スター・ウォーズの生みの親が設立した新感覚の美術館「ルーカス・ミュージアム」へようこそ。

Lifestyle

映画監督ジョージ・ルーカスと実業家メロディ・ホブソン夫妻が長年の構想と何度かの座礁の末、10億ドルを投じていよいよ開館を迎えたルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブアート(Lucas Museum of Narrative Art)。ロサンゼルスの都市公園に舞い降りた流線型の宇宙船、もしくはむっくりと盛り上がった緑の丘陵に出現した未来基地にも見えるロサンゼルスの新名所だ。

世界中のルーカスファンが待ち焦がれたミュージアムの見どころのうち、建築と庭園を前編で、コレクションを後編で紹介する。

山並みを背景に、ヤシの木々の上へ張り出すルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティブアートの流線型の外観
photography: Hufton+Crow Courtesy Lucas Museum of Narrative Art.

ルーカス監督が目指すのは漫画や広告、イラストなど人々になじみある表現をアートとして美術館所蔵級の芸術作品と同列に理解し、認知を広めること。「庶民のアートを芸術として昇格させたい」という信念のもと、ナラティブアートというビジュアルでの物語表現を新たな視点で体験する場所が誕生した。

並んで立つ映画監督ジョージ・ルーカスと実業家メロディ・ホブソン
photography: Hufton+Crow Courtesy Lucas Museum of Narrative Art.

オープニングを前に予告なしにルーカス夫妻が姿を見せた。サカイやトム ブラウンなどを個性的に着こなすおしゃれなホブソンが「ジョージによればここは『万人のためのミュージアム』」だと紹介し、ルーカスは「これまで数々の突飛なアイデアに挑戦してきたが、今回こそ挫折しそうになった」と開館までの苦労も示唆しつつ、人を巻き込み、人をつなぐ物語芸術とそのミュージアムの意義を熱く語った。

MADアーキテクツが描いた、宇宙基地のような建築。

ロサンゼルスのダウンタウンを望むエキスポパークに建つ、屋上が緑化されたミュージアムの全景
photography: Hufton+Crow Courtesy Lucas Museum of Narrative Art.

ダウンタウンの南にあるエキスポパークの広大な一角を占領するミュージアムは、空からも、高速道路からも目をひく一際ユニークな存在感だ。地下の駐車場の屋根に当たる部分を緑化したガーデンからふわっと浮き上がるような白いカーブが巨大な宇宙基地を思わせる。建築設計を手掛けたのは、北京を拠点とするMADアーキテクツ代表のマ・ヤンソン。「自分がさっと描いたスケッチがこんなに大きくなるとは」と笑う彼の設計は、スター・ウォーズに重なる未来感や宇宙っぽさが印象深い。

Getty Images for Lucas Museum of Narrative Art

建物の地上階、中央のエントランス広場では、ボランティアスタッフが地面に仰向けになり腹筋を使いながら来館者の写真を撮影していた。頭上に見えるおたまじゃくしのような形状の建物のくびれ部分に開いた巨大な「眼」を入れ込んだ写真を撮るためという。

エントランス広場の頭上に大きく開いた、眼のような円形の吹き抜け
photography: Hufton+Crow Courtesy Lucas Museum of Narrative Art.

南カリフォルニアの自然を取り入れて。

展望スペースの楕円形の窓越しに見下ろす、芝生の丘が広がる彫刻庭園
展望スペースから望む芝生の丘彫刻庭園。 photography: Chinami Inaishi

建物を囲む緑のスペースを担当したのはミア・レーラー率いるスタジオ・エムエルエー(Studio-MLA)だ。南カリフォルニアの多様な自然環境にインスピレーションを得た。ゆるやかな芝生の丘に広がる彫刻庭園には、レイア姫がジャバ・ザ・ハットを踏みつけながら鎖で捕らえている彫刻があり、その近くにはフェルナンド・ボテロ『母性』の展示も。野外劇場やピクニックエリアをつなぐ小径やトンネルを進んでいくと、ヨーダとグローグーの噴水が見つかる。ここにいるだけで物語に思いを馳せたり、想像力が膨らみそうで、時間を気にせずに戻ってきたい場所だ。

庭園にある、白い台座の上に立つヨーダのブロンズ像の噴水
photography: Chinami Inaishi

白い迷宮のようなギャラリーとライブラリー。

1階にはショップ、スター・ウォーズやドキュメンタリーなど常時ナラティブアートの映像を上映しているシアター、カフェテリアに加え、歴史的な展示ギャラリーがある。

まずはガラスのエレベーターで4階のギャラリーへ向かうのがおすすめ。外観の大胆なデザインとは対照的に、館内は白い壁が延々と続き、大理石や木材も混在する。そのディテールはまるで建築版多重人格のようで戸惑いを感じるほど。これは時代を超えて多様にアウトプットされてきた物語芸術へのオマージュなのか。ギャラリーの奥にはロサンゼルスの街を見晴らす展望ロビーが数カ所あり、休憩スポットとして活用できる。

白いアーチ状のホール中央に設けられた、円筒形のガラスのエレベーター
photography: Hufton+Crow Courtesy Lucas Museum of Narrative Art.

5階へ上がると壁画をテーマにしたギャラリーが現れる。本来は現場で制作される壁画アートゆえに、ミュージアムでどう見せるか工夫が凝らされた展示となっており、バンクシー本人がインスタレーションのために会場入りした作品もある。(ヒント:汚れている壁を探して。)物語アート関連の書籍が揃うライブラリーは広場の反対側の入り口から螺旋階段を上がる。持ち出しはできないが、彫刻庭園を眺めながら貴重な書籍をゆっくり閲覧するのもいい。

曲線を描く木製の書架が吹き抜けを囲み、来館者が本を閲覧するライブラリー
photography: Chinami Inaishi

街を一望するレストラン「スカイウォーカーグリル」。

同じく5階にあるのがレストランの「スカイウォーカーグリル」。こちらも街が一望できるスポットで、オリジナルカクテルやアメリカン料理が楽しめる。早めの予約がマストだが、ミュージアム閲覧なしでも利用できるのがうれしい。

「万人のための」ミュージアムは、同じ郵便番号をもつ近隣の住人には無料アクセスを提供するプログラムもあり、地元に根づいたコミュニティ施設としても機能していくことが期待されている。

後編へと続く>>>

Lucas Museum of Narrative Art
ルーカス・ミュージアム・オブ・ナラティヴ・アート

One Lucas Plaza, 3800 S Vermont Ave., Los Angeles, CA 90037 USA
開)10:00〜17:00(月、水、木)、10:00〜21:00(金)、9:00〜21:00(土)、9:00〜17:00(日)
休)火
https://lucasmuseum.org/
@lucasmuseum
★Google Map

稲石 千奈美

コレスポンデント

在LAカルチャーコレスポンデント。多様性みなぎる都会とゆるりとした自然が当然のように日常で交差するシティ・オブ・エンジェルスがたまらなく好き。アーティストのアトリエからNASA研究室まで、ジャーナリストの特権ありきで見聞するストーリーをエディトリアルやドキュメンタリーで共有できることを幸せと思い続けている。