「ガラスの色で世界を彩る」イッタラ クリエイティブディレクターが手がけた、誕生90周年を迎えたアアルトベースの秘密。【インタビュー】

Culture

ヤンニ・ヴェプサライネン/イッタラ クリエイティブディレクター

Janni Vepsäläinen/ヤンニ・ヴェプサライネン
フィンランド生まれ。英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートで修士号取得後、ファッションブランドのデザイン部門を経て、2023年2月イッタラクリエイティブディレクターに就任。イッタラではエスポーのフィスカース本社、イッタラ村のガラス工場にアトリエを構えている。

ガラスの色で世界を彩り、人々を高揚させ、交流を促す。

1930年代にアルヴァ&アイノ・アアルトが生んだタイムレスなデザインを大事にしてきたフィンランドのガラスメーカー、イッタラが、2024年「革新的でアヴァンギャルド」をコンセプトにリニューアル。その立役者こそ、モノトーンのスーツをクールに着こなすファッション業界出身のクリエイティブディレクター、ヤンニ・ヴェプサライネンだ。フィンランド出身で、ジバンシィ、ザ・ロウ、JWアンダーソンなど名だたるメゾンで経験を積んだ彼女の手腕は、ロゴの刷新や就任後最初に手がけたカラフルなシリーズPLAYにさっそく表れた。革新を続ける意図はどこにあるのだろうか。

「私が就任してからのモットーのひとつに『Painting the world with the colors of glass(ガラスの色で世界を彩る)』があります。イッタラには、ガラスに色をどう織り込むかという研究の歴史とそれを商品化する技術がある。一方、私のクリエイションの根幹には、ファッション、アート、デザインと、分野を横断してものごとを捉える意識があり、そこに色は不可欠です。配色や効果的な使い方についてさまざまな側面から追求することは、私の表現の原点であり、新しい形で人と繋がることを可能にするものなのです。色を用いて遊ぶことは、イッタラの世界をもっと多くの異分野の人々へ届ける媒介になると考えています」

ヴェプサライネンがJWアンダーソン時代に手がけたというエネルギッシュなカラーブロックのニット(2020年、ミュージシャンのハリー・スタイルズが着用し話題をさらった)も、色の魅力が人々を繋いだ好例といえるかもしれない。

「コロナというパンデミックを経て私たちは、よりリアルなふれあいを求めるようになりました。日用品にもファッションにも、気持ちを高揚させ人々の交流を促すものが必要だと思うんです」

新作は、アルヴァ・アアルトによる代表作、アアルトベース誕生90周年を記念した年間テーマ「AALT90」から登場。

1936年に発表されたアアルトベースは、それまで直線的で硬質なデザインが多かったガラス器に、有機的で柔らかな線を取り込んだ画期的なデザインだった。その不朽のフォルムをイッタラのハンドメイド技術を駆使して再解釈。光の反射具合によって色の見え方の変わるラスター仕上げのアアルトシティベースを発表した。その輝きは、まるでオーロラがきらめく白夜の空を思わせる。

「自然との繋がりを大切にするピュアな心はフィンランドデザインの特徴であり、いつの時代の人々の心にもあるものです。丁寧に過去に学んで新しきをクリエイトすることは、ファッション業界でもライフスタイルの世界でも同じ。人々の気持ちを考えながら、プロダクトづくりをしていきたいと思います」

アルヴァ・アアルト コレクション Tokyo ベース ¥79,200(8/5発売予定)/イッタラ

アアルトベース誕生90周年を記念して世界6都市をテーマにした数量限定コレクションより。桜からネオンが照らす夜景まで自然とテクノロジーが調和する都市をイメージした東京エディション。マウスブローによって1点ずつ仕上げられた逸品。

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  • text: Saiko Ena

*「フィガロジャポン」2026年6月号より抜粋