TAO'S NEW YORK NOTES

【TAO連載vol.2】直したい、癖のこと。

TAO'S NEW YORK NOTES

ニューヨークに生活の拠点を移して10年。モデルを経て女優として活躍中のTAOは、現在ハリウッドを中心にさまざまな作品への出演を重ねている。アジア人として、モデル出身の女優として、日々抱く想いを綴る連載。2回目はTAOが直したいと思っている日本人ならではの癖について――。

今回は私の直したい「悪い日本人の癖」のお話。

読者の方々は、人から褒められたとき素直に「ありがとう」と言えるだろうか?

「その服可愛いね」「本当? 安物だよ」
「肌きれいだよね」「○○さんに比べたら全然きれいじゃないよ」

こんな会話をしていないだろうか。

もちろん何がおかしいの? とお思いだろう。何もおかしくないのだ。日本人なら当然の謙遜した返事の仕方だと思う。

日本で生まれ育っている私はいくら海外生活が長くなっても、他人から褒められるとまず「全然そんなことないよ~」と言ってしまう。
そもそも褒められるのが苦手なので、どう反応していいのかわからず、こう言ってしまうことがほとんどだ。

日本ではごくごく一般的な返し方なのだが、ある日ふと気がづいた。ニューヨークで生活をする人たちから見ると、私は何にも感謝ができないネガティブな人間に映っているんではないかと不安になったのだ。
アメリカでは人から褒められたらまず"Thank you!"と返すのが礼儀であり、「え~そうかなぁ~」と謙遜する返事はなかなか聞かないものである。もちろん本当に自信がなかったりすれば"Really? Do you think so?"「本当?そう思う?」とはなるが、最終的には"Thank you"で締めくくる。

感謝はできる方だと思っている。自分は恵まれているなぁ、とつくづく思う。
ただ「あの映画かっこよかったね」「新しい髪の色すごく素敵だね」などと言われてまず第一声に「ありがとう」が出てこないのだ。

たとえば「あの映画かっこよかったね」には「でも撮影が大変でさ~」とか、「髪色いいね」なんかも「本当? でも傷んじゃってケアが面倒臭いよ」なんて返してきていたのだが、ニューヨークの友達にこういった返事をすると、「どう大変だったの?」「何でそう思ったの?」「もっとこうしたら良いんじゃない?」などと真剣に悩み相談みたいになってしまう。褒められるのがくすぐったくて早くその会話を止めたいと思っているからそう言った返事をしている節もあるのに、(嗚呼……また長くなっちゃうなぁ……そんなに真面目に聞いてもらうほどの話でもないのに……)という流れになりがちであった。

日本では「ありがとう」と言うと、下手したら「あの人自信過剰だね」なんて捉えられる可能性もあるが、こちらでは「ありがとう」と返事を出来ないことが卑屈に見えてしまう可能性が高いのだ。

海外に住むようになり、特に、日本人らしさを忘れたくないなと思って常々生活しているが、ここはさすがに郷に入れば郷に従えで、アメリカ人のように褒められたら「ありがとう!」と言おうと心がけるようになった。


文字に書くと簡単そうだがこれが意外と難しく、いまだに苦戦している。


よくないなぁと思いながらやめられないもうひとつの悪い習慣は、夫の話をする時だ。
自分のこと以上に他人から「素敵な旦那(彼氏)さんですね」なんて褒められたりすると、「そんなことないんですよ」と言ってしまい、そこでやめればまだいいものを、「こんなダメなとこもあったりするんですよ~」とおもしろおかしく付け加えて笑いを取ろうとしてしまう悪い癖がある。
私なりの愛情表現だったりもするのだが、いまの夫(スイス出身)には付き合い始めにビックリされて、ときには怒られたものだ。
「そうなんです、うちの人、優しいんですよ」なんて言ったところで、のろけていているようで照れ臭く、こうなってしまうのだが、やはり彼はいい気はしない。

私の周りのニューヨークに住む夫婦はお互いのことをちゃんと褒められる人が多い。"She/He is the best!"「彼女(彼)がいちばん!」なんて風に。その場にパートーナーがいてもいなくてもだ。

もちろん人によるし、お国柄もかなり出る。あるイギリス人の友達は皮肉たっぷりのユーモアを含ませるし、あるスペイン人の友達はこっちが恥ずかしくなってしまうほどお互いを褒めあったりする。

子どもの頃、「うちのは料理もろくにできなくて……」というようなへりくだって自分の奥さんを紹介する人を見て(実際に見たというよりはテレビや映画の描写が多かった気もするが)、失礼だなぁ、これは日本の良くない文化だなぁなんて思ったものだが、自分もいつの間にか同じ大人になってしまっていた。

そして最近思うのは、日本でも昔と違って自分のパートナーを褒められる人が増えた気がする。
これは男性と女性の社会的立場が、平等に向かって変わりつつある背景もあるんではないかと期待している。そうであればとても素晴らしい。

私も見習って、"Thank you"と"He's the best!”が言えるモダンな日本人になりたい。

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photos et text : TAO, photo : TAKUMI SAITOH(TITLE BANNER)

TAO

千葉県出身、ニューヨーク在住。14歳でモデルを始めた後、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』のヒロインとして女優デビュー。以降、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年)やドラマ「ハンニバル」「高い城の男」(ともに15年)など話題の映画やテレビドラマに出演。18年はHBOドラマ「ウエストワールド」や、日本では『ラプラスの魔女』や『マンハント』が公開され、国内外で活躍の場を広げる。

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