノ曲だったり、弾き語りの曲のレパートリーだったりを、どんどん増やしたくなっています。

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広島・流川教会にて。これはソロで行った時の写真。

――ツアー中に出逢った珍しい食べ物などありますか?

「地元の方のお勧めをとにかく食べよう!」という気持ちが毎回強いので、毎回「今回は何が食べられるだろう」とワクワクしています。いちばん最近の北海道ツアーでは、初夏だったので「ソフトクリームの食べ比べをしよう」のモードでした。どこで食べてもおいしかったです。

――最後にmadameFIGARO.jpの読者に一言お願いします。

たくさんのアーティストが出演するイベントも、可愛い出店がたくさんあったり、変わった会場だったり、いつもいろいろ楽しめます。グッズデザインも地元のアーティストにお願いしたり、生活や街を楽しむヒントみたいなものが詰まっている気がします。いまの大変な状況が収束して、またみんなで集まって楽しめるようになったら、みなさんの街にもぜひカウマウ・イベントがやって来れるように。ご支援のほどよろしくお願いいたします。

カウアンドマウスのHPおよびクラウドファンディングの支援はこちらから(関わりのある多くのミュージシャンからのメッセージも掲載)。

*To Be Continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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