ありがとう、レディ クリスタル! 36年間東京湾を航った名船の、最後の秋のクルーズへ。

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天王洲アイルの運河沿いに静かに停泊する白い船体。1990年の就航以来、東京湾のレストランシップとして多くの人の思い出に寄り添ってきた「LADY CRYSTAL(レディ クリスタル)」が、2026年11月8日(日)に最後の航海を迎える。36年の歴史を締めくくるこの秋、東京湾の景色とフレンチのコースを楽しんできた。

長く愛されてきた、クラシカルな船内。

船鐘や舷窓がしつらえられた、ザ・クルーズクラブ東京のエントランス。
船鐘や舷窓がしつらえられた、ザ・クルーズクラブ東京のエントランス。

クルーズの出発点は、天王洲アイル・シーフォートスクエア1階の「ザ・クルーズクラブ東京」。乗船前の時間を過ごす待合スペースがまた素敵で、要所要所に船内を思わせるデザインがちりばめられ、船に乗る前から気分が高まる。

夕暮れの桟橋で出航を待つレディ クリスタル。
夕暮れの桟橋で出航を待つレディ クリスタル。

そして出航の時間になったら、クラブハウス前の桟橋から船へ。乗り込むと、多くのゲストを迎えてきた船ならではの、落ち着いたクラシカルな空間が広がる。イタリア人デザイナーのGarroni氏が手がけたレディ クリスタルは、全長46.5m、総トン数346トンと、大型客船に比べれば小ぶりな船体。大切に手入れされながら東京湾を航ってきた船内には、どこかほっとするような温もりがある。

窓際にテーブルが並ぶ船内のダイニング。
窓際にテーブルが並ぶ船内のダイニング。
船内を貫く螺旋階段。灯りに縁取られた曲線が美しい。
船内を貫く螺旋階段。灯りに縁取られた曲線が美しい。

レインボーブリッジをくぐり、東京の名所を海から眺める。

天王洲アイルを出航すると、船はゆっくりと東京湾へ。いちばんの見どころは、なんといってもレインボーブリッジ。夜、その真下をくぐる瞬間は心が躍る。

レインボーブリッジの真下から見上げる夜景は、船上ならではの迫力。
レインボーブリッジの真下から見上げる夜景は、船上ならではの迫力。

左右に広がる景色も見逃せない。東京タワーとレインボーブリッジが1枚に収まるのはクルーズならではの構図。さらに、向かい合う恐竜のように見えることから「恐竜橋」の愛称を持つ東京ゲートブリッジや、羽田空港を離着陸する飛行機まで、見慣れたはずの東京がまるで違う表情に見えてくる。

デッキに出ると、心地よい潮風とともに、船体に寄せては返す波の音が耳に届く。そのやさしいリズムに身を委ねているうちに、日々の忙しさで張りつめていた気持ちがふっとほどけ、気づけば疲れもすっかり吹き飛ぶようなひとときとなった。

日本各地の恵みを、東京湾の上でフレンチに。

船上で味わうのは、総料理長・羽山賢二氏が手がけるフレンチのコース。ザ・クルーズクラブ東京では、できるだけ国産の食材を使うことを大切にしているそうだ。

乗船した日のディナーコースのメニュー。テーブルには秋田犬の缶バッジが添えられていて、粋なサービスにほっこり。
乗船した日のディナーコースのメニュー。テーブルには秋田犬の缶バッジが添えられていて、粋なサービスにほっこり。※現在、秋田犬の缶バッジの提供は終了しています。

この日は、日本郵船と包括連携協定を結ぶ秋田県の食材を使ったコースを堪能。比内地鶏や秋田由利牛など、土地の名前を聞くだけで旅気分が高まる食材が、繊細なフレンチの一皿に姿を変えて次々と運ばれてくる。

メインの秋田由利牛リブロースのグリルと、ラズベリーのムースのデザート。小菓子には秋田犬をかたどったサブレも。
メインの秋田由利牛リブロースのグリルと、ラズベリーのムースのデザート。小菓子には秋田犬をかたどったサブレも。

なかでも魅了されたのが、ナイフがすっと入り、口の中でとろけるようにやわらかな秋田由利牛リブロースのグリル。そして、小さな花々をあしらった華やかな見た目に心ときめいたデザート。窓の外を流れる東京湾の景色を眺めながら、遠く離れた土地の恵みを味わう。東京にいながら、ふたつの場所を一度に旅しているような、贅沢な時間だった。

なお、この日いただいたコースの提供は終了しているが、秋田県の食材を使った料理は、現在も別のプランで楽しめる。

36年分の思い出を乗せて、最後の秋へ。

レインボーブリッジの下を進むレディ クリスタル。
レインボーブリッジの下を進むレディ クリスタル。

就航からの36年間、数えきれないほどのプロポーズや記念日、家族の集まりの思い出が刻まれてきたであろう、レディ クリスタル。波の音に耳を傾けながら過ごしたこの日のひとときは、私にとっても心に残る特別な時間になった。

運航は11月8日(日)まで。ランチ、ディナー、ナイトクルーズのほか、陸上ランチとセットのアフタヌーンクルーズまで、さまざまなプランが用意されている。そして乗れるのはこの秋が最後! 大切な人と一緒に、名船との最後のひとときを楽しんでみてはいかが?

バトンは2027年春就航の新船「AMANE」へ。

レディ クリスタルの後継船として、日本郵船は2027年春に新たなクルーズ船「AMANE」を就航。船名には、船と想いが「広くあまねく」人々に届くように、という願いが込められている。

船全体のデザインを手がけるのは、ワンダーウォール代表の片山正通氏。「庭園としての東京湾」をコンセプトに、東京湾を庭に見立て、その上に浮かぶ邸宅のような空間を描いている。プロジェクトコンサルティングはタイソンズアンドカンパニーの寺田心平氏、ロゴデザインは平林奈緒美氏が担当する。

上:船首に位置する個室からは東京湾の景色を一望できる。下:船内のバーラウンジ。

公開されたイメージビジュアルを見ると、船内はウッド調の、温かみのあるモダンな空間。3層構造のフロアには、メインダイニングやバーラウンジ、複数の個室が設けられ、なかでも目を引くのが船首に位置する個室だ。弧を描くように広がるガラス窓の向こうに、東京湾の景色を船の先端から一望できる、なんとも贅沢な一室になりそうだ。

料理は、かつて日本郵船の客船で提供されていたフランス料理の伝統を受け継ぐ、国産食材をふんだんに使用したフレンチコース。引き続き羽山シェフが、日本各地の旬の食材を使ったメニューを考案する予定だ。

レディ クリスタルが育んできた東京湾の船上文化が、AMANEへとどう受け継がれていくのか。来年の春が、いまから待ち遠しい!

ザ・クルーズクラブ東京「LADY CRYSTAL(レディ クリスタル)」
東京都品川区東品川2-3-16 シーフォートスクエア1階
運航最終日:2026年11月8日(日)
https://cctokyo.co.jp/

AMANE
2027年5月頃営業開始予定
https://amane.nyk.com/

ファッションとライフスタイルを担当するエディター。時間さえあれば海外を放浪していたが、子どもが生まれてからは次の旅を妄想する日々。ここ5年はゲーム実況と韓国アイドルに夢中。

  • photography: The Cruise Club Tokyo