シトウレイの東京見聞録

大人の学びなおしの場、オンラインサロンの盛り上がりについて思うこと。

シトウレイの東京見聞録

YouTubeを開く。カタカナでファッションをググる。出てくるのはコスパのいいファッションスタイリング、スカーフの巻き方、こうやったら垢抜けますとか可愛くなります的なハウツーなどなど。役には立つし勉強にもなるのだろうけれど、いかんせん心が躍らない。ファッションの話をしているのに、どの動画からもさっぱりお洒落さだったり、ファッションのワクワクとかドキドキを感じない。これって一体何なんだろう?というのが、かねがね心に抱いてた疑問で。

もうひとつ、オンラインサロンに関して。端的に、口さがないのを覚悟でいうと、なんだかちょっと「うさんくさい」って思ってた。投資とかアフィリエイトのスキルが身につくとか、人脈やネットワークが広がるだとか。情報のある人間もしくは有名人に、そのフォロワーが笑顔で年貢を納める「憧れ搾取」というイメージがあって、若干懐疑的だった。

ファッションというのは、その特有のキラキラ要素が醸し出す、スノッブだったり少し背伸びしなくちゃ届かない、そこはかとない「憧れ」という要素が意識するしないにかかわらずつきまとう。そこに価値があるからこそYouTubeだったりオンラインサロンというもののイメージが持つ、「(いままでだったらありえない)距離の近しさが手に入る権利」とは、そもそも相いれないものなのかなぁ、と思っていた。だけれども。

ここ一年で気がつけば、ファッションの発信と受信の方法が、大きく変わっていたのだった!
急速に、雑誌をはじめとするマスメディアを主戦場としていた所謂、ファッション業界の人々が、自身のYouTubeチャンネルを開設してたり、オンラインサロンを始めてて。ある意味ファッション業界の人達の、「情報伝達」における地殻変動が始まったと言える。     

例えばYouTube。モデルでインフルエンサーのローラが今年のはじめに、モデルの佐田真由美さんが去年末にチャンネルを開設していたり。(昭和55年からモデルをやってるという彼女が「まさか自分が『チャンネル登録をお願いします!』なんていう日が来るとは……」とインスタグラムで書いていたのは、私にとって時代の移り変わりを感じた一コマだった。もはや令和2年。昭和は勿論、平成も遠くなりにけり!)オンラインサロンに関しては、藤原ヒロシさんをはじめ、スタイリストの白幡啓さんだったり、ファッション業界のある意味重鎮クラスの人が開設しているのだ。オンラインサロンが、なぜいまこれだけ盛り上がっているのだろ?

200130-rocc.jpg藤原ヒロシさんによるオンラインサロン「RoCC」。

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「三原さん、で、オンラインサロンっていうのはつまりなんなんでしょう? なんでいま、こんなに盛り上がっているの?」
文章、写真、イラスト、音楽、映像などの作品配信サイト「note」を運営する会社、ピースオブケイクの三原さんに早速話を聞きに行く。「note」はこれからサロン(「note」の言葉を借りるとそれはサークルということだ)運営の場を提供していくという。

200130-shitourei-06.jpg文章、写真、音楽、動画などを誰しもが気軽に投稿でき、作り手とフォロワーを繋ぐメディアプラットフォーム「note」。

「それはつまりSNSの成熟です。国や性別、年代を超えて、有名人から、それをフォローする一般の私たちまで、SNSを通して誰もが繋がれるようになりました。そのフラットでリベラルな世界が新しくて一気に広がり、いまや『当たり前の世界』になりましたよね。フラットでリベラルに繋がって、みんなと話ができるからこそ、マイナス要素も同時に成長したんです。例えば、言葉が意図しない方向に編集されてしまったり……。そのマイナスの要素に疲れてしまう人達が増え、『信頼できる人が発信し、その価値観を共有できる人達が増え、『価値観を共有できる人達と平和なコミュニティの中で建設的な会話がしたい』という気持ちが強くなり、その結果できたのがサロン(サークル)というコミュニティなんだと思います」

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あぁ、確かに。一億総発信の時代になって、発信したら、当然それを聞いて欲しくなる。聞いてもらったその先には、「どう思ったか」のレスが欲しくなる。発信したら、同じ分だけ反応が欲しい。その欲望が、「#〇〇と繋がりたい」というハッシュタグに投影されているのだと思う。ただ、SNSの成熟期のこの段階で生まれてきた新しい欲望は「誰でもいいから繋がりたい」ではなくて、「価値観を共有できる人と繋がり、実のある話がしたい」なのだ。その受け皿として「サロン」という存在が新しいコミュニティとして台頭してきた。

