精油から水性香水まで、心身に寄り添う「ナチュラルフレグランス」の取り入れ方は？【推し香水を語る会 vol.4】

毎回ゲストと編集部美容班が、旬のフレグランスについて語り合う連載「推し香水を語る会」。第4回は、フレグランスデザイナーのHarunaさんをお迎えして「ナチュラルフレグランス」の魅力を探ります。精油を用いたものから、アルコールフリーの水性香水まで、ナチュラルな香りを使いこなすコツは？

自分のために纏いたい、ナチュラルなフレグランスの魅力

NU　最近、精油を用いたフレグランスが注目されていますね。

SK　私はいわゆるメゾンフレグランスも好きで、いまもよく身につけるんですが。年齢を重ねると「香りで自己主張しなくてもいいかな」と思う自分もいて。最近は、今日のテーマである「ナチュラルフレグランス」に心惹かれます。

Haruna　確かに香りって、他者に向けて自分を演出する面もありましたよね。でも、いまは「自分のため」に香りを楽しむ人が増えている気がします。

TI　特に、精油を用いた香りは「自分のため」の側面が大きいですよね。

Haruna　私、もともと学生の頃から香水が大好きだったんです。新卒で入った会社で心身ともに疲れ果てていた時に精油の香りに救われた経験があって。それがいまの仕事に繋がっていますし、SKさんと同じく、年齢とともにナチュラルな香りのほうがしっくりくる自分がいます。

NU　ちなみに、メゾンフレグランスとナチュラルなフレグランスは、どんなふうに使い分けていますか？

SK　人に会うとか、仕事の時は華やかなメゾン系？ 食事に行く時は、強く香らないナチュラル系が多いかな。

Haruna　私は精油を用いたフレグランスがほとんどですね。一般的なフレグランスは海外に行く時くらい。

TI　私は逆に、使い分けはあまり意識したことがないです。メゾン系も精油のフレグランスも同列にある中で、その日の気分で選ぶ。ただ、改めて考えると、疲れている時は精油の香りを選ぶことが多いかも。

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感じ方もさまざま、精油フレグランスの多様性

Haruna　TIさんが言うように、その日の体調や気分によって求める香りって変わりますよね。あと、精油を使ったフレグランスは、同じ人でもその日によって感じ方が変わるんです。

SK　Harunaさんが作った「アルーン」がまさにそうよね。いい香りなんだけど、日によって少し印象が違う。

Haruna　原料は精油と、精製水と、植物発酵エタノールのみで、精油は10種類以上をブレンドしています。よく振ってから試してみて下さい、きっと皆さん感じ方が違うはず？

TI　私は柑橘系を感じます。

NU　えっ、本当？ 私はラベンダーを感じました。

SK　私はウッドかな。ちょっと酸味があるというか......若い木、ヒノキみたいな感じ？

Haruna　当たりです、伊勢神宮の式年遷宮で使われたヒノキが入ってます。一般的なヒノキに比べて軽い香調なので、酸味に通じるのかもしれませんね。柑橘も、ラベンダーも入ってます。皆さんさすがですね。

NU　そして全員、見事に感じ方が違うという（笑）。

Haruna　それだけ人の感性って多種多様なんです。この「アルーン」のテーマのひとつが、"個性や内に秘めた可能性は、多種多様にある"ということ。価値観が変化する時代において、「自分らしく生きていく」ためのお守りになってくれたらいいなと思っています。

SK　「アルーン」ってどんな意味ですか？

Haruna　サンスクリット語で「暁の光」という意味です。夜が明けて日が上るまでの、グラデーションの光。空の移り変わりに、ご自身のまだ見ぬ可能性を見いだしていただけたらと。

TI　偶然にも、スリーからブランド創設15周年を記念して登場する香りも、昼でも夜でもないグラデーションの時間帯を表現しています。

NU　X03は「薄明」、マジックアワーがテーマですね。原料には国産の精油を厳選していて、柑橘にレモングラスやクロモジが、穏やかに重なるのが素敵。

TI　X04は「残夜」、夜が明けて光が差し込む時間帯をイメージした香りですが、ミントが利いてますね......！

SK　南阿蘇の自社農園で栽培した、オリジナルのペパーミントなんですって。香りが力強いよね。

Haruna　私はX05の「宵」をイメージした香りが印象的でした。サンショウやジンジャーがスパイシーに香って、ちょっと土っぽい雰囲気もある。X04のミントは、疲れた時に手が伸びそうです（笑）。

TI　私、無性にミントの香りが欲しくなる時があるんですよ。モヤモヤした頭をスッキリさせたいとか、気分を変えたい時とか。

SK　気付け薬みたいね（笑）。私も疲れると、昔はカモミールやフランキンセンスの精油が欲しくなった。でもいまって、こういう素晴らしい調香のフレグランスがあるじゃないですか。単体の精油をブレンドする手間がなくて、ありがたいなと思います。

Haruna　何本か精油をブレンドしたフレグランスを持っておいて、気分で選ぶといいかもしれませんね。

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子ども用の香りやヘアオイルにも選択肢を広げて

SK　精油とは世界観が全然違うけど、エルメスの「ガブリオル」があまりにもいい香りで、改めて子ども用の香水っていいなと思ったんです。アルコールフリーの「水性香水」もナチュラルなフレグランスの一種ですよね。

Haruna　ガブリオル、かわいいですね。ボトルも素敵！

TI　オスマンサスとハニーサックルを使っていて、奥行きがありますね。複雑な香りなんだけど「素直な人」というイメージ。

NU　はつらつとした、ポジティブな香りですね。大人にも似合いそう。

Haruna　ディオールもすごく可愛い。優しい香りがゆっくり広がっていくのがいいですね。これも大人が使いたい香り。

TI　フルーツやコットンウールのノートが組み合わされているようです。ベビーパウダーみたいな懐かしさがある。

SK　子ども用の香りは赤ちゃんの肌の匂いみたいに、ただただ「リラックス」させてくれる。大人になると、どうしてもトゲトゲする瞬間があるじゃないですか。働く女性はひとつ持っているといいかもしれない。

