イギリスのカリスマを演じたタロン・エガートンに迫る!

インタビュー

「ユア・ソング」などで知られる英国音楽界のスーパースター、エルトン・ジョンの半生を描いたミュージカル映画『ロケットマン』。世界で大ヒット中のこの作品で、エルトンを演じているのが、「キングスマン」シリーズ(2014年、17年)で大ブレイクしたタロン・エガートンだ。演技だけでなく、歌とダンスも高評価されたイギリスの新鋭の素顔とは?

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タロン・エガートンは本作の歌唱シーンをすべて自身の声で歌い上げ、エルトン・ジョン本人も舌を巻くほどのパフォーマンスを披露している。

──デクスター・フレッチャー監督が、演技だけではなく、歌も踊りも素晴らしくて、あなたは本当にこの役にピッタリだと大絶賛していました。

10代の頃もユースシアターでたくさんミュージカルを演じたし、その後に通った演劇学校を含め、これまでも歌う機会は多くありました。けれど、今回は著名な人物を演じるといった意味でも、プレッシャーがありました。でも僕はプレッシャーに対して変わった向き合い方をしている、というか、むしろ楽しんでいるんですね。

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本作の監督は日本でも社会現象になった『ボヘミアン・ラプソディ』(18年)で実質的な製作総指揮を務めたデクスター・フレッチャー(写真右)。

──エルトン自身はとてもオープンで、どんな質問でもしてくれという姿勢だったとのことですが、彼から聞いた話で特に感銘を受けたものは?

本当にたくさんあります。とにかく暗い薬物乱用の話もいくつもありましたが、いまはあまり深追いしないほうがよさそうですね……。特に印象に残ったのは、父親についての話です。彼はもうずっと前に亡くなったのに、エルトンはいまでも彼の心を掴みたいと思っているというのが、とても心に残りました。これは映画の中で、僕が“父さん”に会いに行くシーンに深く繋がり、演じる時はエルトンが言っていたことを考えていました。親に認めてもらうのがどんなに大切なことなのか、そして認めてもらえないのがどんなに悲しいことなのか。

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『ロケットマン』は第72回カンヌ国際映画祭では4分間のスタンディングオベーションで絶賛された。

──この作品はスターの名声と孤独について語っていると思いますが、俳優にも同じようなことが言えると思います。あなたはそういう意味で、似たような経験はありましたか?

それはないですね。あれほどの名声には危険がはらんでいると思いますが。僕にとって大変なのは、決まったスケジュールやルーティンがなく、毎日違うことをする、ということです。めちゃくちゃに忙しい時もあれば、週4日間何もやることがないという時もあり、これが僕にとってはいちばん難しいことです。でも孤独感があるわけではありません。単に、まだ大して有名ではないのかもしれませんね(笑)。

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エルトンは天才的な音楽の才能と観客を圧倒するパフォーマンス力で、全世界にその名を轟かせていく。

──この映画は彼の人生と音楽が素晴らしいコンビネーションで表現されていますが、エルトンの曲の中で、本当は映画で歌いたかったという曲はあるのですか?

実は数曲あるんです。特に気に入っているのは「Someone Saved My Life Tonight(僕を救ったプリマドンナ)」ですね。映画の中で、「I’m Still Standing(アイム・スティル・スタンディング)」のすぐ前にこの曲を入れようとデクスターに提案したくらいです。でも500くらいあるエルトンの曲を、2時間の映画にすべて詰め込むのは無理な話ですからね。でも今年後半のイベントで歌う機会があるので、そこで歌えないかと思っています。

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不安を覚える時こそ、クリエイティビティが生かされる。

 

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本作の衣装を手がけたのはジュリアン・デイ。『ボヘミアン・ラプソディ』ではフレディ・マーキュリー役の、『ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ』(09年)ではジョン・レノン役の衣装も手がけたベテランだ。

──俳優にとって、役になりきるため、その時代に入り込むために、衣装はとても助けになると思いますが、今回エルトンになりきるために、衣装はどのくらい役に立ちましたか?

とても役立ちました。いままでに僕が演じた役の中で、最も役に立ったかもしれません。衣装はエルトンのアイデンティティにおいて、とても大きなものです。特に、彼を“エルトン・ジョン”としてステージ上へ後押しするものの大きな要素が衣装で、本当に代え難いものです。ヒールを履くだけでも身長が高くなって心持ちが変わり、いつもよりパワフルな感じがしますからね。

──そうした派手な衣装を選ぶのは、彼の自信のなさから来ているものなのでしょうか?

