白い壁があると、つい飾ってしまうプリュンヌのロフト。

PARIS DECO

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Prune Cirelli(プリュンヌ・シレリ)
イラストレーター

パリの中心部を走るモントルグイユ通り周辺。以前アパルトマンを紹介した界隈に住むデザイナーのヴァランティーヌ・ゴティエは、“観光地ではなくパリのオーセンティックな場所”と表現している。イラストレーターのプリュンヌ・シレリは生まれた時から高級住宅地の16区にずっと暮らしてきたが、2年前に小さな商店が軒を連ねる通りが走る、庶民的なこの界隈に越してきた。

「以前ドゥルオー競売所で絵画鑑定の仕事をしていた時代にランチをとったりショッピングしたりしていたので、モントルグイユ通りやこの辺りは私にはなじみのある場所だったのね。いま我が家があるのは商店街のど真ん中だけど、中庭の建物の最上階なので、騒音はゼロ。週末の雑踏など嘘のようにとっても静かなの。一歩外に出ると、活気にあふれていて……最高よ !」

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商店街のど真ん中にあるとは思えないロフト風のアパルトマン。読書家夫妻のリビングルーム。夫ローランが文章、彼女がイラストという共同作業による著作もある。以前のアパルトマンにあったカーキ色のソファは座り心地が悪かったので、引越しを機に暖色の快適なソファに買い換えた。

夫ローラン、15歳の長女マドレーヌ、12歳の長男イザック、そして愛犬のジャコブと彼女が暮らす最上階のアパルトマンは、メインフロアが118平米。その上に、子どもためのふたつの小さな屋根裏部屋がある。メインフロアはロフト風で天窓から差し込む光が美しい。壁をさまざまな額が飾っている。

「この家の中で私がいちばん好きなのは、ダイニング・キッチンのコーナー。私が引越し先を探した時、ひとつだけ条件があったのよ。それは、家族がいつも一緒にいられるように、オープンキッチンの家ということだった。私が料理をしている間、子どもたちはここで宿題をというように夢見たのだけど、一度もまだそういったことはないわ(笑)。 家のセンターがこの食卓であることが大切という考えは、私が育った環境のせいでしょうね。両親は大きなテーブルをキッチンに置いていて、そこにみんなで集まって、いつも一緒に時間を過ごしていたから」

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食卓。農家のような素朴な感じを求め、椅子ではなくベンチスタイル。クッションにはプリュンヌがマリーエレーヌ・ドゥ・タイヤックのためにデザインしたジュエリーモチーフのファブリック(Thevenon社製)を使用している。このスペースは窓と天窓からの光が美しく、ローランは仕事場スペースがあるにもかかわらず、キッチンのこのテーブルを使うそうだ。

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1年前にオープンしたアメリカン・パティスリーの店Stoney Clove Bakeryが自宅の近く。子どもたちのおやつにクッキーを。

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動物を描くことの多いプリュンヌ。さまざまな種類の犬を描いたGienの食器は彼女自身も愛用している。

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50年代スタイルが好きなプリュンヌが、南仏で見つけたヴァロリスのティーカップ。ひと目惚れして入手した。

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「ここに住むことになった時、何よりも望んだのは、物をあまり飾らない白い壁に囲まれて暮らす、ということだったの。以前住んでいた家は濃いブルーの壁だったし、夫ローランと初めて暮らしたアパルトマンは、当時まだ全然流行りではなかったことだけど、ファロー&ボールのペンキで部屋ごとに色を変えて壁を塗ってあって……。そんなわけで、新しく住むこの家は真っ白い壁を守り、以前は19世紀の絵画とかいろいろ飾っていたけれど、ここはあまり額なども飾らないようにしようって、ローランと話していたの。だけど、結局あれこれと壁に飾ることになってしまって。いったん始めると私の本来の好みが加速度つきで戻ってきて、また壁に額がいっぱい、という状況になってしまったのよ」

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アフリカの旅から持ち帰ったマスク、プリュンヌによる鳥のイラスト、知人が16世紀風に描いたローランの肖像画、インドの旅で見つけた古いインドの写真……。

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ダイニング・スペース。友人のブランドLa Causeuseにオーダーしたベンチが家庭的な雰囲気を作り上げている。壁の中央に祖母から譲られた女性の肖像画、右下にはボブ・ディランのレコードジャケット……このようにビジュアル的に気に入っているものを自由に飾っている。

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パンテール柄の椅子は以前のアパルトマンでも使用していたもの。

