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IWA 5

複雑さと軽やかさの繊細な均衡。「IWA 5 アッサンブラージュ7」の味わいを生む、配合と熟成。

Lifestyle

多様な原酒を組み合わせ、瓶の中で時間をかけて育てる日本酒、IWA(イワ) 5。7作目となるアッサンブラージュ7で醸造家リシャール・ジョフロワが追求したのは、豊かさを保ちながら余分な厚みを削ぎ落とすことだった。新作の味わいから、毎年変わるアッサンブラージュの意味、そして次なる挑戦を聞いた。

変わらない3つの米、変わり続ける原酒。

Richard Geoffroy/フランス・シャンパーニュ地方出身。ドン ペリニヨンの醸造最高責任者を28年間務め、2020年に初めての日本酒「IWA 5」を発売。富山県立山町白岩に構える酒蔵は、親交のある建築家、隈研吾が設計した。

同じ銘柄の酒なら、いつ飲んでも変わらない味を期待するかもしれない。しかし、IWA 5では、新しいリリースを迎えるたび、造り手の試みも味わいも変わっていく。富山県立山町白岩に蔵を構え、異なる個性の原酒を組み合わせるアッサンブラージュと瓶内熟成によって、複雑さとなめらかな飲み心地を追求する。2026年10月1日に発売されたアッサンブラージュ7は、その最新作だ。

創立者で醸造家のリシャール・ジョフロワは、ドン ペリニヨンの醸造最高責任者を28年間務めた人物。しかし、今回のインタビューで彼が熱心に語ったのは、IWAで何を変え、次に何を試すかということだった。「アッサンブラージュ1と7の構成を比べたら、共通する要素の少なさに驚くだろう」。変えないと決めているのは、山田錦、雄町、五百万石という3種類の酒米。8品種を試して選んだこの3つを「IWAのDNA」と称した。

それ以外の要素は、毎年試験と見直しを続けている。アッサンブラージュ7では日本酒の7号酵母と白麹(※)を試したことが、重要な取り組みのひとつだという。原酒を組み合わせるおもしろさは、配合を変えるだけにとどまらない。その材料となる酒そのものにも新たな可能性を探し、目指す味わいに合わせて造り方を考える。IWAの変化は、ブレンドの前から始まっている。

※主に焼酎で使われてきた、多量のクエン酸を分泌しながら育つ白褐色の麹。近年では清酒にも用いられ、日本酒に爽やかな酸味を与えることも注目される。

豊かさを保ちつつ、余分な厚みを削ぐ。

アッサンブラージュのための原酒。異なる個性を組み合わせ、目指す味わいをつくる。

ジョフロワが初期のIWAで求めたのは、肉付きのよい、量感のある表現だった。前作のアッサンブラージュ6からは、余分なものを削ぎ落とす「エピュール」に取り組み、7ではボディをわずかに軽く、より緊密でコンパクトに仕上げた。香りを保ちながら取り除いたのは、口中で感じる余分な厚み。ジョフロワはそれを「ベビーファット」と呼び、赤ちゃんが成長とともにふっくらした脂肪を失う様子にたとえた。

酒質をスリムにしながらも、なめらかな口当たりと複雑さ、香味が途切れずに続く長い余韻は保つ。そんなジョフロワの言葉から、華奢な骨格にシームレスな味わいを備えた酒を思い描いた。実際に試飲したアッサンブラージュ7は、まさにそのイメージどおり。余分な厚みのない細身の骨格に洗練された香味があり、口中から長い余韻まで継ぎ目なく続いていた。

造り手の言葉に耳を傾け、その試みを知ることで、まだ飲んでいない酒の味わいを想像する。IWAには、口にして得られる喜びに加え、こうして理解を深めながら味わう楽しみもある。ジョフロワも、飲む前に想像することは楽しみの一部であり、そうした体験を届けることも自身の意図だと話した。

わずかな配合の違いが、均衡を左右する

試飲を繰り返し、香りや味わい、口当たりを確かめながら、配合を検討していく。

多様な原酒によって複雑さを生みながら、余分な厚みは取り除く。その両立を可能にする配合は、ごくわずかな違いで均衡を失うほど繊細だ。ある原酒を0.5%加えただけで、バランスが崩れることもあるという。足せば豊かになるとは限らず、引けば軽やかになるとも限らない。複雑さを保ち、厚みを削る。その均衡を探る作業を、ジョフロワは綱渡りにたとえ、恐怖さえ感じると話した。さらに、ブレンドの時点で良いと感じた配合が、瓶内熟成を経てどう変わるかまで見極める必要がある。

「私はリスクを取ることを恐れない。むしろ好んでそれをやる」。過去の作品を観察してきた経験によって、熟成後の姿を予測する精度は高まっているという。

彼にとって、アッサンブラージュと瓶内熟成は一体だ。組み合わせによって得たバランスと複雑さを十分に表現するには時間が必要だが、熟成すればすべてがよくなるわけではない。初めから均衡を欠いたブレンドは、時間を経ることでむしろ悪くなる場合もある。ブレンドを試し、その結果を味わい、次の判断に生かす。その繰り返しが、IWAのブレンドを支えている。

