転職と天職

モード業界が注目するフローリストへ、ルイの場合。

特集

自分に正直に、好きなことで新しい道を切り拓いて転職した人たちの物語。実行力あふれる彼らの話に耳を傾けてみよう。

アートディーラーからフローリストへ。
分野を超えても、培った審美眼を武器に。

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Louis - Géraud Castor
ルイ=ジェロー・カストール
@castorfleuriste
www.castor-fleuriste.com

1975 オーヴェルニュ地方のオーリアックに生まれる

1999 ソルボンヌ大学卒業。アート作品のブローカーとなる

2016 アートディーラー職を終える

2017 カストール・フルーリストをオープン

画廊でのヴァージル・アブローのオブジェ展、キム・ジョーンズによるフェンディ初のオートクチュールなど、モード界注目のイベントでフラワーデ コレーションを任されるのは、マレ地区で花屋を営むルイ=ジェロー・カストールだ。2017年の開店以前、彼はアートディーラーだった。まったくの異業種からの転身は意外に思えるが、彼はこう語る。

「いま花の世界で成功しているのは、 別の分野からの転職者たち。各人の背景を強みにした仕事をしています」

モード関係者が待ち望んでいたフローリストが、彼だったのだろう。

父親が動産公売官だったので、彼は幼少の頃からドゥルオー競売場に出入りしていた。大学で美術史と考古学を学んだ後、アートブローカーとしてキャリアをスタートし、鑑定家の資格も取得。専門としていたのは 世紀の装飾芸術で、主にオブジェだ。

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左:彼が多くの時間を過ごしたパリ9区のドゥルオー競売場は、幼い頃からなじみの場所。右:同競売場で ディーラー活動初期に競り落とした1920年代の絵画は、彼にとって大切な思い出。いまも自宅の壁を飾る。

「インターネット到来以前、競売場では驚くほど素晴らしい品々が見つかったものです。会場の奥に座って目をつけたものが競りにかかるのを胸を高鳴 らせて待つのは実に強烈な時間でした」

コレクターのためにオブジェを競り、あるいは売却して。こうして彼らとの間に築かれる人間関係、修復のための職人たちとの出会いもあり、仕事に大きな喜びを感じていたが……。

「徐々に業界が非人間的になってコレ クターとの関係にも変化が生じ、また15年近く働いて一周した感があって新たに発見するものもない、と。職業を変えたいと思うようになっていたところに、ブレグジット 。クライアントの多くは英国人だったので、僕の活動は急速に終了へと向かったんです」

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過去の仕事があっていまがある。

自分に向く職業は何だろう、と1年くらいかけて考えてみた。昔から花が好き。ブーケが好き。アート作品の見本市のスタンドの装飾も多く手がけ、ほかの人はしなかったが彼はそこに花を飾っていた。自宅用に欲しいだけの大量の花や珍しい植物を花屋で見つけられずにフラストレーションを感じることもあった。職業柄、デザイナー家具を配した知的な内装なのに花はトラディショナルなブーケ、といったケースを数知れず目にしていた。ここには自分に提案できることがある!

最低限の技術と花の知識を学ぶためにフローリスト養成学校に通い、マレ地区にこだわって店探しを始めた。見つかったのはアートギャラリー風とはいえ、表通りに面していない店。ショーウィンドウ代わりに、インスタグラムを始めた。まったくの別世界への転身ではあるが、求められる勤勉な対応は前職同様だし、ランジスの市場で花を選ぶ時には、かつて美しい品々を掘り出してきた経験を応用する。店では花に合わせて販売するコンテンポラリーな陶器を介して、自分の趣向を提案……。子どもの頃、旅先で複数の美術館を巡るたびに、父親から「もし一点を残すとしたら、どの作品を選ぶか」という訓練を受けた彼。職種は異なっても、彼自身の審美眼が大きな鍵を握っていることに変わりはないようだ。

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デコラティブな花は好まないという彼のブーケには、独特の美しい佇まいがある。

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店内に並ぶ花は、週に3回ランジスの花市場に通って自分で選んでいる。
カストール・フルーリス ト 14, rue Debelleyme 75003  tel:01-40-56-34-68

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*「フィガロジャポン」2021年5月号より抜粋

photos : MOHAMED KHALIL, réalisation : MARIKO OMURA

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