
ベン・クウェラー インタビュー④ 最終回
Music Sketch
------では、ポップ好きのベンがオススメする、ベンのキャラがわかるような映画作品を紹介してもらえますか?
「映画は大好きなんだよね(笑)。ただ、人によっては"この俳優がどうのこうの~"って詳しいけど、僕はそういうことはなくて、ポップコーンを片手に観るのが大好きで、そんなに映画監督についても詳しくないよ。もの凄くハマったのは『フォレスト・ガンプ』(1994年作品/1995年日本公開)。ストーリーが素晴らしいし、僕は負け犬の話が好きなんだ。それから『メメント』(2000年作品/2001年日本公開)、僕はサイコスリラーが好きだから。そして『インセプション』(2010年作品)だね」
『フォレスト・ガンプ』は第67回アカデミー賞作品賞を受賞するなど、大ヒット。『メメント』も、公開当時とても話題になりました。
------『メメント』と『インセプション』は、同じクリストファー・ノーラン監督ですよね? 私、大好きな監督だし、『インセプション』は熱狂的に好きなんです! 夢の階層に入っていく部分とか、最高ですよね!
「おぉ〜、そうだよね! 夢の夢の夢の・・・(笑)」。
(しばらく『インセプション』に関してマニアックな雑談)
------『インセプション』とベンの音楽に共通点があるとしたら、何だと思いますか?
「面白い質問だな(笑)。僕の音楽はポップ・ミュージックでシンプルなサウンドだけど、でもそれが何層にもなっている点、そこかな。しかも歌詞にはシークレット・ワードを入れているんだ。なぜなら僕はマジックを信じているから。僕は、(手元にあるペンを取って)もしこれが石だったら、これをポケットに入れておくと、そこに力が籠るといったことを、信じるタイプなんだ。歌詞に隠れた意味を持たせていて曲にパワーが宿るような、そんな気がしているんだよね」
------具体的に教えてもらえますか?
「例えば『ジェラス・ガール』にある"wheezy"は、"息が詰まる"といった意味なんだけど、その響きに近い名前の人がいて、それをここに掛けている。『フル・サークル』に出てくる地名のブルックリン・ハイツや、テキサスにあるマルフォは、UFOを見たとか、自分にとっての思い出のある場所で、サブリミナル・メッセージなんだよね。そういう細かいことにもこだわっているんだ(笑)」
『インセプション』は、トレイラーだけでは内容がわかりにくいですが、大ヒットした映画なので、知っている人も多いはず。
さて、ベン・クウェラーは21歳の頃に初来日しているのですが、当時は大きなリュックに大きなスケッチブックを入れていて、そこに歌詞のメモ書きから使用済みの航空券やカフェのコースターなど、何でも貼っていたのが印象的でした。今もそれは続けているそうですが、当時の話をしていたら、その時に一緒に来ていたガールフレンドと22歳で結婚した話に・・・。
------『SHA SHA』をリリースした当時は、NYに住んでいましたよね?
「8年間NYにいたけど、22歳で結婚して、24歳で子供ができて、それで生まれ故郷のテキサスのオースティンに戻ったんだ。いろんな意味でラクだからね」
------ということは、純愛を貫いて結婚したということ?
「そうだよ(赤面)。僕にとってラッキーだったよ。リズは誠実だし、僕はとても尊敬していて、一緒に学びながら成長した。17歳で出会った時、彼女は22歳で、僕より5歳年上なんだ。逆だったらいいけど、男がこの年頃で年下なのはねちょっと変わってるよね(笑)」。
マルチ・ミュージシャンのベンは、ライヴではキーボードも演奏。人柄の表れた心を温かくする歌をたくさん披露してくれました。LIVE PHOTO:Kazumichi Kokei
------リズのどこを気に入って、そんなに長く続いたの?(すみません、ちょっとワイドショー的質問で)
「コミュニケーションを取ることが大きな鍵だね。最初に出会った時に音楽の話をしたんだけど、僕らの好きなバンドの趣味が一致したんだよね。僕ら2人ともペイブメントのスティーヴン・マルクマスが大好きで、どのくらい好きか話したし、あとはニルヴァーナやエリオット・スミスのこととか、全く音楽の趣味が一緒だったのがとても良かった。あと、政治的な面や世界観も同じだった。彼女はとてもアーティスティックで、彼女からインスパイアされることが多い。とてもクリエイティヴだしね。だから一緒にいていいことばかりなんだ」
------最初のうちは、リズはベンのことを子ども扱いしなかったの?
「そうだよ。もちろん最初はそんなことなかったから、うまくいかなかったけれど(笑)。でも、大丈夫だってことをだんだん証明していったんだ」
ベン・フォールズとも親交のあるベン・クウェラー、まだ若いし、今後の活躍がますます楽しみです。LIVE PHOTO:Kazumichi Kokei
5歳の息子はベンそっくりで意志が強くて頑固、音楽や絵を描くことに夢中で、夜中の3時にトイレでガンズ・アンド・ローゼズやクイーン、メガデスなどを歌っているそう。2歳の息子は洋服をきちんと脱ぐところは母親似ながら、ユーモアのセンスはベンに似ているそう。そんな話を嬉しそうにしているベンは、ファンをとても大切にすることでも知られていて、音楽性と生き方が全くブレていないアーティストだと感じました。また来日してほしいですね。
*To be continued