TAAKKがコレクションで表現する、誰かを想う気持ち。
シトウレイの東京見聞録
7月、コロナの影響でファッションウィークがオールデジタルになったメンズコレクション。友達のデザイナーの幾人かも、当初はパリでショーやプレゼンテーションを予定していたのだけれど強制的にデジタルに。
「デジタルである」というしばり以外は何をやってもOK! という自由な形――というか実際運営側も初めての事態で、何かしらのルールやガイドラインを定めることすらままならない状況だったのだろう――。結果、「ファッションで何かを伝える」と言うことの意味を、デザイナーやブランド、メゾンに改めて問いかける結果になった。
「誰かに会えない寂しさと、会える嬉しさ、喜び。そういった感情を形にしたいなって思ったんです。」
TAAKK(ターク)のデザイナー、森川君はそう話し出す。彼も、今回パリで予定していたショーをデジタルに移行したひとりだ。
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「コロナになって、実際に人に会えなくなっちゃって。さらにデジタルファッションウィークが決定して、ショーという場所を通して生身で会えるはずだった人たちにも会えなくなった時に、僕はその人たちに『手紙』を書こうって思ったんです。
内容はさておき、『手紙を書く』っていう行為そのものが、実際に会えない相手に思いを馳せる行為ですよね。会えないけれど相手のことを思ってるよってことを表現するための手段。同時に、会えない寂しさと会える喜びの両方の感情を呼び起こす道具とも言えるなあって。なので、今回デジタルで発表することになって、手紙がテーマになったのは僕にとっては自然な流れで。それが決まってから、じゃあどんな風に、何を作るかをチームで話し合っていきました」
インビテーションは、「拝啓 シトウレイ様」から始まる彼の手書きの手紙。そこにあるURLを開くと、「DEAREST REI SHITO」という文字が浮かび上がって、映像が始まる。手紙をテーマにした映像は、ショートムービーのような物語仕立てで、ローカルな東京的な世界観が淡雪のように広がっている。
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「僕は、何かを伝えることってCCでもBCCでもなくて、TOで送るのが人としての基本だと思ってるから、直接それぞれに手紙を書いて、添える映像も一人一人個別に作って届けたかったんです。それに、今回デジタルで届けるからこそ、正反対のアナログな手段を使う、そのギャップがおもしろいんじゃないかなって」
何百枚のお手紙と、何百個の映像を用意する手間暇時間! 考えるだけでクラクラしちゃうその惜しみない労力は、受け手である私たちの心をじんわりと掴む。「そんなことまでしてくれて……」っていう感謝の気持ちと、同時に森川くんの顔を思い浮かべて元気かな、会いたいなって気持ちにさせる。
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TAAKKが今回デジタルファッションウィークで表現したのは、(いまは会えないけれど)TAAKKの服に注目してくれているメディアの人たち、バイヤーの人たち、TAAKKを思ってくれているすべての人たちに、「僕もあなたのことを思っています」っていう気持ちなんだと思う。
「コロナの影響を受けて、これからファッションはビジネスとして厳しくなって行くとは思うんです。そんな時にじゃあ今後、僕らはどうすべきかを考えた時『相対する人たちと丁寧に寄り添っていくビジネス』をして行きたいなって思ったんです。元々TAAKKを知ってくれてる人たちには、そういった気持ちの決意表明みたいな意味もあるのと、これからTAAKKを知ってもらいたい人には、僕らはこういうスタンスだよっていうのを伝える意味もあって」
▶▶▶次回の後編は、8月22日に公開します。ゲストはdoubletの井野くん、お楽しみに!