Music Sketch

80年代のカルチャー満載の『シング・ストリート 未来への歌』

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今、TVで1980年代の日本のボディコン・ファッション、もしくはスカートの丈を強調しているCMが流れているが、現在公開中の映画『シング・ストリート 未来への歌』は、その80年代にイギリス発信で流行したファッションや音楽が満載の映画。監督は『ONCE ダブリンの街角で』(2006年)でアカデミー賞歌曲賞を受賞し、ニューヨークを舞台にした『はじまりのうた』(2013年)も大ヒットするなど、音楽映画に定評のあるジョン・カーニー監督。そう聞いただけで、期待が高まると思う。

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音楽活動と年上の女性への恋心が同時に加速していく。

今回の『シング・ストリート 未来への歌』は監督の半自伝的作品といい、舞台は1985年、大不況を迎えているダブリン。両親の離婚(とはいえ、当時のアイルランドでは離婚は法的には認められなかった)や、学校でのいじめに不況、そんなアイルランドでの現状を抜け出して、ロンドンでひと花咲かせたいと夢見る14歳の若者コナーが主人公だ。

映画『シング・ストリート』(トレイラー)


当時、デュラン・デュランやa-ha、アダム・アントなどに影響された若者はこういう風貌だったんだろうな〜、と思わせるファッションは、お金がない中で工夫するしかなかっただけに、かなりダサい。でも、異端児扱いされていた彼らが、バンド"シング・ストリート"として活動が軌道に乗り始めた頃から顔つきが変わっていく、そこが見どころだ。

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ミュージックヴィデオ全盛期であり、曲ができるとすぐに撮影へ。

なかでも主役コニーを演じるフェラディア・ウォルシュ・ピーロの男前な成長ぶりは、思春期の少年から青年へのステップをリアルに感じさせ、キュン! となるシーンの連続。6ヶ月かけて、アイルランド全土数千人から選ばれたという期待の新人だ。一方、年上の女性ラフィーナ役のルーシー・ボイントンは、メイクした顔から素顔まで多彩な表情を見せて、女性ってすごい! と思わせてくれる。

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次第に距離を縮めていくラフィーナとコニー。好きな女性をMVに登場させたくなるのは、どこの国のミュージシャンも一緒。

「BEAUTIFUL SEA」 Music Video Clip

また、コナーの兄ブレンダン役のジャック・レイナーもアイルランド出身で、いい味を出している。ピンク・フロイドのデヴィッド・ギルモアのヘアスタイルやファッションを参考にしたそうだ。

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兄ブレンダン役のジャック・レイナーも、今後人気が出そう。

マネージャー役のダーレンを演じるベン・キャロンは、いかにもアイリッシュ風の赤毛の男子、また最初はコニーをいじめていた男子が、やがてその腕っ節を買われてボディ・ガードになるなど、発想の転換で友人が増えていくあたりも面白かった。

「Drive It Like You Stole It」


『ONCE ダブリンの街角で』や『はじまりのうた』に比べると、本作は青春映画なのでティーンエイジャー向けに思われがちだが、80年代ファッションを通過してきた世代には懐かしい日々が鮮明に蘇るし、当時のカルチャーに興味のある人にもオススメの作品だ。

そして何より、曲がどれも良い。デュラン・デュラン、ザ・キュアー、ダリル・ホール&ジョン・オーツ、ジョー・ジャクソン......といった当時の名曲に、かつて"ザ・フレイムス"というバンドで故郷アイルランドから活躍していたジョン・カーニー監督が、例によって"シング・ストリート"向けに今回も曲を書き下ろしている。80年代に活躍した3人組のダニー・ウィルソンのメンバーだったゲイリー・クラークもそこに参加し、時代を超えて聴き継がれるようなポップナンバーばかり流れてくる。歌詞をストーリーに合わせているので感情移入しやすくなっていて、より魅力的に聴こえてくるのも大きいポイントだ。

Adam Levine 「Go Now 」(from Sing Street)

ダブリンを舞台にした音楽映画といえば、ロディ・ドイル原作、アラン・パーカー監督の『ザ・コミットメンツ』(1991年)が有名でとても大好きだったが、ザ・コミットメンツがソウル・ミュージックだったのに対し、シング・ストリートはポップ・ミュージック。こちらも音楽に詳しくない人でも、スッと入っていける作品になっていると思う。

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オリジナル・サウンドトラック『シング・ストリート』発売中。

『シング・ストリート 未来へのうた』
ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイント 他全国順次公開中
© 2015 Cosmo Films Limited. All Rights Reserved
配給: ギャガ
http://gaga.ne.jp/singstreet/

*To Be Continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

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