いまも昔も、ビストロが
パリの街をおいしく活気づける。
パリの食べ物どころ「ビストロ」には、パリっ子たちの生き生きとした生活がある。赤いひさしに、籐の椅子。黒板に書き付けられたメニュー。季節を彩るフランスならではのごちそうを、気取らずに食べる喜びがある。
王道ビストロといえるビストロ・ポール・ベールは20年前に創業。
ビストロの前身はカフェ。地方からパリに上京した石炭や薪、ワインなどを売る商人が、小売店を兼ねた軽食を食べさせる食堂を開業したことが始まりだ。仕事の合間の止まり木として発展したビストロは、パリで働く人たちの胃袋を支えてきた定食屋だった。
19世紀、小さなビストロが活気みなぎるオフィス界隈に集中していたのもそのためだ。たとえば昔、中央市場のあったレ・アール地区や、証券取引所のあるラ・ブルス。1826年に創業し、旧中央市場近くに立つル・コッション・ア・ロレイユは、19世紀末作のフレスコ画を残す貴重な一軒だが、いまは当時の面影を残す店はほとんどない。また、働く男性たちの胃袋を支えていた料理人は、たいてい女性だった。鶏の煮込みやステーキといった飾り気のない家庭的な料理が、産業革命真っただ中のパリに活力を与えていたのである。
老舗ル・コッション・ア・ロレイユにはいまも愛されるビストロ定番料理が揃う。
カウンターのあるカフェを再現。
しかし、トレンドワードとしての「ビストロ」という言葉が、表舞台に引っぱり出されて「レストラン」と並列される存在になったのは、遠い昔のことではない。いまや、その名を轟かせるルレ・サンジェルマンのオーナーシェフ、イヴ・カンドボルドが1992年に開業したラ・レガラッドは、パリ中に旋風を巻き起こした。サービスも素材もシンプルだが、技術は一流。イヴはル・クリヨンなどの高級ホテルのレストランで働いた経験を生かし、質も味もいい料理をリーズナブルな価格で楽しんでもらえる場所を提供したいと考えた。そうして選んだステージがビストロ。当時は、ビストロというと予約しなくても必ず座れたが、ラ・レガラッドが「予約の取れないビストロ」になったことは画期的だった。それに並ぶ人気店がティエリー・ブルトンのシェ・ミッシェルや、ティエリー・フォシェのロス・ア・モワルといった顔ぶれだ。季節の魚のカルパッチョ、シューファルシ、ジビエパテのパイ包みなど、旬の素材の定番料理。3ツ星級の腕による洗練された味わいで、たちまちパリジャン、パリジェンヌは魅了された。
ポール・ベールのエスプリを継承した11区のアスティエ。
もちろんいまも、ビストロは進化中だ。イヴがセカンド店として2009年に始めたカウンタースタイルのラヴァン・コントワールが一世を風靡。食後感もライトな小皿料理とワインを気軽に楽しめるとあって、上質なライフスタイルを好むいまのパリっ子に響き、オーナーたちはセカンド店としてオープンし始め、現在激増中だ。それは、「カウンターのあるカフェ」というビストロの前身が、現代に蘇っているかのようで、どこも活気がみなぎっている。食を愛するパリっ子に日々の活力を与えているのは、いまも昔もビストロなのだ。
代々女性が料理長を務めるアラールは、エスカルゴなどブルゴーニュ料理が名物。
photos : TAISUKE YOSHIDA, réalisation : AYA ITO
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