そのとおりですね。不安感や自信のなさから来ていると思います。それと、ミック・ジャガーやデヴィッド・ボウイ、マーク・ボランといった同時代のアーティストの多くは、とても美しいセクシーな男性でした。自分のことをセクシーだと思えなかったエルトンは、こうした衣装を纏うことで、より自分をセクシーに感じたかったのだと思います。

──ちなみに、現代の若いポップシンガーは、あまりそういった衣装を選んでいないようですね。

個人的な意見かもしれませんが、正統派のポップスター、ロックスターはもはや存在せず、過去のものになってしまった気がします。ポップスターはいるけど、昔とは違うというか。もはや映画のスターが生まれなくなったというのと同じ気がします。「スター」ではなく、いまはただの「俳優」で……、別モノです。

──そうなってしまった原因は何だと思いますか?

インターネットでは? 何でもすぐに手に入り、ロマンスやミステリー、不可解さといったものが失われてしまいました。好奇心をそそらせるよりも、SNSですべてを見せてしまうのが、いまですよね。

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エルトンとともに「ユア・ソング」をはじめ多くの名曲を手がけた作詞家バーニー・トーピンを演じたのは、『リトル・ダンサー』(00年)に主演し鮮烈なデビューを果たしたジェイミー・ベル(右)。

──普段はどういう音楽を聴かれるのですか?

いつも聴いているのは、ジョニ・ミッチェルやデヴィッド・ボウイ、オーティス・レディング、ケンドリック・ラマー。フォー・トップスやザ・ドリフターズみたいなモータウン・サウンドも大好きです。ニック・ドレイクという、26歳で亡くなったイギリス人アーティストがいて、3枚しかアルバムがないのですが、最高に美しい音楽だと思います。

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タロンはエルトン・ジョン本人と対話を重ね、信頼関係を築きながら役を作り上げていったという。

──『キングスマン』や『フッド:ザ・ビギニング』(18年)ではアクション、『ロケットマン』ではミュージカルやドラマと、さまざまな役柄を演じてこられましたが、俳優としてどのような目標がありますか?

家のローンを支払い(笑)、それから、これまでとは異なるおもしろいことをやり続けながら、自分のやることに興味を持ち、熱心に取り組み続けられる状態であり続けることです。役柄という意味では、同じものを2度はしたくないですね。これまでとは異なった、なにかしらの挑戦になる役に取り組みたい。多少の不安を覚える時こそ、クリエイティビティが生かされる環境なので、そうしたことにトライしていくつもりです。

──あなたにとって、いい演技とは?

その役と自分が繋がっている演技ですね。どういう意味かというと、喉からではなく、腹から声を出すということです。それから、自己陶酔に陥らない程度の適度な演出とスタイルを見せること。この点においてゲイリー・オールドマンは非常にうまいですね。ブライアン・クランストン、フィリップ・シーモア・ホフマンは達人です。それから、ホアキン・フェニックスも。不格好で醜い姿を見せることを厭わない役者が好きです。いつも格好つけている俳優ほど興醒めなものはありません。

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エルトンのマネージャーで恋人でもあったジョン・リード(リチャード・マッデン/右)と。

タロン・エガートン Taron Egerton
1989年イギリス生まれ。2012年、王立演劇学校で演劇学の学位を取得。13年にITVの「オックスフォードミステリー ルイス警部」で俳優デビュー。『キングスマン』(14年)と続編『キングスマン:ゴールデン・サークル』(17年)でエグジー役を演じてブレイク。18年のシネマコンで「アクション・スター・オブ・ザ・イヤー」を受賞。
『ロケットマン』
●監督/デクスター・フレッチャー
●出演/タロン・エガートン、ジェイミー・ベル、リチャード・マッデン、ジェマ・ジョーンズ、ブライス・ダラス・ハワード
●2019年、イギリス・アメリカ映画
●121分
●配給/東和ピクチャーズ
●8月23日より、全国順次公開
https://rocketman.jp
©2018 Paramount Pictures. All rights reserved.

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interview et texte : ATSUKO TATSUTA

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