誰とでも繋がる自由を得たからこそに、誰と繋がるかを選ぶ時代がきたのだ。

「『誰と』もそうですし、何を、つまり情報も選び取る時代になってますよね。本やテレビやラジオに加えていまはNetflixだったりAmazonプライムだったりSNSだったり、面白いことがまわりに沢山あるんです。なんとなくSNSを見ていたら、あっという間に1時間たっていた、なんてことはよくある話。だからこそ、いまは効率的に自分が欲しい情報にリーチできるってことに価値が生まれてきてるんです。つまり、信頼のある情報はお金を払ってでも欲しい、と。
『2,000円で30,000文字で書かれていて読むのに10時間かかるものより、1,000円高くてもいいから、3,000円で3,000文字で同じ内容が書かれてて、1時間で読めるものが欲しい』という時代」

なるほど、サロンというのは、情報を得る効率性に重きが置かれる時代において、理にかなったシステムとも言える。好きな人、人の情報ソースがワンストップで得られる場所。つまり、いままでは書籍や雑誌、テレビやSNSとばらけて発信されていた「ある人」の言ったことや感じたことが「サロン」という場所に一つに集積している利便性があるのだ。

「あと、もう一つ。マネー決済のプラットフォームが整ったこともあります。いままではお店でしかできなかったネット決済が、個人対個人の単位でもできるようになった、というのは大きいと思います」

フリマアプリの台頭で、CtoCのお金のやりとりが普通になったいま、情報もCtoCの時代へ、とうことだ。そういえば2020年は「形のないものが価値を持つ時代」といわれているけれど、それはこんな風に情報だったり、そして情報を得る時間だったりが価値になるという意味でもあるのかもしれない。

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「ねぇ、啓さん。なんでサロンって、いまそんなに盛り上がっているの?」

一昨年から自らのサロン「kei Shirahata Styling maniacLOVE」をスタートした、スタイリストの白幡啓さんに直接疑問をぶつけてみる。私が知っている限り、啓さんはSNSもあんまり得意な方でもないし、裏方気質というか、そもそもあまりオフな形で表に出るのが好きではない人。だからこそ、彼女がサロンを開設したっていうのは私にとって意外だったのだ。

200130-shitourei-02.jpgスタイリストの白幡啓さんによるオンラインサロン

「うーん、色んな要素があると思うけど、多分、働き方改革に伴って副業がOKになったってことも大きいと思うのね。会社だけに頼らないで自分の力で稼ぐ、フリーランスのマインドが段々一般化してきたことも、後押ししてると思ってて。副業だからこそ自分の好きなことを学び深めて、それが仕事にも結びついていったらいいなって人が増えたんじゃない? 学ぶっていうとこれまでは学校だったりお稽古事だったりしたけれど、それよりももう少しカジュアルで、かつニッチなことを学べる立ち位置にあるのが、『サロン』なんだと思う」と、啓さん。

青山のカフェにて、啓さんと、啓さんのサロンメンバー達と私は話をしてる。

200130-shitou01.jpg啓さんとサロンメンバー達。メンバーだけで集まってご飯を食べることもあるほど仲がいいそう。

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「それに学校の部活みたいに、一緒に好きなことで盛り上がれる仲間ができることもサロンの魅力かなって私は思う。もちろん、啓さんというずっと好きだった人と話をしたり、教えてもらえることも楽しいけれど、サロンでできた友達と好きなファッションのことを話して盛り上がるのもとっても楽しくて」と、サロンメンバーのRYOKOさん。

確かに以前に比べて「『好き』を仕事(お金)にしたい」って人は増えてきてるなぁ、とは感じるところで。働き方改革の推進しかり、YouTuberしかり、好きをお金にする人達の台頭だったり、CtoCのプラットフォームが整ってきていたりという背景が「好き」を仕事にする人を増やしているんだろう。思い立ったその時に、ひとりぼっちで始めるよりも、支え合ったり励まし合う仲間がいた方が頼もしい。

サロンというのは、「学び」という縦軸の成長を得るとともに、その学びをさらに後押しする横軸の広がり、つまり「成長する仲間」を得られる場所なのだ。誰と繋がるかを取捨選択する時代において、ピンポイントで自分が繋がりたい人と出会え、成長できる場所。

「サロンって自分の好きを仕事に変える、つまり『自分のアイデアを形にする力になるプラットフォーム』なんだろうね。なんかいいよね、そういうのって」。啓さんはそう言う。うん、何かいい、とても。健やかな野心が育つ場所。

200130-shitou02.jpg啓さんのサロンのオフラインでの集まりの様子。勉強熱心なメンバーばかり。

シトウレイ

ストリートスタイルフォトグラファー兼ジャーナリスト
日本が誇るストリートスナップのパイオニアであり、独自の視点で捉えた世界のファッションを発信するメディア『STYLE from TOKYO』 を主宰。

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