NU　あと、水性香水を纏う感覚が、純粋に気持ちいいなと思いました。スキンケアみたいに肌に寄り添ってくれますよね。ちなみに、アルコールフリーのフレグランスとしては、「オイル」もあると思うんですが、私、最近ディファーのフレグランスヘアオイルに感動したんです。奥行きと深みがあって、限りなくフレグランスに近い感覚なの。

TI　世界各国の自然素材を厳選して、日本の感性でブレンドしたそうです。香りが6種類あって、ボディにも使えるんですね。

Haruna　私は「11001 トーキョーバランス」が好きかな。自分の心理状態に関係なく、いつでもつけられるニュートラルな香り。

SK　トーキョーバランス、いいよね。ゼラニウムやサンダルウッドがさり気なく香って、都会的な感じがします。

TI　私は「61705 フローラルフローラル」を愛用しています。ジャスミン、ローズ、ネロリなどの芳しい花々に包まれて「いい人」になれる気がする（笑）。

NU　私は「21612 ウッディアーシー」かな。ベチバーやパチョリの土を連想させる。山に囲まれた田舎で育ったので、こういう香りが落ちつくのかもしれません。

Haruna　香りって、その人の背景にある環境とか、記憶とも結びつきますよね。話しが少しそれますが、私、子ども向けに香りのワークショップを行っているんです。ラベンダーの精油と合成香料を両方嗅いでもらって「どっちが本物でしょう？」と聞くと、9割くらいの子が合成香料のほうを「本物」って答えるんですよ。いまの子たちはそれだけ合成香料に触れる機会が多いんだろうなと。ボディソープとか柔軟剤とか、身近なものに入っていますもんね。

SK　そういう香りの感性って、人生のどこかで修正されないのかしら。

Haruna　されると思いますよ。「精油が本物」と答えた1割の子がなぜそう思ったかというと、家でアロマを焚く習慣があったり、庭でラベンダーを育てていたりしたんです。やはり「実際に香りを嗅いで、経験する機会」が大切なんじゃないかと感じました。

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初心者が手にとりやすい香りと、上級者向けの濃密な世界

TI　香水って、香調によってだいたい好みが分かれるじゃないですか。でも精油を用いたフレグランスのいいところは、香りがより自然に近くて穏やかだから、苦手と思っている香調のものにも挑戦しやすくて経験値を広げられるところだと思います。

SK　ウカの「プチューム」はまさにそうね。ヴィーガン処方で、3種類のローズの香りを作っていて、その人の肌のpHや体温で変化するんですって。

NU　それぞれ甘みが利いていたり、スパイシーだったり、個性的だけど使いやすいですね。

TI　私、実はバラの香りがあまり得意じゃないんですけど、「サンディ ローズ」は落ち着きます。フランキンセンスと融合して、精油っぽさがあるからかも？

Haruna　あとサイズが小さくて、使い切りやすいですよね。香りの作り手としては、劣化しないうちに使ってほしい。

SK　手に取りやすさでいうと、コスメキッチンを運営するマッシュビューティラボのフレグランスブランド「セルフリフレクション」はどうですか？ 4種類香りがあって、「トワイライト ガーデン」は、コスメキッチン店内の香りをイメージしているそうです。

NU　あー、分かる。店舗の横を通ると、思わず引き寄せられてしまうあの香り......。

Haruna　受け入れやすい香りですね。ナチュラルな香水に興味がある人が、初めて手に取るのにいいかも。つけた感覚が軽いと思ったら、これも水性香水なんですね。

NU　水性香水であることや、それぞれの精油ブレンドも魅力ですけど、価格帯がユーザーフレンドリーな点もありがたいなって思うんです。店舗が全国にありますし、実際に手にとりやすいことは大切ですよね。

SK　エントリー向けの香りの対極にあるのが、Harunaさんが愛用しているというエムアイエムシーの「ニーマルアッター」でしょうね。ヨガやヒマラヤメディテーションの継承者であるニーマル・ラージ・ギャワリが手がけた3種類のオイル。

NU　沈香が主役なんですね。香りは、なんと表現したらいいか......。

TI　濃厚ですよね。スモーキーなアガーウッドが力強く迫ってくる感じ。

SK　もう「フレグランス」とか「いい香り」を超越した存在だよね。これ、どうやって使うの？

Haruna　3滴、肌に直接なじませるんです。「ボディ」は疲れた時に、巡りの気になる部分に塗って揉み込む。「ソウル」は落ち着かない気分の時に、手首につけて呼吸する。「マインド」は集中したい時に、こめかみなどにつけるといいそうです。私はソウルを瞑想前に使ってます。

TI　確かに呼吸が深まりそう。ハマる人は、やみつきになるかもしれませんね。

Haruna　人混みに行く前にも取り入れています。直接肌に塗るので、内面を強化する感覚があるというか。不特定多数の人と会う場合って、自分の芯を持っていないと揺らいでしまうじゃないですか。この「ソウル」だけでなく、お守りや浄化的に使える香りを、ほかにも何種類か持っています。

SK　セージやパロサントは、浄化的に使える香りですよね。

NU　「お守り」とか「浄化」って、ナチュラルフレグランスならではの感覚かもしれません。ストレスフルな時代だからこそ、こういう香りが注目されるのかも？ 上手に付き合うことで心身のバランスを快適に保ってくれる気がします。