虹の刻

【虹の刻 第2章】村上虹郎×山田智和×山崎ナオコーラ。

虹の刻

表現を探求し続ける3人のクリエイターが描く、とある瞬間。古来より受け継ぐ自然物を前にしたとき、わたしたちの五感が反応する、形にならない想いとは――。

フィガロ本誌3月号より始まった新連載「虹の刻」は、俳優の村上虹郎と映像作家の山田智和、そして各回ごとに変わる文筆家と音楽家を招き、”とある瞬間”を表現する連載企画。

章ごとに変わる文筆家の第2回目には、山崎ナオコーラが登場。そしてムービーの楽曲は、DATS(Vo.)とyahyel(Synth.)に所属し、楽曲プロデュースやDJなど音楽家としても活躍するMONJOEが制作。

本誌で未公開のアザーカット&スペシャルムービーと合わせて読み解く、山崎ナオコーラが綴る「触れる」の話。

ローブ¥32,400/ラムホール ベルーフ その他/スタイリスト私物

触れる」 山崎ナオコーラ

 触感は、なんのためにあるのだろう? 動物だったときは、獲物を捕まえた実感を味わうため、あるいは、敵に捕まえられそうになったことを感じて逃げるため、または、子孫繁栄に向けて性的な相手を探すためだったかもしれない。人間になって、今は、スマートフォンで情報を得た実感を味わうために触感があるのかもなあ、なんて考える。

でも、うちにいる2歳の子どもを見ていて、「○○のため」なんていう理由のない、純粋な「触れる」があるようにも思えてきた。

石をやたらと愛でるのだ。

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保育園への通園路が川沿いにあって、子どもは川縁で毎日のように石を触り、ときには拾って川の中に投げ、ときにはポケットに入れる。大きな岩は撫で、石壁には手を置く。ざらざらの石、つるつるの石の触感を確かめたがる。もし、「もう時間だよ、早く早く」と急かして石を諦めさせると、泣き出して余計に時間がかかるのがわかっているため、触りたがる石にはとりあえずちょっと触らせる。「つるつるだね。わかったね」と声をかけて手を引っ張りながら、触感をこんな風に安易に言葉に変換するなんて本当は良くないんだろうなあ、と反省する。

石なんて、食べられないし、敵ではないし、性行為の相手にもならないし、情報はくれないし、急いで触るべきものとは思えない。でも、触れたい。 そう、意味なんていらない。触れることは生きることだ。

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監督・山田智和
Tomokazu Yamada

1987年生まれ、東京都出身。クリエイティブチーム「TOKYO FILM」主宰。サカナクションや水曜日のカンパネラなどのミュージックビデオをはじめ、CMやドラマ、映画などのディレクションを行う。WIRED CREATIVE HACK AWARD 2013グランプリ受賞、ニューヨークフェスティバル2014銀賞受賞、GR Short Movie Awardグランプリ受賞。
俳優・村上虹郎
Nijiro Murakami


1997年生まれ、東京都出身。 カンヌ出品作『2つ目の窓』(2014年)で主演を務め、俳優デビュー。 17年公開『武曲 MUKOKU』で、第41回日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞。 映画『チワワちゃん』が公開中のほか、5月には舞台「ハムレット」に出演予定。公開待機作に、映画『楽園』、『ある船頭の話』、 『”隠れビッチ"やってました。』。
文・山崎ナオコーラ
Nao-cola Yamazaki

1978年生まれ、福岡県出身。2004年、会社員として働く傍ら、『人のセックスを笑うな』(河出書房新社刊)で第41回文藝賞を受賞し、作家デビュー。17年『美しい距離』(文藝春秋)で第23回島清恋愛文学賞受賞。小説に18年『偽姉妹』(中央公論新社刊)、エッセイ集に15年『かわいい夫』(夏葉社刊)、17年『母ではなくて、親になる』(河出書房新社刊)など。
音楽・MONJOE

1993年生まれ、東京都出身。2013年にDATS、15年にyahyel結成。DATSのヴォーカル、yahyelのシンセサイザーを務めるほか、個人では楽曲プロデュースやDJ、CM音楽制作など音楽家としても活躍。フジロックフェスティバルをはじめとする国内の大型野外フェスへの出場のほか、yahyelでは欧州ツアーも敢行。18年、DATSがSMEレコーズよりアルバム『Digital Analog Translation System』を発表しメジャーデビュー。同3月、yahyelで2ndアルバム『Human』をリリース。

 

●問い合わせ先:
ラムホール ベルーフ
tel:03-5489-6567

réalisation : TOMOKAZU YAMADA, direction de la photographie et montage : YUKI SHIRATORI, musique : MONJOE (DATS / yahyel), acteur : NIJIRO MURAKAMI, texte : NAO-COLA YAMAZAKI, stylisme : RYOHEI MATSUDA, coiffure et maquillage : TAKAI

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