貴公子ウーター・ヘメルのインストア・ライヴ

Culture

1月12日に渋谷タワーレコードで行われた、ウーター・ヘメルのインストア・ライヴに行ってきました。ニュー・アルバム『ノーバディーズ・チューン』は3月4日発売と、約2ヶ月も先のことなのに、世界に先駆けていち早く彼の新曲を聴けるとあって、会場は女性を中心に満員盛況。しかも写真も取り放題とあって、ライヴの前半は顔を少しでもアップで撮ろうと手を伸ばすファンが、まさに彼に直接触れようとするような勢いで、凄いものがありました。早めに会場へ足を運んでいた私は、まぁまぁのポジションをキープ!


昨年発売になったデビュー・アルバム『ヘメル』の際には、”シルクの声を持つジャズ界のプリンス”、”新世代のフランク・シナトラ”といった呼び声がありましたが、私が思う彼の音楽の印象は、ジャズにこだわらず、みんなに楽しんで欲しいという”ポップ”感覚も持ち合わせていて、人懐っこい人柄も合わせ、とても親しみやすいものになっています。プロデューサーが、オランダのミュージック・シーンに新風を巻き起こしている新鋭ベニー・シングスということも、あるかと思います。

ベニーのサウンドやハーモニーには、朝の光を感じさせるような煌く明るさや爽やかさがあり、マイナーコードの展開でもふわっと気持ちを軽くしてくれるのが魅力です。そのサウンドやメロディが、ウーター・ヘメルのスウィートでロマンチックな歌声に見事にマッチしています。ベニー・シングスが手がけた女性シンガーのジョヴァンガのアルバム『サブウェイ・サイレンス』もオススメで、休日のブランチ・タイムなどにぜひ聴いていただきたいです。


ヘメル君(甘いマスクのせいか、31歳より若く見えますね。つい”君”付けしたくなります)は、15歳の時からクラシック・ギターを習っていたものの、途中から興味がロックに移り、ジェフ・バックリー、ニルヴァーナ、スマッシング・パンプキンズなどに傾倒し、次第に歌も歌うようになったそう。音楽学校に進んでジャズと出会い、無限にある複雑なコード進行から生まれるハーモニーやメロディによる素晴らしい音楽に魅了され、そこから一気にシンガー、そしてソングライターとして音楽に身を捧げてきたそうです。
                            

ライヴでは、歌やギターはもちろん、まるで自宅のリヴィング・ルームにお客さんたちを招いてくれたかのようなアット・ホームな雰囲気で、バンド仲間たちとの歌声や演奏を楽しませてくれます。本当にメンバー同士の仲が良く、演奏や歌を心底楽しんでいるのが伝わってきて、聴いている私たちも心から温まっていきます。
  

新作『ノーバディーズ・チューン』を制作するにあたって、その曲にふさわしい音色に強くこだわって楽器を探したらしく、アルバムにはフィリコーダ、オートハープ、メロトロンをはじめ、さまざまなユニークな楽器が使われています。この日のウーターは、ギターやキーボードのほかにオートハープも持参して演奏してくれました。


そして、最後にはアンコールで、ピアノの弾き語りで「アムステルダム」を歌いました。

デビュー・アルバム『ヘメル』には大ヒット曲「ブリージィ」を筆頭とするハッピーな気持ちを運ぶ曲がたくさん収録されていましたが、新作『ノーバディーズ・チューン』はその名の通り、誰も歌っていないオリジナリティ溢れる楽曲を求めて曲を書き、レコーディングしたそう。そして、「人間にはいろいろな感情があるから、今回はハッピーな曲ばかりじゃないよ」と、語ります。格段にステップアップした彼の音楽世界を味わうことができる1枚になっています。

この2日後には某誌のインタヴューでウーター・ヘメルに会ったのですが、インタヴューが盛り上がったからか、後日レコード会社の方からCDに同封される解説文を頼まれました。そちらにも彼の魅力をさらに書きますので、発売時を楽しみに待っていてください。

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ちなみに当日演奏したセットリストです。コンサート並みに、何と1時間近く演奏してくれました。ファンにとって、間近で彼を見られて新曲も聴けた至福の時間でした。

01. Once In A Life Time(新曲)
02. Breezy
03. Slow & Blue(新曲)
04. Sir Henry(新曲)
05. Adore(新曲)
06. Big Blue Sea(新曲)
07. Nobody’s Tune(新曲)
08. March, April, May(新曲)
09. In Between(新曲)
10. One More Time On A Merry-Go-Round(新曲)
11. Tiny Town(新曲)
12. Don’t Ask
13. See You Once Again(新曲)
14. Amsterdam (encore)

→こちらで、1曲フリーダウンロードできます。
http://www.bls-act.co.jp/wouter/index.html


ウーター・ヘメル『ヘメル』


*to be continued*

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音楽&映画ジャーナリスト/編集者
これまで『フィガロジャポン』やモード誌などで取材、対談、原稿執筆、書籍の編集を担当。CD解説原稿や、選曲・番組構成、イベントや音楽プロデュースなども。また、デヴィッド・ボウイ、マドンナ、ビョーク、レディオヘッドはじめ、国内外のアーティストに多数取材。日本ポピュラー音楽学会会員。
ブログ:MUSIC DIARY 24/7
連載:Music Sketch
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