「齊藤工 活動寫眞館」について

鮮烈な光の中で、UTAと齊藤工のフォトセッション。

「齊藤工 活動寫眞館」について

俳優・斎藤工が、アーティスト・齊藤工として手がける、モノクロ写真。尊敬する人、会いたい人にカメラを向け、映画のメインキャストを撮影するように、一瞬の表情と佇まいを写し取る。フィガロジャポン本誌「齊藤工 活動寫眞館」に未掲載のカットと、齊藤自身の言葉で、撮影舞台裏を綴ります。今回は、昨年齊藤とモデルとして共演したUTAが登場。

今年2月、表参道のスタジオにUTAはひとりで現れた。
「よろしくお願いします」と落ち着いたトーンで挨拶する彼は、すらりとした長身に端正な顔立ち。穏やかな佇まいながら、話しはじめると初対面であることを忘れてしまうほど気さくで、その場にいたスタッフは早くも彼に惹きつけられる。

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齊藤工とUTAは、2020年9月に東京で行われたルイ・ヴィトンの2021年メンズコレクションのショーに、ともにモデルとして出演。その時が初対面で、お互いに意識していたものの、言葉は交わさなかったという。

「ほかにも俳優を含めたくさんの人が出ていましたが、UTAさんは別格でした。
かつてはヨーロッパのランウェイで、海外のモデルに負けずに存在感を示す日本人の男性モデルがいなかった。その中に颯爽と現れたのがUTAさんだったんです。すごく誇らしくて、彼の両親のことを知る前からずっと注目していました。日本ではそうしたプラスアルファの情報が前に立ってしまうけれど、海外では関係ない。それは映画にもいえることで、いちファンとして刺激をもらっています」

齊藤がそう振り返るように、UTAはアメリカで大学生活を送っていた時にパリコレクションでモデルデビュー。コム デ ギャルソンなどのショーに出演し、ミラノのランウェイにも登場した。そんなUTAを撮影するにあたり、齊藤が思い描いていたのは、ひと筋の強い光が顔を照らす、シャープなイメージだった。スタジオに到着し、UTAと再会してにこやかに挨拶を交わした後、すぐさまスタジオのオーナーでフォトグラファーの今林浩一とともにライトを組みはじめた。

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UTAは今回の衣装を自身でスタイリング。上着の下に着ていたスウェットには何と、大きな丸い穴が空いている。

「ラッパーの友人がやっているブランドの服なんです」。そう言ってUTAはスマートフォンを取り出し、ブランドのインスタグラムを見せてくれた。ナイスドリームスという、アーティストKOHHが率いるクリエイティブ集団「Dogs」のメンバーが手がけるブランドで、地元・北区王子を大切にしながら活動しているという。

昔から服に興味はあったというUTAだが、モデルになる前はバスケットボールに打ち込んでいた。

「僕の父が学生時代にバスケをしていた影響もあったし、通っていた小学校がインターナショナルスクールで、仲の良いアメリカ人の友達がみんなバスケ好きだったので、自分も始めたらハマりました。

12歳の時、スイスに留学しました。行きだけ祖母が一緒に付いてきてくれたのはいい思い出です。その学校もインターナショナルで、ヨーロッパや中東とかいろいろな国籍の子がいて、人間の多様性などさまざまなことを学べたと思う。そこではサッカーが主流だったけれど、やっぱりバスケが好きだったので、アメリカにあるIMGアカデミーに転校しました」

スポーツ名門校であるフロリダの高校を卒業後、サンフランシスコの大学へ進学。UTAはバスケットボール選手として活躍することになる。

「バスケ選手とモデルの二足のわらじを履けないかと考えたけれど、それは難しかった。練習を怠れば試合に出られない。バスケ漬けの大学生活で何とか踏ん張りながらも、どこかでリミットを感じていました。それにもともと服への興味はありました。当時はTシャツに短パン、スウェットがほとんどだったけれど(笑)。アメリカの友人たちは13、14歳でタトゥーを入れてたのですが、僕はひとつも入れていません。逆にレアだと思ったし」

こちらが興味を持って尋ねると、UTAはいろんな話を聞かせてくれた。率直さと、すでに広い世界を見てきた客観的な眼差しが同居する。

「トレンド的なSNSはやりません。インスタグラムは仕事用に使っています。モデルの仕事の写真をアップすると、僕がバスケをしている姿しか知らない友人たちに『どうしたの?』って言われます(笑)」

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撮影の準備が整い、UTAが齊藤のカメラの前に立った。
立ち位置を決める時、「目にいちばん強い光がくるように。眩しいかもしれないけれど」と齊藤がUTAを気遣うが、「大丈夫です」と答え、強く真っ直ぐな目線をカメラに向ける。しばらくシャッターを切った後、齊藤はUTA本人にも写真を見せて、光の強さを微調整しながら撮影を進めていく。

ハイコントラストな光の中でのカットを撮り終えた後は、自然光で撮影。窓から差し込む日差しが明るく、「もう少し光の中に入ってきてください」と齊藤がUTAに伝え、先ほどまでのカットとはまったく違った印象に。「活動寫眞館」の撮影では、時間も空間も限られていることが多く、齊藤は短時間に決定的瞬間を引き出してカメラに収めていくが、この日は穏やかな時間が流れる中、いつも以上にシャッター音が響いていた。

「楽しかったです。いい緊張感がありました。どんな衣装にするか悩みましたが、攻めた感じにしてよかった(笑)。写真で生かしてもらえました」。撮影終了後、UTAはそう言って笑顔を見せた。

「UTAさんはとても聡明で発光している感じがしました。その光は場の全てを優しく照らしてくれる。佇まいの美しさに改めて見惚れてしまいました」

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UTA
モデル。1997年、東京生まれ。2018年、フランスのSuccess Modelsと契約し、パリ・ファッションウィークにてランウェイデビューを果たす。 その後も学業とバスケットボールを両立しながら、 国内のみならずミラノ、ロンドン、ニューヨークでもモデルとして活躍する。Instagram:@utauuu
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TAKUMI SAITOH
長編初監督作『blank13』では国内外の映画祭にて8冠受賞。HBO asiaのプロジェクトで日本代表監督を勤めたFOODLORE『Life in a box』がAsianAcademyCreativeAward2020にて、日本人初の最優秀監督賞を受賞。現在、監督最新作『ゾッキ』及び『裏ゾッキ』が全国公開中。主演作『シン・ウルトラマン』や『CUBE』『狐狼の血II』等の公開が控える。企画・制作を手がけたクレイアニメ『オイラはビル群』がWOWOWオンデマンドで配信中。また、18年にパリ・ルーヴル美術館のアート展にて白黒写真作品【守破離】が銅賞受賞。19年も出品。移動映画館「cinéma bird」の主宰や「MiniTheaterPark」の活動等。

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