UAMを知らずに語れない、フランスのモダン・デザイン。

PARIS DECO

Union des Artistes Modernes(現代芸術家協会)を略してUAM。ル・コルビュジエ、シャルロット・ペリアン、ジャン・プルーヴェなどの仕事に興味を持っている人は、このUAMという略号に何度か遭遇しているのではないだろうか。UAMとは何だったのか? パリのポンピドゥー・センターで8月27日まで開催されている『UAM : une aventure moderne』展では700点以上の作品を展示し、UAMが行ったモダニティの冒険へと来場者を誘っている。

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UAMのロゴとメンバー名。解散まで合計約170名がUAMに参加した。

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シャルロット・ペリアンやジャン・プルーヴェなどメンバーの椅子がパリを背景に並ぶ。

この協会が存在したのは1929年から1958年まで。メンバーは1920年頃から仕事上で協力し合っていた建築家、画家、彫刻家、家具デザイナー、写真家、テキスタイルデザイナー、装丁家、グラフィックデザイナー……。その時代の革新的なクリエイターたちが集まり、新しいライフスタイルを提案し、それを普及させることを目的に協会が設立されたのだ。

展覧会は10のテーマに分けられていて、最初の4つの部屋では設立以前の発端となる創造の世界の動きを紹介して、UAMの誕生へと導く。ロンドンのアーツ&クラフト運動やベルギーのアール・ヌーヴォーにより、人々の日常の暮らしが建築面、装飾面で実験的な表現をとれる場となってゆくというところから、展示はスタート。UAM設立の中心人物となるフランシス・ジュルダンにUAM組織の確信をさせることになった、ドイツの建築家・装飾家協会が1910年にフランスのサロンで行った展示についても触れている。

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芸術を室内装飾に。20世紀初頭の動きから展覧会はスタートする。

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家具デザイナーのジャック・エミール・リュールマンによる壁紙、クチュリエのポール・ポワレが率いていたアトリエ・マルティーヌによる壁紙なども展示。

映画ファンを喜ばせるのは、第四室の「夢のモダニティを現実の暮らしへ」だろう。1920年代、インテリアにモダンな要素を積極的に取り入れたのは映画界である。とりわけ活躍したのは建築家のロベール・マレ=スティーヴンス。彼が多数手がけた映画の中から、会場では1923年に製作されたマルセル・レルビエ監督の前衛映画『人でなしの女』で用いられた家具などを展示している。マレ=スティーヴンスは映画の仕事をするたびに、画家のフェルナン・レジェ、家具デザイナーのピエール・シャロー、タピスリー作家のジャン・リュルサといった友人たちに声をかけていて、この作品もそのひとつだ。彼とその仲間たちは全員が未来のUAMのメンバー。映画で果たしていたモダンの夢を、マレ=スティーヴンスと仲間たちは富豪メセナのドゥ・ノワイユ家が南仏に別荘を1925年に建築した際に実生活の中にクリエイトした。パリで現代産業装飾芸術国際博覧会が開催され、“アールデコ”という言葉が生まれたのが1925年だが、モダン・デザインを追求する彼らの仕事は装飾性はゼロで、無駄を削ぎ落としたものだった。

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マレ=スティーヴンスが建築した16区の家で撮影された映画『人でなしの女』。撮影に使用された家具を集めて展示している。

そして第5室から、UAMの歴史が始まる。1929年の創立には、ジャン・プルーヴェ、ル・コルビュジエ、ソニア・ドローネー、シャルロット・ペリアン、アイリーン・グレイといった著名クリエイターたちが、「過去を振り返ることなく、創造に専心しよう」という理想を掲げて参加。 ピエール・ルグランによってUAMの略字図案が生み出され、メンバーによる新しい素材や革新的な技術の追求があり……1930年から1933年まで、毎年サロンを開催していたそうだ。

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家具のみならず装丁、照明、ステンドグラス……幅広い分野においてモダン・デザインを追求したUAM。

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1937年にパリで開催された万博では、独自のパビリオンを持った。

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ピエール・シャローが1927年にマレ=スティーヴンスのためにデザインしたデスクとスツール。

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次の部屋では、UAMのメンバーが残したアイコン的モダン建築物を紹介。ル・コルビュジエのサヴォア邸、ピエール・シャローのガラスの家、アイリーン・グレイのE1027……。コンクリート、メタル、ガラスなど新しい素材のリサーチが必要とされるこうした建築物は、UAMの意欲を大いに表現できる場だったのだ。

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名建築の数々を写真と家具で展示。

テクノロジーの進化があり、工業化の試みもあり、1950年代になるとUAMの仕事に大きな進化が見られる。戦前は金銭に余裕のある家庭しか手に入れられなかったコンフォートに一般家庭もアクセスができるようになった時代である。1949年にUAMが開催した「実用的フォルム。今の時代のオブジェ」展は、フェルナン・レジェやソニア・ドローネーといった創立からのメンバーに加え、アレクサンダー・カルダーやジョアン・ミロのような新しい参加者も一緒になっての開催だった。それでプラスチック素材などのカラフルな電化製品や日用品が並んだ部屋が、今回の回顧展の締めとなっている。

第二次大戦を乗りこえて、モダン・デザインを追求したUAMは1958年に活動を停止。フランス人にもいささかミステリアスな存在だったUAMの功績を、時代を追ったこの回顧展で発見しよう。

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マルセイユのユニテ・ダビタシオンのために考えられたル・コルビュジエによるキッチン家具(1952年)。左手に食事スペースがあり、家具の中央に料理の出入り口が設けられている。

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成形合板を使用したジャン・プルーヴェの有名なスタンダードチェア。

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カラフルで新しい時代の到来を感じさせる第10室で回顧展は幕を閉じる。

『UAM : une aventure moderne』展
会期:開催中〜2018年8月27日
会場:Centre Pompidou
tel:01 44 78 12 33
開)11:00~21:00
休)火
料金:14ユーロ
www.centrepompidou.fr
大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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