Music Sketch

フレンチ・ジャズ界の貴公子、トーマス・エンコ

Music Sketch

フランスから美青年のジャズ・ミュージシャンがやってきます。ピアニストであり、ヴァイオリニストでもあるというトーマス・エンコ、22歳。ジャズは普段聴かないという読者でも、彼の話を聞くと、興味を持つと思います。先日メール・インタビューをしたので、そこでのやり取りを中心に紹介していきますね。


0304music_04.jpgフランス出身のジャズ界の貴公子、トーマス・エンコ。

音楽的に影響を受けたものは?と、聞くと、ジャズ、クラシック・ミュージックはもちろんのこと、ポップスにロック、ワールドミュージック。なかでも具体的に名前を挙げたのはジャズ・ピアニストのキース・ジャレットに、クラシック系のピアニストのマルタ・アルゲリッチ、作曲家のプロコフィエフ、そして何故か作家のヘルマン・ヘッセに『マリー・アントワネット』の作者としてシュテファン・ツワイクの名前も・・・・・・。それだけ豊かなものが彼の音楽魂の中に込められているということなのでしょう。

最新アルバム『ウィンドウ・アンド・レイン』では、ジョン・レノンの名曲「ラヴ」を筆頭に、「枯葉」や「シェルブールの雨傘」といった有名なナンバーを取り上げていて、それを斬新なアレンジで演奏しています。なかでもビル・エヴァンスの演奏で知られる「マイ・ロマンス」を、トーマスのヴァイオリンとベースのクリス・ジェニングスとのデュオで演奏し、彼はピチカート奏法を取入れて、まさに春の訪れを歌うかのような、足取りが軽くなる楽しいナンバーに仕上げています。

「世代を超えて愛されている曲はすばらしいよね、美しくパワフルなメロディは僕の情熱のひとつでもあるしね。なかでも『枯葉』はいつのときでも僕のお気に入りの曲のひとつで、説明できないくらい美しい情景を描くし、『マイ・ロマンス』も同様にすごく好きな曲なんだ。今回スタジオに入ってからベーシストとデュオでやることを思いつき、そして新しい試みが成功したと思っているよ」


0304music_02.JPGベース奏者とデュオ演奏する、ヴァイオリニストのトーマス。

ここで簡単に彼のバイオグラフィを紹介しておくと、祖父は指揮者のジャンクロード・カサドシュ、母もソプラノ歌手というクラシック音楽の名門一家に育っています。子供の頃、母親は彼に子守唄としてシュトラウスやプッチーニのアリアを歌っていたそうだから、なんとも贅沢なこと! 父親はピアニストで、お話を聞かせながらBGMとしてピアノを演奏し、特にオオカミと鹿が戦うシーンでベートーベンのソナタを弾いていたことを覚えているそうです。

トーマス・エンコは3歳でヴァイオリンを、6歳でピアノを始め、特に母親がジャズ・ヴァイオリニストのディディエ・ロックウッドと再婚してからは、ジャズやフュージョン、ワールドミュージックも聴き始めました。

「ジャズが夢中にになったきっかけは、子供のジャズバンドに参加してから。とても自由で、即興演奏などが楽しくてね! 毎日すばらしいフィーリングを味わうことができたし、同様にクラシック・ミュージックを演奏することも楽しんでいたよ」 

父親が設立したジャズ・スクールに12歳で入学し、そこでは年齢も職業も関係な人たちと音楽を楽しむことを経験し、音楽なしでいられない毎日を存分に味わっていたと言います。

「それに子供ながらにレオ・フェレやジャック・ブレルといったフランスのシャンソン歌手の歌も聴いていた。僕はジャズを演奏するけど、信じられないくらい豊潤なクラシック音楽や、シンプルでパワフルなメロディを持つポップ・ソングや伝統的な音楽からもインスピレーションを受けているんだよね」

そのため、彼の音楽は親しみやすいのかもしれません。しかし、パリの国立高等音楽院ジャズ科での、テクニックを重視した教育法は合わなかったそうです。


0304music_05.jpg
トーマス・エンコ 『ウィンドウ・アンド・レイン』

トーマス・エンコの自由な音楽スピリットは、最新作『ウィンドウ・アンド・レイン』に収録されたオリジナル曲でもたっぷり味わうことができます。特に日本人ミュージシャンの仙波清彦が参加して、鼓を叩いている曲「ユーアー・ジャスト・ア・ゴースト」や、7拍子という変則的な曲「リアズ」などはユニークです。

「この『ユーアー・ジャスト・ア・ゴースト』ではとてもソフトで軽やか、しかも人の姿をしたゴーストを想起できるパーカッションが欲しかったんだけど、仙波さんは僕のテイストに完璧な演奏をしてくれたんだよね。一方で、『リヤズ』はまったく違う豊潤で複雑なパーカッションが欲しかったけど、そこでも仙波さんは見事な才能を発揮してくれたんだ」

アルバムには世界的に活躍するトランぺッターの日野皓正も参加。新たな彩りを加えています。全11曲、いろいろな味わい方のできる1枚になっています。


0304music_01.JPG前回のジャパン・ツアーの様子♬

さて、そのトーマス・エンコは3月25日に来日し、全国13カ所の地域をコンサートツアーして回ります。FIGARO japonでは、各会場2組4名様(横浜は5組10名様、東京は2公演分合わせて10組20名様)をご招待いたしますので、彼のロマンティックで情熱的かつ華麗な演奏を堪能しに、ぜひ足を運んでみてください。

*トーマス・エンコのツアーは東北地方太平洋沖地震の影響により、中止となりました。


*To Be Continued

伊藤なつみ

音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
Twitter:@natsumiitoh

RELATED CONTENTS

BRAND SPECIAL

    BRAND NEWS

      • NEW
      • WEEKLY RANKING
      SEE MORE

      RECOMMENDED

      WHAT'S NEW

      LATEST BLOG

      FIGARO Japon

      FIGARO Japon

      madameFIGARO.jpではサイトの最新情報をはじめ、雑誌「フィガロジャポン」最新号のご案内などの情報を毎月5日と20日にメールマガジンでお届けいたします。

      フィガロジャポン madame FIGARO.jp Error Page - 404

      Page Not FoundWe Couldn't Find That Page

      このページはご利用いただけません。
      リンクに問題があるか、ページが削除された可能性があります。

      Magazine

      FIGARO Japon

      About Us

      • Twitter
      • instagram
      • facebook
      • LINE
      • Youtube
      • Pinterest
      • madameFIGARO
      • Newsweek
      • Pen
      • CONTENT STUDIO
      • 書籍
      • 大人の名古屋
      • CE MEDIA HOUSE

      掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

      COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.