アッサンブラージュ7は2025年6月に瓶詰めされ、日本での発売まで約16カ月の瓶内熟成を経た。ただし、発売した瞬間だけを完成形と考えているわけでもない。ジョフロワは「変化を受け入れるなら」と前置きしたうえで、日本酒にも熟成の可能性があると話す。その変化は一直線ではなく、これまでの作品でも4年経過した時点で一時的に下降する時期があり、その後、再び上向いたことがあった。こうした観察も次の酒造りの判断材料になっている。

異なるアッサンブラージュを並べて飲めば、配合の違いと、経た時間の違いを同時に味わえる。ジョフロワは2027年、過去作を購入できる仕組みを整える計画も明かした。新作を待つだけでなく、以前飲んだ一本がどう変化したかを確かめる楽しみも広がりそうだ。

富山で造り、日本と世界の食卓へ。

2025年6月の瓶詰めから約16カ月の瓶内熟成を経て発売された、アッサンブラージュ7。photography: WAKO

富山という土地は、IWAの味にどう表れるのか。ワインの仕事を長く続けてきたジョフロワだが、日本酒のテロワールを同じ言葉で説明することには慎重だった。

「日本酒は原料の由来よりも、造る工程の影響が大きいのです」

それでも、地域の個性を感じるものとして挙げたのが水。IWAの味わいにあるまろやかさを、水がもたらす特徴と捉えている。土地の風景をそのまま香味に結びつけるのではなく、何が酒に影響するのかを見極めようとする姿勢が、ここにもあった。

ジョフロワは、日本酒造りの創造的な自由に触れながら「伝統を尊重することと保守的であることは違う」と語った。IWAも日本酒の基本を理解したうえで、自分なりの解釈を加え、表現を広げていく。日本での食事にも、日本以外の食事にも応えるために、日本酒ならではの流れるような飲み心地と、世界の食卓で求められる豊かさを実現したいという。

豊かでありながら、重さを感じさせない。その均衡を、アッサンブラージュによって探しているともいえる。毎年変えるのは、飲み手にも期待し、発見し、比較する楽しみを届けたいから。「同じ表現を継続することは目指していない」と彼は話す。前年との違いを味わい、自分の好みを見つけ、次はどんな酒になるのかを想像する。毎年のリリースを、そうした楽しみを分かち合う機会にしたいと考えている。

日本で得た自由と、次なるIWA。

「IWA 5 アッサンブラージュ7」720ml(ギフトボックス入り) ¥16,500 https://iwa-sake.shop

「日本が、私を自由にしてくれた」。インタビューの冒頭で、ジョフロワはそう語った。フランスでの過去を否定する意味ではなく、日本で始めた新しい人生の章によって、より自分自身でいられるようになったということだろう。かつて日本を訪れていた時の自分は、訪問者であり、観客であった。いまは、この地でものを造り、行動する当事者になった。その違いが、本当の日本に触れる機会を与えてくれたと話す。

次回リリースのアッサンブラージュ8となる酒は2026年6月に瓶詰めされ、いまは瓶内熟成の途中。アッサンブラージュ6と7の進化から、さらに余韻の表現を追求しているという。また、既存のIWA 5やリザーブとは別に、ふたつの新しいIWAも開発中だ。2年以内の発売を目指すが、内容はまだ明かさない。将来的にもむやみに種類を増やさず、最大5種類ほどのポートフォリオを理想としている。

「私の夢は、日本をあっと言わせること」

新しい酒も、実験と試行錯誤から生まれる。模倣は決してしないと話す彼は、日本酒の基本を尊重しながら、まだ味わったことのない表現を探し続けている。アッサンブラージュ7を味わうと、いま瓶の中で育つ次作や、まだ名前のない新作への期待も膨らむ。日本を驚かせたいというジョフロワが、次にどんな味わいを生み出すのか。アッサンブラージュ7の長い余韻を楽しみながら、その続きを待ちたい。


富山の酒と工芸を、五感で楽しむ。

photography: WAKO

銀座・和光の本店地階 アーツアンドカルチャーでは、IWAと富山の工芸を楽しめるポップアップを10月21日まで開催中。IWAと同じ富山を拠点に活動する釋永由紀夫、釋永 岳、釋永 陽、小路口力恵、川原隆邦の作品を紹介する。陶芸、ガラス、和紙という異なる素材を通して、それぞれが土地に育まれた美意識を表現。4人の作品を展示販売するほか、川原による和紙のインスタレーションも披露されている。白岩から提供された酒米の稲穂を使った和紙が空中に浮かぶ作品は、作り手同士のつながりを表したもの。会場では、新作のアッサンブラージュ7をはじめ、IWA 5を販売している。

五感で味わう芸術―IWA 5と富山の5人の作家―
会期:開催中〜10月21日(水)
会場:和光 本店地階 アーツアンドカルチャー
東京都中央区銀座4-5-11

問い合わせ先

IWA 5

076-405-9185
[email protected]

  • interview & text: Hiromi Tani