いまのパリで注目の出来事を、パリ支局長の髙田昌枝がリポート。
お漬物みたいな発酵野菜のブームが到来し、レストランや食材店でさまざまなメニューに出合えるように。流行の背景には、現代の価値観が反映されている様子だ。
ミレニアル世代の価値観を象徴する、発酵野菜ブーム。
パリでは発酵食品が大ブーム。火付け役は、マリ=クレール・フレデリックのブログと著書『Ni Cru Ni Cuit(生ではなく、加熱もしていない)』で、街には発酵食品のレストランや食材店が誕生している。
発酵というと、日本人なら味噌や納豆、フランスならチーズやワインがすぐに思い浮かぶけれど、いまパリジェンヌを魅了しているのは発酵野菜作り。塩を加えて乳酸発酵させる、いわば古漬けなのだが、発酵が生む酸味のほかに、ハーブやスパイスで風味もプラス。フーディーズたちのキッチンとインスタグラムには、ガラスの保存容器に入った色とりどりの野菜が並んでいる。
Ferment
2020年6月にオープンしたビストロ、フェルマンでは、色鮮やかな自家製発酵野菜のボトルがグリーンとともに店内を飾る。コンセプトは、料理の中に必ず発酵食品を使うこと。店主のフロリアン・ディデーは、『Ni Cru Ni Cuit』を読んで発酵に目覚めた34歳だ。彼は、「忘れられていた伝統手法による手作りは、アンチシステムを求める僕らの世代の価値観に訴える」という。
インスタ映えも人気の秘密。
栗カボチャのローストにキヌア、キムチ、フェタチーズを合わせたフェルマンの一皿。パスタソースには発酵トマト、牛肉の煮込みには発酵ニンジンで、一味違う旨味を探求。
野菜の瓶詰はインテリアに一役。
昼食のテイクアウトはメイン14ユーロなど。
51, rue Blanche 75009
tel:09 83 74 58 26
営)11時30分~深夜(月~金) 18時~深夜(土)
休)日
※現在はランチのテイクアウトのみ 11時30分~15時(月~金)
http://ferment.paris
Atelier Cultures
乳酸発酵のアトリエを運営するラシェル・テイラーは、ブームをこう分析する。「加熱も冷凍もしないからエネルギーいらず。大量に収穫する旬の野菜を長期保存し、捨てる部分も利用するゼロウェイスト。ガラス容器で保存するサステイナブルなイメージもあります」
しかも、「発酵が生む風味が料理に旨味を加え、肉がなくてもコクがでる」というのは前述のフロリアン。畜産が環境に与えるインパクトを懸念してフレキシタリアンやベジタリアンに転向するパリジャンの食卓にも強い味方というわけだ。
ミレニアル世代の価値観を象徴する発酵食品だが、コロナ禍で長くなったおうち時間が人気を後押し。ラシェルは言う。「70年代以降、社会のスピードは増すばかり。でも、発酵を司るバクテリアを急がせることはできません。発酵食品作りは、待つことの意味を教えてくれます」

料理人として働くうち、果物や野菜の無駄から発酵食品を、と考えたラシェルは、乳酸発酵のアトリエを開始。栄養士に勧められた人、ゴミゼロを目指す人、トレンドに敏感なフーディーズ、リタイアした女性など、参加者はさまざま。「テクニックを覚えれば、発酵方法や素材の組み合わせでクリエイションが楽しめる」。写真はキムチ教室30ユーロ~。現在はオンラインで10ユーロ~で開催。
*「フィガロジャポン」2021年6月号より抜粋
●1ユーロ=約132円(2021年5月現在)
réalisation:MASAE TAKATA, photos : TATYANA RAZAFINDRAKOTO (Ferment), MORGANE LE MAT(Atelier Cultures)
この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/paris/210519-journal-de-paris.html