【篠原ともえ連載 vol.2】テキスタイルデザイン "生地"をつくる。
TOMOE SHINOHARA MAKING
テキスタイルデザインの仕事を始めて今年で5年目。生地という材料を人々に届けるということは、ものづくりを通じてコミュニケーションしているような感覚があり、私の作品が形を変えて想像以上のものになるのがテキスタイルの魅力でもあります。
最近では多くの人が手芸やミシンなどで作品を作り、SNSにアップしたり、ものづくりは今後も身近になっていくような気がしています。みんながオリジナルの作品をつくり、楽しむ。テキスタイルのアイデアは無限ですよね。
私は物語を想像してものを作るのが好きなので、生地にはデザインごとに名前を付けています。それは携わるスタッフとの意思疎通や同じ景色を見るためにも役立つからです。この花の名前は「チャッティーフラワー」。香りでおしゃべりしてる花をイメージして。
イラストはキャンバスに耳を澄まして、描かれたい世界を聞くような感覚で完成させていきます。昨年は、1年間の充電期間を設けて仕事をセーブし、母校の服飾学校に通いました。パターンメイキングの学びを生かし、撮影のセットアップも生地が余らないように、ほぼ直線だけでデザインしたパターンで仕上げました。
今回難しかったことは「花」というモチーフ。これまでに多くのアーティストがオリジナルの花を描いているので、実は花のデザインはとっても難しいのです。私らしい花をとにかく描き探し続けました。
毎日毎日考えているとフニフニとした不思議な形の花が夢に出てきた。夢の記憶をたどり幾度もいろんな手法で描いてイラストレーションは完成しました。それまでにさまざまなデザイン資料を集めたりなどもし、去年は海外でもテキスタイルデザインを見て回ることも。
アーティストのヴィヴィアン・ズーター(Vivian Suter)をご存知でしょうか。去年ニューヨークのチェルシー地区のギャラリー街で彼の作品を初めて見ましたが、オーガニックな生地にダイナミックに絵画を表現していて、テキスタイルとアートの表現を行き来しているような自由な作品は圧巻でした。
旅では、ギャラリーや生地街も巡るのが楽しみのひとつ。ニューヨークのガーメントディストリクトはタイムズスクエアから歩いて10分という好立地ですし、パリではマルシェ・サンピエールをはじめ、ロンドンならゴールドホーク・ロードなど。生地街巡りは街の活気も連動しているしぜひ行ってみてほしい。
私が去年足を運んだのはスペインの生地街Plaza de PontejosにあるAlmacén de Pontejos。店頭の生地の見せ方も美しく、サロンに招かれているような雰囲気を味わえる。
幼少の頃にも生地屋さんに母とよく行きました。私の選んだ生地で作ってくれたベッドカバーを毎日抱きしめて眠る毎日。その色は柔らかなサーモンピンクだったのをいまでも鮮明に覚えている。安心して夢を見ていたのは、生地を通じて手作りの温もりを感じていたからだと思う。
テキスタイルはクリエイションで繋がるコミュニケーションアイテム。これからも世界中からインスピレーションをもらってデザインし続けたい。生地は全5種10配色、手芸専門店パンドラハウスの全国300店舗で発売されます。インスタグラムでは他のデザインもアップしているので見てみてくださいね。生地を通じて、皆さんがデザイナーとなり手作りを楽しんでいただけますようにと願っています。
texte et photos : TOMOE SHINOHARA, photo : SAYUKI INOUE (portrait)