シトウレイの東京見聞録

自分の魅力を教えてくれる、青山のブティック。

シトウレイの東京見聞録

青山にある「Le charme de fifi et fafa(ル シャルム ドゥ フィーフィー エ ファーファー)」(以下フィーフィー)は、私が世界でいちばん好きなお店だ。お店というか体験空間という方が近いかもしれない。フィーフィーの好きなところは色々あるんだけど、いちばんの魅力は自分の感受性を解放できて、センスをよりブラッシュアップできるってところ。
自分自身を再発見できる場所、ともいえる。

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まずフィーフィーに置いてあるものは、テイストやジャンルは統一されてなく、いろんな趣味の服やアクセサリーたちがそれぞれ並んでいる。あと、値段のタグが付いてない。チープなものからハイプライスのものまでびっくりするくらいにさまざまだ。だから「あ、コレ可愛い」「素敵だな」「なんかいいな」って感覚だけでそこにあるモノたちにジャッジができる。それってつまり、自分の「好き」って思う感受性を研ぎ澄ます体験だったりする。

「そうなのレイちゃん! まさにフィーフィーが大事にしてほしいのはその感覚なの! ブランドネームとか値段とか、そういうバイアスがない状況でファッションをまず楽しんでもらいたくって」

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「もちろん気に入ったその後に値段を見てもらって、折り合いがついたらお家に持って帰ってもらえたらいいけれど、私たちのいちばんの目的は『買ってもらう』ところじゃなくて。
お客さまに自分の元々持ってるピュアな感受性を解放して『自分のセンスに従ってものを選ぶ』というそのアクションをしてほしいの。私ね、人はみんなすばらしい感受性を持っていると思う。ただそれは日々の忙しさとか、社会的立場とかがあるとついつい『感じる』より『考える』ことを優先してしまいがちで。そうすると感受性って次第に縮こまっちゃって。フィーフィーにいる時間ではそういうこと全部いったん置いといて、感受性だったりセンスを大解放して、本来の自分らしさを取り戻してほしいなって」

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フィーフィーにいる時の心地よさの理由ってそこだったんだな、と店員のゆうこちゃんと話してて気がつく。ここは「(社会的に)あるべき姿」のその奥にいるピュアな自分がのびのび背伸びができる場所。

「自分の感受性に従うってことは、言い換えると『他者基軸』じゃなくて、『自分基軸』で選択すること。世間とか誰かの価値観ではなくて、自分の価値観で選ぶってことは、自己責任と隣り合わせよね。その責任を引き受けることが自分を成長させていくことに繋がって、その経験を通して自分自身の価値観の核となる部分、つまりセンスが作られていくんだと思うの」

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こと正解を選びたがる(誰だって失敗はしたくない)私たちは、正解にこだわりすぎて「好き」の気持ちに耳を傾けることを疎かにしがちだ。間違うリスクを避けるあまりにトレンドだったり、名前のあるブランドだったり、値段だったりという基軸を買う時の基準にしてしまいがち。

フィーフィーに行くと、気がつけば「自分基軸」に選択基軸がシフトしている自分がいる。自分の「好き」に従って、つまり自分のセンスに自信を持って服を選ぶということが自然にできるようになってしまっているのだ。

「自信を持つ」って、生きるにおいての必要絶対条件だと私は思う。フィーフィーはそういう意味で人生においてかけがえのない要素を与えてくれる場所だと思う。

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そして(本当にここがいちばん不思議なのだけど)フィーフィーでは初めて会ったお客さん同士でも気がつけば自然と話してて、気がつけば仲良くなってしまってる。
普段だと接点のない年代、職業、価値観の人たちと話をするのは自分の視野を意図せず広げてくれたりする。フィーフィーは、そこに行くことに価値があるお店。

ファッションを介して本来持ってる感受性を取り戻し、普段とは違う人たちと接することで新しい視点をもらう。この空間で得られる満足感は、服の所有欲を満足させる満足感とは、同じ‟満足”でもその種類を異にしている。ほかのセレクトショップとフィーフィーの違いはまさにここ。

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もうひとつ、私がフィーフィーの好きなところは「声を上げてる」こと。このお店にあるオリジナルのアイテム、アンチレイシズムリングはそれを代表するアイテム。

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「Black Lives Matterの運動で気がついた人も多いと思うけど、人種差別は世界中に存在してるよね。差別で生きづらさを感じてる人、憤りを感じている人は少なくない。私たちはそれに対してアクションを起こしていきたい。何も言わないのは人種差別を相対的に認めてることと変わりないから。このリング、よく見ると「anti racism」という文字がデザインされてるのね。お客様が『可愛いな、おもしろいな』って感覚でこのリングを手に取った時に、私たちはこのリングを作った意味を話したりすることもある(もちろんすべてがすべてってわけじゃないけど)。それがきっかけになって、人種差別の問題にみんなが関心・影響を持ってくれたらいいなって」