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現在のアパルトマンの中でキャビネ・ド・キュリオジテ風の玄関だけが、以前のアパルトマンのインテリアを彷彿させる場所だそうだ。祖母から譲り受けた鏡を中心に、ミラー・コレクションを。そしてナポリに行くたびに買う、陶の魚を飾って。

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暮らし始めて2年の間、家から念願の白い壁が減っていたのは額が埋めたことだけが理由ではない。プリュンヌはThevenonというインテリアファブリックのブランドのためのデッサンも手がけている。マリエレーヌ・ドゥ・タイヤックのジュエリーを描いた布は食堂のベンチのクッションに使われ、ジャポニズム・シリーズの中の竹のモチーフは夫妻の寝室のカーテンに、といった具合に自宅でも大活躍。

「インテリアのポイントは美しくあることが第一よ。それにファミリーの場であることね。だから私たちらしさが感じられるようにしたかったの。美しいというと、温かみに欠けて住み手の存在が感じられない場合が少なくないでしょ。ローランは家の中にモチーフがあるのを好まないので最初は心配したのだけど、プリントのファブリックによって、生き生きとした空間が作れたと思ってるわ」

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子どもたちの屋根裏部屋へと続く階段。

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リビングルームから見ると、とてもグラフィックな階段で、ポスターとパンテール柄の組み合わせが効いている。

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彼女が描いた竹のモチーフのカーテン。

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夫妻はベッドの眠る側にそれぞれ各自の棚を持ち、本も飾る品もここでは共有しない掟なのだとか。こちらはプリュンヌの棚。

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寝室。古い家具は祖母が使っていた品だ。

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プルーストの肖像が家のあちこちで見られるのは、ローランがこの作家の大ファンだから。手前の木箱はプリュンヌのコレクション。スイスでは切手箱と呼んでいるもので、Geneveと刻まれている。プリュンヌの祖母のひとりは、ブロンズの詩人と形容されていたリン・ヴォトランのために自宅作業をしていた。ランプの脚は、その祖母が作ったものではないか、とプリュンヌは想像している。

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「この界隈以上にこれぞパリ!という場所って、ないと思うの。パリの中心部だからどこへでも徒歩で行ける。オペラ座もサンジェルマンも……この間は14区のジャコメッティ・インスティチュートからも、歩いて帰ってきたのよ。本物のパリをこの2年間で満喫したと感じているわ。そのせいか、田舎に家を持ってパリと半々の暮らしというのに心惹かれているの。パリ生まれの母はパリ以外には住めない!と言うけれど、年齢のせいか私は自然の近くで暮らしたいと思う気持ちが強くなってきていて……。この頃、花のデッサンを多く手がけるようになった影響かもしれないわね。長女マドレーヌは15歳、長男イザックは12歳。彼らはほとんどの時間を自室で過ごすようになっていて、もう大きいわ。2年後くらいにこの考えを実現したいと思ってるの。パリのアパルトマンは小規模にして、パリから北へ1時間くらいの場所に田舎の家を持って、週末はそちらで過ごす。子どもたちは来られるときに来ればいいし、友達も連れて来たければ一緒に来ればいいのだし……」

スキャナーと絵の具のセットがあれば、田舎でもどこでも彼女は仕事ができる。いまのところは自宅内、窓に面して構えた仕事場で作業。そことキッチンを往復して過ごす日々だという。彼女が室内を移動するたびに爪音を響かせて後をついて回るのは、4歳の愛犬ジャコブ。ペットの肖像画をオーダーで受け付けている彼女、もちろんいちばん初めに描いたのはジャコブである!

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仕事中のプリュンヌの膝に乗って甘えるジャコブ。パリジェンヌが愛用するカシミアブランドBompardは、今冬、プリュンヌのツバメのイラストを織り込んだセーターを発表した。

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ジャコブのポートレート。

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最近、ポートレートの仕事に興味をもって取り組んでいるプリュンヌ。左の花のイラストは、アメリカの高級ブティックCapitolのためのものだ。

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ロイヤル通りの花屋Lachaumeのパフュームキャンドルのパッケージングも彼女の筆による。

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レンヌ市の香水のブティックMaison Orsoでも定期的に仕事をしている。自作に囲まれたアール・ド・ヴィーヴルが実践できるのは、イラストレーターならではの特権だろう。

大村真理子 Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティングエディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は「とっておきパリ左岸ガイド」(玉村豊男氏と共著/中央公論社)、「パリ・オペラ座バレエ物語」(CCCメディアハウス)。

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