シャネルの魅力にクローズアップ

【シャネル08】ダンサーを支える美しいコスチューム。

シャネルの魅力にクローズアップ

シャネルはパリ・オペラ座のバレエシーズンを後援し、現在の2019/20が2シーズン目である。ダンスとのシャネルの関わりは、ガブリエル・シャネルの時代にさかのぼり、当時パリを席巻していたバレエ・リュスがきっかけだった。

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『春の祭典』『ラ・パラード』といった作品で見たモダニティあふれるダンスは、彼女に大きな衝撃を与えた。主宰者セルゲイ・ディアギレフのプロデュースの才能にも無関心ではいられない。親友のミシアと画家ホセ=マリア・セールの新婚旅行に誘われたガブリエルは、喜ばしいことにヴェネツィアでミシアからディアギレフを紹介される。その席での話題といえば、『春の祭典』の再演のための資金繰り。パリに戻ってから、彼女は苦戦する彼に援助を申し出たのだ。誰にも内緒に、と。これが彼女の初の芸術メセナ活動だった。

ディアギレフとの友情は、1929年に彼が亡くなるまで続く。その間に新作『青列車』のコスチュームデザインを彼女は任される。パリで第8回オリンピックが開催された1924年のことで、ディアギレフがジャン・コクトーにスポーツに関わるバレエ作品を依頼して生まれた作品である。海水浴、テニス、ゴルフに興じる人々を踊るダンサーの身体が自由に動ける、ジャージー素材の衣装を彼女はデザインした。

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身体がより自由に動けるデザインを求め、最終リハーサルでダンサーに衣装を着せたままガブリエル・シャネルは手直しをしたそうだ。  © ADAGP, Paris, 2018. Photographie © The Times / News Licensing

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1992年パリ・オペラ座に『青列車』がレパートリー入りした際、ガブリエルがデザインした衣装が作り直された。5月3日までムーランの国立舞台衣装センター(CNCS)にて開催中の『ダンスのクチュリエ』展で、水着とガウンが展示されている。  photo : MARIKO OMURA

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カール・ラガーフェルド、そしてヴィルジニー・ヴィアールへ。

それから90年以上が過ぎ、あらゆる芸術に造詣が深いカール・ラガーフェルドは、パリ・オペラ座バレエ団のレパートリーに加えられたジョージ・バランシン振付『ブラームス・シェーンベルク四重奏』のためのセットデザインと衣装を任された。当時の芸術監督バンジャマン・ミルピエからの依頼である。

音楽に導かれて創作するバランシンのバレエには物語がない。それでカールは次のように考えたそうだ。「オーストリア=ハンガリー帝国が終焉へ向かう時代。舞台後方の幕に描かれた暗闇の中にそびえる城が、新しい時代へと向かう予兆を感じさせます」と。3楽章それぞれの雰囲気に合わせてデザインされた3タイプのコスチュームは、ウィーン分離派がインスピレーション源。エレガントでグラフィカルなロマンティック・チュチュが、空間に優美に舞う舞台となった。

彼はシャネルによる初の後援シーズン2018/19の開幕ガラで踊られたオハッド・ナハリン振付『ボレロ』のコスチュームもデザインしている。これはオーレリー・デュポンとゲストダンサー、ディアナ・ヴィシニョーワのデュオによる一夜かぎりの公演のため、という実に贅沢な衣装。ハードなコンテンポラリー作品なので呼吸しやすいよう伸縮性の高い素材が用いられ、脚を上げられるようキュロットがセットされたミニマルなドレスだった。「クチュールピースと違い、ダンスの衣装はそれを着て踊るものです。カールは振付に適合した素晴らしい衣装を作ってくれました」とオーレリーは回想する。

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そしてシーズン2019/20のオープニングガラでも、シャネルは再び衣装を担当。過去のガラ後援者とはこうしたパートナーシップは生まれなかったのだが、後援者には金銭だけでなく芸術的な面でもバレエ団に関わってほしい、という芸術監督オーレリー・デュポンの願いがあってのこと。ともにフレンチエレガンスを誇るシャネルとオペラ座ならではの関係ともいえる。

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2019年9月27日にオペラ・ガルニエで開催された2019/20オープニングガラで踊られた、セルジュ・リファール振付の『Variations』。 ©CHANEL

このガラで現在のファッションのアーティスティック ディレクター、ヴィルジニー・ヴィアールがデザインしたのは『Variations』を踊る6名のダンサーのためのロマンティック・チュチュ。この作品を1953年に創作したのはセルジュ・リファールだ。彼はバレエ・リュス後期にディアギレフの寵愛を受けていたダンサーで、1930〜45年そして47〜58年に、パリ・オペラ座のバレエマスターを務めている。ガブリエルとも親しく、ふたりが南仏の別荘ラ パウザの庭でダンスを真似てはしゃぐ写真を記憶している人もいるだろう。

ヴィルジニー・ヴィアールによる『Variations』のロマンティック・チュチュの制作風景。 ©CHANEL

6着のドレスは、チュールに手縫いされたルマリエによる繊細な花が、ダンサーにより異なるという趣向。オペラ座のチュチュにはコルセットが用いられるのが常だが、この『Variations』ではヴィルジニーの希望でストレッチ素材が用いられることになった。『青列車』から95年、ダンサーの身体が舞台上で再び解放されて自由を得たのだ。ガブリエル・シャネルの言葉が蘇る。「自由に動ける身体ほど、美しいものはない」。時代は巡る。シャネルとダンス。次はどのような章が開かれるのだろうか。

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©CHANEL

texte : MARIKO OMURA, graphisme du titre : SANKAKUSHA

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