TAO'S NEW YORK NOTES

【TAO連載vol.3】アジア人というアイデンティティ。

TAO'S NEW YORK NOTES

ニューヨークに生活の拠点を移して10年。モデルを経て女優として活躍中のTAOは、現在ハリウッドを中心にさまざまな作品への出演を重ねている。アジア人として、モデル出身の女優として、日々抱く想いを綴る連載。3回目はアメリカで変化した、自身のアイデンティティのこと――。

この夏、映画界では『Crazy Rich Asians』:邦題『クレイジーリッチ』が大ヒットを記録したのが記憶に新しい。

アジア人の存在感がアメリカで増してきている! そんなふうに思えるうれしい出来事だった。

アメリカに住んでいると、やはり年々「人種」について敏感になっていく。自分のアイデンティティ、そして他人のアイデンティティ。
ニューヨークはそれを肌で感じ、心で考えられるようになる最高の街だと思う。

今年はいままで以上に自分のことを「日本人であり、アジア人である」ということを強く、ポジティブに感じた一年であった。
そう感じることによってたくさんの同志に出会え、視野が広がり、人生の目標が大きくなった。

私が10年前にニューヨークに来てモデルとして活躍できた背景には、絶対的に中国経済の成長があった。
中国マーケットを意識したメゾンや雑誌が、意識的にアジア人を多く使うようになったのだ。そしてその中に上手く入り込むことができた、なぜならこっちの人たちから見れば私も他の中国人たちも一緒に見えるからだ。

感謝せずにはいられないが、正直とても戸惑った。大きな中国ファッション誌に初めてポートレートが載った時には、プロフィールに中国人と日本人のハーフだと記載された。これはミスではなく、そうすることによって中国のオーディエンスから受け入れられやすいだろうという編集側の、反日感情への配慮だった。実際にその後もその雑誌には気に入ってもらえてちょくちょく撮影をしていたが、訂正はしてもらえなかった。ある時、5周年記念号の表紙に他の人気モデルたちと出演して欲しいというオファーが来た。さすがに記念号だし、すでに一度中国人とのハーフだと誤報を載せられてしまったので、この仕事はできない、と渋った。もしそこに、たとえば韓国人モデルやそのほかのアジア人モデルも混ざっていたらよかったのだが、5人中4人が中国人という中で自分だけが日本人だったことに違和感があった。結局周りに説得されてその撮影には参加をして、結果よかったとは思うけど、アメリカ人の中で私は何人だろうと関係なく、「アジア人」という風に括られるのが虚しかった。「日本人」として認識して欲しかったのだ。

そんな私に変化が訪れたのは今年に入ってからだ。

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APEXで集まったアメリカで活躍するアジア人たち。日本人、日系、韓国系、中国系、ネパール人、チベット人のグループショット。

春にAPEX for Youth(エイペックス フォー ユース)という、ニューヨークに住むアジア人の若者たちを応援する団体の授賞式に招待された。
そこにはさまざまなアジアの国にルーツを持つ、移民、二世、三世またはハーフ、クウォーター etc.としてアメリカで活躍する人たちが一堂に会し、激励し合っていた。

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アート、ミュージック、スポーツ、ファッション、テクノロジー、エンターテイメント……実にたくさんの分野で輝いている色々なアジア人がいるという事を一晩で知ることができて、大変刺激を受けた。

またそんな中、アメリカ国内での若者の自殺者の中ではアジア系女性が断トツに多いというショッキングな事実も聞いた。会場でスピーチをしたある人は、これは白人ではないという事に劣等感を感じ、ひと一倍がんばらないと認めてもらえないという親や周りのプレッシャーが強すぎるからだと非難していた。

有色人種だから白人よりも頑張らないと同じスタートラインにも立てない。これは悲しいいかな少なからず存在する事実だと思う。

APEXはそんなあり方に疑問を持ち、若い世代のアジア人たちにそんなプレッシャーを感じずに伸び伸びと夢に向かっていけるような環境づくりを応援している。

そこで大人として次の世代を応援していく上で肝心なのが、自分たちを同じ「アジア人」として括り、仲間意識を持ちともに助け合い、高め合っていくことだと思い始めたのだ。

私はいまふつふつと湧き起こっている、アメリカにおけるアジア人の人権運動に、いち「アジア人」として賛同せずにはいられない。
そして若い時に強く思っていた「私は日本人、他と一緒にしないで」という自尊心は不必要となり、スーッと浄化していった。

一般的に日本人には苦手なことだと思う。
アジアいちの先進国(さていまだにそうだろうか?)だというプライド、自分たちがいちばん欧米に近い、という欧米文化コンプレックス、そして歴史的・政治的背景が邪魔をし、「他のアジア諸国と手を取り合ってがんばろう」と考らえられる人は多くない。

日本は特別な国である。それに誇りを持つことは悪いことではないが、アメリカという大国の中で戦っていくには、「アジア人」の結束力を持って立ち向かわないと太刀打ちできないのではないか。そしてそれができたら、なんてパワフルで素敵なことだろうか。
一緒くたにされてもいいとか、ごちゃ混ぜの認識のままで良いということではない。それはやはり個々の国々でPRしていかなくてはいけないところだし、いまも昔も行っていると思う。

ただ「日本」はアメリカ大陸でもヨーロッパ諸国でもなく、「アジア」の中の、小さくて、美しい国だということを再認識したい。


先日友人たちとこんな話にもなった。アフリカ系の人たちがどうやってここまで戦い、市民権を得てきたのか。そしてなぜいま圧倒的な影響力とパワーがあるのか。
それは「どこの国の出身」ではなく、「アフリカにルーツを持つ」という大きな絆で結束しているからだというのだ。その通りだと思う。

もちろん彼らが乗り越えてきた苦境は想像を絶するもので、その悲運がお互いを結びつけている大きな要因だと思う。
同じ歴史を歩んできていない私たちには、アジア人も同じように! とは軽々しく言えないが、見習うべきところがたくさんさんあるように思う。


とても複雑な時代だからこそ自分のルーツと他人のルーツに敬意を払って、私たちの仲間が少しでも劣等感を感じずに生きて行けるよう、次の世代へと良いバトンを渡していきたい。

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昨年参加したジョン・ウー監督の作品『マンハント』では中国、韓国、日本人キャストが競演し、ベネチア映画祭にてプレミア上映された。もっともっとこういった作品にも参加していきたい!

TAO

千葉県出身、ニューヨーク在住。14歳でモデルを始めた後、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』のヒロインとして女優デビュー。以降、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年)やドラマ「ハンニバル」「高い城の男」(ともに15年)など話題の映画やテレビドラマに出演。18年はHBOドラマ「ウエストワールド」や、日本では『ラプラスの魔女』や『マンハント』が公開され、国内外で活躍の場を広げる。
※TAOのオフィシャルインスタグラムでは、この連載で読みたいテーマを随時募集中。コメントまたはDMにてお知らせください。

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