マラガ2月のマルシェ 「南スペイン港町のうまいもん」
パリのマルシェとレシピ。
毎年春の訪れを知らせてくれる、パリでいちばん早く芽吹くと言われているシテ島先端のしだれ柳。このところの陽気のお陰で、蕾がひと月以上早く開きました。
暖かなパリから航路で南へ2時間半、スペインのMalagaマラガへ行ってきました。
すぐ下はアフリカ大陸、モロッコというだけあって南国の風情です。
街に着いた途端に漂ってきた甘い香りは、オレンジの花でした。
いたるところにオレンジがたわわに実った街路樹があるなんて素敵!
朝の始まりはマルシェで働く人達がひっきりなしに出入りする横丁のカフェで。搾りたてのオレンジジュースが本当に美味しい。
さて、朝食を済ませてから隣の屋根付きマルシェへ。
八百屋のイチゴはどこでも1キロ=1ユーロという驚きの安さ。カオスとなった中に南のフルーツがもりもり。これらを使った色とりどりのフレッシュジュースが人気です。
スペインに来たら、やっぱりイベリコ! おすすめを切って真空パックにしてもらいます。
これはイベリコのLomoロモ(肩ロース)やチョリソをラードで漬けたマラガの伝統保存食。
パリで”肉屋のオヤジはなぜかハゲで強気”という私の定説を見事に裏切ってくれたような感じの良さ。ここで沢山買って帰ったのは、あとは揚げるだけのミニコロッケ:イカ墨、タラ、タコにチョリソ……オリジナルな具材がどれもおいしかった。
これも南ならではの産物、オリーブやケッパーの実も試食しながら幾つかお土産に。
魚コーナーの凄さに、ハァ~とフゥ~の感嘆の繰り返し。同じヨーロッパでも、海流、プランクトンや水温によって獲れるものがこれほど違うのですね。天然の鯛や鰹も豊富。
これは大変な海老祭り! もう、うれしくて笑いが止まりません。出発の朝だというのに、珍しいシャコを大量に買いアパートで茹でてパリへ持ち帰りました……なんという執着、食い意地。
赤海老や手長海老が見事なこと!
生の甘海老は、ここでも高級品。
これも食用? 子どもの頃、水族館の土産物屋で買った南の島の貝殻セットさながらの貝専門店。珍味”亀の手”にも惹かれます。
高校の化学の先生にこんな風貌の人がいたような……?? 捌いているアンコウには肝がいっぱい詰まっています。
やっぱり春、どのスタンドも魚卵祭り!
手開きにしたイワシは大人気。
ひととおり買い物が済んだらマルシェの中にあるバールへ。材料をあれやこれやと指さして好きな様に料理してもらう。おいしいワインを飲みながら、もう昼からゴキゲン!
(左から)タコのサラダ、小魚のフリットにシシトウの素揚げ、生たらこのソテー。
今日はマラガの旅を思い出しながら、オレンジとイワシを使った前菜を作ってみました。
■『イワシ&香味野菜、オレンジのマリネ』
Mariné de sardines, légumes aromatiques et oranges
―材料 2人分
イワシ(小) 6匹
フェンネル(又はセロリ) 100g
タマネギ 1/2個
長ネギ 15cm
オレンジ(無農薬のもの) 1個
ベルガモット又はレモン(無農薬のもの)1/2個
パクチー 少々
粗挽き胡椒 少々
*マリネ液
オレンジ果汁 1/2個分
ベルガモット果汁(又はレモン)1/2個分
グレープシードオイル 大さじ2
ナンプラー 小さじ1
塩 少々
タバスコ(緑のものを好みで)少々
―作り方
1.イワシの準備/包丁で頭を落とし、腹に切り目を入れ内臓を出す。中骨の上下に包丁を入れて尾のところで、骨を切り除く。(もしくは手開き)流水で洗ったものをザルに並べて軽く塩(分量外)を振り冷蔵庫に15分くらい置く。余分な水分を出して身を〆てからキッチンペーパーで水気を取る。
2.フェンネル(又はセロリ)、タマネギを薄切り。長ネギは3等分して白髪ねぎに切り冷水に晒してから水切り。パクチーはみじん切り。ベルガモット(又はレモン)は、薄切りしてから8等分に。すべての材料をボウルに入れる。
3.マリネ液の材料を混ぜ合わせてから、食べる直前に②のボウルに入れてさっと和える。
4.イワシをテフロンフライパンで皮目から焼く。
5.半月に薄切りしておいたオレンジを皿に並べた上にイワシをのせて、③の野菜とパクチーをのせて胡椒を振る。
柑橘の酸味が爽やかでワインも進みます。このまま容器に入れてマリネすると翌日もおいしい。
マルシェで新鮮なイワシを見つけたら多めに買って、①のように準備したものを1枚ずつラップに包んでまとめて冷凍しています。身が薄くすぐに解凍できるのでアペロや夕飯作りに便利。
マラガの大聖堂はいつまでも余韻が残る素晴らしさ、夕焼けも見事。
おいしいものがあふれていて、海風がいい、寛げる雰囲気……また何度でも通いたい街が増えてしまいました。
■Mercado Central d’Atarazanas アタラサナス中央市場
住所)Calle Atarazanas 10, 29005 Malaga Spain
営)8~15時 日曜定休
料理クリエイター
長い間モードの仕事に携わった後、2003年に渡仏。料理学校でフランス料理のCAP(職業 適性国家資格)を取得。 パリで日本料理教室やデモンストレーション、東京でフランス料理 教室を開催。フランスの料理専門誌や料理本で、レシピ&スタイリングを担当。2016年春、ベジタリアン向けの料理本『LA CUISINE VEGETARIENNE』をフランス全土と海外県、ベルギー、スイス、イギリスなどのヨーロッパ各地で発売。この連載をまとめた『パリのマルシェを歩く』(CCCメディアハウス刊)が発売中。
Instagram : @haradasachiyo