不思議で奇妙な、シャルロット シェネ初のブティック。
PARIS DECO
フランスにおける第2回目の外出禁止措置が緩和された11月28日、シャルロット シェネのブティックがオープンした。場所はAmi(プレタ)、Molli(ニット)、Perrin(バッグ)、JEM(エシカルジュエリー)、Francis Kurkdjian(香水)など、フランスの現代のラグジュアリーブランドが軒を連ねるアルジェ通りの10番地だ。
老舗の宝石商がぐるりと囲むヴァンドーム広場に近い場所にオープンした、シャルロット シェネのブティック第1号店。店内、アクリルの塊と外光の戯れも興味深い。photo Mariko Omura
モダン嗜好のパリジェンヌたちが愛してやまないシャルロット・シェネのジュエリー。2015年のブランド発足以降、彼女はシンプルな個性的で美しいクリエイションを続けている。ジュエリー界に新しいカテゴリーを生んだ彼女のデザインは、後進のジュエラーたちをインスパイアし、また“シャルロット シェネ風”のコピーも後を絶たない。
ブランド誕生5周年を祝ったこの若き革新的ジュエラーが初のブティックの内装を依頼したのは、オランダ人建築家アンネ・ホルトロップである。Trail House、Fort Vechten Museumの仕事で知られ、またメゾン マルジェラがショーのセットでコラボレーションをし、旗艦店の内装を任せた建築家なので、彼の名前にピンと反応してしまう人もいることだろう。シャルロットが彼に伝えた希望は、“体験、美しいというより、ナチュラルだけど奇妙な何か”。 その答えをブティックに見にいってみよう。
建築家アンネ・ホルトロップ(左)とシャルロット・シェネ。photo:Courtesy of Charlotte Chesnais
天井に浮かぶのは、分厚い透明なアクリルの塊。まるで氷河か雲かといった様相だ。その下で、これまた分厚いアクリル板の上の透明なケースに並ぶジュエリーは照明やアクリル板の凹凸レリーフが生み出す効果で空中浮遊しているような印象を与える。異次元の世界に迷い込んだ気分がし、不思議な感覚に包まれるブティックだ。素材との関係にフォーカスした仕事をする建築家らしく、初めてのミーティングにアンネは氷の塊のようなアクリル素材を携えてシャルロットの前に現れたという。素材、フォルムについてふたりは会話を交わし……彼女のクリエイションに似合う空間が生まれた。
ジュエリーを買いに行く、というだけにとどまらないブティックだ。 photo:Courtesy of Charlotte Chesnais
リサイクル・アクリルを使用している。ジュエリーを展示するテーブルのコーナー、透明な部分の硬質な美しさにも注目したい。photo:Courtesy of Charlotte Chesnais
ブティックではオレンジ、ピンク、ブラック……といった漆塗りに着想を得たカラフルなリングとイヤリングなど、最新のカラーコレクションが見つかるのはもちろんだが、エクスクルーシブなジュエリーも販売している。既存のデザインにパールを用いたシリーズ。ジュエリーに組み込まれたいびつなフォルムのパールの中には、赤に近い珍しい色の真珠も。そして、トルマリンやサファイアなどの貴石を既存のデザインに取り入れたジュエリーも扱っている。リングはサイズ展開がないので、気に入った石のリングが指にぴたりと合ったら、それはシンデレラの靴のよう。あなたのものです!?
不思議なフォルムのジュエリー。どのように身につけるのか……シャルロットがワイヤーで製作した手や耳でジュエリーを展示する光景はどことなくシュールだ。photos:Mariko Omura
左:鏡や石板の棚も見所。ブティック内にはシャルロットによるオブジェも4点展示されている。右:貴石を組み合わせた一点もののジュエリー。photos:Mariko Omura
madameFIGARO.jpコントリビューティング・エディター
東京の出版社で女性誌の編集に携わった後、1990年に渡仏。フリーエディターとして活動した後、「フィガロジャポン」パリ支局長を務める。主な著書は『とっておきパリ左岸ガイド』(玉村豊男氏と共著/中央公論社刊)、『パリ・オペラ座バレエ物語』(CCCメディアハウス刊)。
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