「火10」ドラマの人気作を通して考える「子ども」、そして「家族」という存在。
昨年、知人が養子縁組制度を通じて、親になった。夫婦ともに40代半ばで、数年間、あらゆる不妊治療を経たうえでの決断だったと聞く。ただ迎えた生まれたばかりの命はべらぼうに可愛いらしく、とても幸せだと言っていた。めでたい。こういう知らせを聞くのは、こちらも笑顔になるほどうれしい。ひょっとしたら無下に扱われたかもしれない、小さな命が輝いたのだ。
その思いの裏で、日本の「特別養子縁組制度」について眉をひそめる。一部では知られているけれど、成立までのハードルがとても高い。家庭裁判所による調査や審判、養親の年齢制限や健康状態、養育能力の確認など、かなりの時間を要する。そんな背景から日本国内では年間約600〜700件程度しか、成立していないのが事実だ。が、悲しいことに虐待などあらゆる事情によって、両親と暮らせず、乳児院や養護施設で生活をする子どもの人数は、国内で現在約3万〜3万6000人もいると聞く。 あくまで私見だけど、日本は血縁をあまりにも重視しすぎだ。「自分のお腹を痛めて産んだからこそ愛が持てる」「最後は血のつながり」など、昔ながらのしきたりを重んじる傾向が強い。独身、子無しの私もさんざん言われ続けてきた。「血縁を否定するつもりもないけれど、全肯定もしない」と、地元で子どもを持つ同級生に話したら、白い目で見られた経験もある。ただこの血縁重視の感覚のせいで、多くの時間をムダにして、救われない子どももいるのでは……? とモヤモヤ考えていると、先日気づいたテレビドラマの現象を連想した。
今年の冬ドラマで放送された『未来のムスコ』(TBS系)。主人公の汐川未来(志田未来)の元に「時空を超えてやってきた」と話す、未来の息子・颯太(天野優)が現れた。慣れない母親業に苦戦しながらも、一緒に過ごすうちに、愛情が深くなっていく未来。その後、5歳の颯太は元の世界に戻っていくが、再び会えるかもしれないと期待が膨らんでいく。その後、念願かなって会うことができた息子は、実の両親を亡くして病気がちな祖父と暮らしていた。その様子を見た未来は颯太と養子縁組制度を使って、親子になる決意をする……というのが、大まかな物語。
(C)TBSスパークル/TBS (C)阿相クミコ・黒麦はぢめ/集英社
この最終話で気になったのは、主人公が血縁のない親子関係を選択していく様子だ。さらに私の記憶を反芻していくと、「未来のムスコ」が放送されていた「火10(TBSで毎週火曜22時から放送されるドラマ枠のこと)」では最近、いわゆる“ステップファミリー”を取り扱うドラマに人気作が目立っている。
火10の3作品が示した、自分が選んだ関係性
たとえば松本若菜主演「西園寺さんは家事をしない」(2024年)では、思わぬ形で同居を始めた独身の西園寺一妃(松本)と、楠見俊直(松村北斗)と娘のルカ(倉田瑛茉)が、心を通わせて、ラストには3人でともに暮らしていく。家族の形式にはこだわらず「ワクワクする方へババっと進む」。さっぱりとした西園寺さんのキャラクターが反映された内容だった。
そして火10でステップファミリーといえば忘れてはいけないのが綾瀬はるか主演『義母と娘のブルース』(2018年)。自分が余命いくばくもないと知った宮本良一(竹野内豊)が、キャリアウーマンの岩木亜希子(綾瀬/のちに宮本亜希子)と再婚。ひとり娘のみゆき(横溝菜帆/上白石萌歌)を、義母となった亜希子に託して亡くなってしまう。残された亜希子は会社も退職して、子育てのしやすい環境を整えて、親子ふたりで暮らしていく。
連続ドラマ終了後、3回もスペシャルドラマが放送されているのは、昨今の国内ドラマでは異例だ。私の見解として、TVerの再生回数や視聴率など連続ドラマの人気に応じて、2時間のスペシャルドラマや映画を制作すると「……あれ?」と、肩透かしのような印象を受けるパターンが散見される。連続ドラマの放送形態の熱量や勢いを担保するのは、なかなかの苦戦を強いられるらしい。ところが本作にいたっては、そんな様子を微塵も見せず、スペシャルドラマもおもしろく、圧倒的な愛があった。タイトルにもある“義母”との関係性は、血縁の有無なんて関係がないと、作品が大きく示してくれた。
件の3作品はとても清々しかった。元々ラブストーリーを中心に、明るい女性向けの作品が多い『火10』というひとつの放送枠内で、何度かステップファミリーを扱っているのは稀有な事象だ。これは現代へのひとつのメッセージかもしれない。改めて“血縁”という関係性に対して、自身がどう思うのか考えるきっかけにしてもらえればと今回、文章を書かせてもらった。そのほか『火10』以外でも『はじめまして、愛しています。』(テレビ朝日系・2016年)や、『マザーズ』(中京テレビ・2014年)など、ステップファミリーを扱ったドラマが過去に放送された。特別養子縁組制度には触れず、血縁関係がなくても親子愛がある事実を謳った『マルモのおきて』(フジテレビ系・2011年)や『Mother』(日本テレビ系・2010年)などもある。興味があればぜひ動画配信サービスなどで、観てほしい。
最後に。私は自分を救ってくれる大きな関係性が、血縁以外にも周囲に存在すると思っている。そして見知らぬ子どもでも路頭に迷っているのなら、躊躇なく手を差し伸べられる経済力と行動力を持ち続けたい。大事なのは思考と感覚を偏らせないことだ。

(C)阿相クミコ・黒麦はぢめ/集英社(C)TBSスパークル/TBS