
『commmons:schola サティからケージへ』
Music Sketch
新年早々Ustreamで紹介されていた坂本龍一×小沼純一のトークイベントがとても興味深く、調べたらcommmons:scholaシリーズの第9巻『サティからケージへ』が昨年末に発刊されていたので、さっそく購入しました。8500円と高いので一瞬迷いましたが、このシリーズは既に何冊か持っていて、本当に内容がすばらしいのです。
ホームページ(http://www.commmons.com/schola/)の言葉をそのまま抜粋してしまうと、"commmons: scholaは、坂本龍一による完全監修のもと独自のコンセプトに基づき、ユニークな選者とともにクラシック16巻+非クラシック14巻、全30巻で構成するcommmonsらしい個性的なシリーズです"。すでにNHKの番組『スコラ|坂本龍一 音楽の学校』というシリーズが放送されているので、ご存知の方も多いのではないでしょうか。
『commmons:schola サティからケージへ』(発売元:エイベックス・マーケティング株式会社)。8500円と高いですが、まさに"音楽の学校"の講義を受けているような充実の内容。
『commmons:schola サティからケージへ』は、総合監修・選曲・執筆:坂本龍一、選曲・執筆:小沼純一、選曲補・執筆:浅田彰、とありますが、内容は付属のCDを聴きながら鼎談の形で進められていきます。知識の宝庫である御3方なので一行一行にいろいろな情報や知識が詰まっているのは当然なのですが(それゆえ欄外の注釈の量も多い)、ジャン・コクトーがサティを新時代の教祖として持ち上げているのに、サティはそちらの方向へは見向きもしなかった話をはじめ、ウィリアム・モリス(壁紙で有名なデザイナー、詩人)との関連性、フランシス・ピカビアやマルセル・デュシャンなどとの話も興味深く、彼らの交流風景を思い浮かべていると、まるでその時代にいるかのような気分で一気に読み進められます。
音楽とサウンド・アートとの違い、そしてブライアン・イーノへと話が進んでいるあたりを読むと、この本を読んでからジェームス・ブレイクに取材したら、もっと違った内容の話を聞くことができたのではないかと、少し後悔。でも、どちらにしても取材後にこの本は出版されたので、それ以前にサティやケージのことを思い付かなかった私が間抜けなのですが。
CDには選びに選び抜かれた関連曲が19曲、72分ほど収録。
そしてCDでサティやケージの作品を聴きながら、読む解説は格別です。原典解説に加え、推薦盤も挙げてあり、なんといっても巻末には世界史や音楽史を含む2人の年表も付いています。
巻末の年表もとても参考になります。
私はこの本を買ったばかりのうちは百科事典並みに大切に棚に並べておこうかと思ったのですが、今はボロボロになってもいいので持ち歩き、全部頭に入れておきたいから曲を聴きながら必ず手に取り、そこから気になったことへ興味を広げるなどして、何度も読み返しているほど。
もちろんサティやケージのことは知っていましたが、これほど興味を持つようになったのは、昨年放映されたBS朝日『癒しのメロディ エリック・サティの世界』を見てから。私は性格的に、興味を持つと一気にいろいろなことを調べたくなるので、今年に入って観た映画『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』からグレン・グールドのことを復習したように、しばらくはエリック・サティとジョン・ケージとその周辺に関して、これを機にいろいろ知識を深めたいと思います。というか、この『commmons:schola サティからケージへ』から、この時代の音楽や文化に関心が一気に増してしまったようです。
*To be continued