私自身もそうだけど、ほとんどの人は自分が興味があるものしか深掘りしない。SNSの発達したいま、さらにそれは加速してる。興味のあるものしか見ない風潮は、そうではないものに対しての無関心をさらに強める。「そうではないもの」の中には、私たち自身のアクションなしに解決しない問題もある。差別問題、環境問題、etc。

堅苦しいし、ちょっと怖い、第一よく知らないで首を突っ込むのも憚られるかな……と思えるそれらに興味をもってもらうための入り口としての、ファッション。感受性を解放させたピュアな心で聞く話と、そうでない状態で聞く話では、伝わる浸透率はきっと異なるだろう。

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社会問題でいえば、ファッション業界にも問題はある。わりと多々ある。

いまのファッションのシステムは、どこかで誰かが我慢した上で成り立っているシステムで回っている。トレンドの可愛い服をいますぐに安くてお得に買いたい私たちのために、供給側の企業の努力は俄然発動して、そのシワ寄せは服を作る人たちが担ってる。長時間労働、低賃金、納期という締め切りに追われながらのものづくり。

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「私たちは、職人さんに無理してほしくないから、納期に関しては任せているの。そりゃ冬に届くコートが夏に届いたらその時は売れないけど、でもそれって次の冬に店頭に出せばいいだけだからね。納期を優先させたものづくりをすると、作る人に我慢のシワ寄せがでちゃうから。作る人、着る人、そして売る人すべてが幸せで気持ちよい形でお付き合いする方が本質的でしょう?」

この考え方! コロナの自粛の期間中に私が考えていたことと見事にピッタリ結びついていて。

「幸せってひとりで成り立つものじゃない。」これが私がコロナで得た知見のひとつ。たとえばソーシャルディスタンスをとることや、外に出るときのマスクを着ける意味。それってコロナにうつらないためっていうよりも、(仮に自分が罹患してた場合に)まわりの人たちにうつさないためっていう配慮。その意識が、結果自分も守ることになる。自分の幸せを担保するには、関わる人たちの幸せが前提条件にあるという気づき。利己的な利他主義ともいえるかもだけれど、これからの幸せのスタンダードはここにあると思う。

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「職人さんに無理させないっていう理由から、フィーフィーはセールはしないの。ここにある洋服もアクセサリーも、このシーズンだけで売らなくちゃいけないものではないから。仮にこのシーズンにタンクトップが売れなかったとしても、来年の夏にも需要はあるからそこで買ってもらえればいいわけじゃない?第一ファッションは生鮮食品じゃないんだもの。腐らないしね」

至極まっとうだ。逆にいうとセールをしてる理由って何だろう。服に(本来ありもしない)賞味期限という価値観を、無理矢理押しつけ見切り品扱いすることは、そもそも価値観としてまっとうなんだろうか。サステイナブルの本質は、作ったそのモノに責任を持って大事にすることだと思うのだけれど。

フィーフィーのお客様は高くても買う。それを買うことで、自信につながることをしっているから。買うことが自分を成長させてくれるアイテムだから。買うことが、それを作り届けるために関わった人たちへの応援になることが腹落ちしてるから。

お店というのは単純に服を買う場所ではなくて、服を通して文化を知る、人と出会う、異なる価値を知る、結果自分を高め成長する機会を与えてくれる場所。オンラインじゃなくてお店で買う意味ってこういうことだと思う。

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自分を高めてくれるものには投資するいま。
そして自分とまわりの幸せが大事ってこの風潮。
いまと、これからの時代の気分を孕んだ、お店だと思う。

そう伝えると、「2003年からずーっと同じスタンスなんだけどね。」って、こそばゆそうにゆうこちゃんは笑う。

お店をおいとまする時間。ドアを開けて外に出て。ゆうこちゃんは角を曲がるまでずーっと手を振って見送ってくれる。大きく手を振り「気をつけてね、またね」って。フィーフィーの好きなところはたくさんあるけど、こういうところもそのひとつ。

ル シャルム ドゥ フィーフィー エ ファーファーの5つのマニフェスト。
① セールをしない
② 職人を守る
③ 在庫消化率99% ゴミを増やさない
④ 美を育む
⑤ 知的交流の場を作る

 

ル シャルム ドゥ フィーフィー エ ファーファー
東京都港区南青山5-4-3 南青山泉ビル1F
営)12時~20時
休)水
tel:03-5774-0853
www.lecharmedefifietfafa.com

シトウレイ

日本を代表するストリートスタイルフォトグラファー/ジャーナリスト。
石川県出身。早稲田大学卒業。
被写体の魅力を写真と言葉で紡ぐスタイルのファンは国内外に多数。

毎シーズン、世界各国のコレクション取材を行い、類い稀なセンスで見極められた写真とコメントを発信中。ストリートスタイルの随一の目利きであり、「東京スタイル」の案内人。

ストリートスタイルフォトグラファーとしての経験を元に TVやラジオ、ファッションセミナー、執筆、講演等、活動は多岐にわたる。

IG : @reishito
TWI : @stylefromtokyo
FB : https://bit.ly/2NJF53r
YouTube : https://bit.ly/3ePodV8

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