ミュージカル映画に初主演! 若きバレリーナの挑戦。

インタビュー

ミュージカルの金字塔の実写映画化『キャッツ』が公開された。『レ・ミゼラブル』(2012年)のトム・フーパー監督によるこの最新作のヒロイン、ヴィクトリア役に抜擢されたのが、英国ロイヤル・バレエのプリンシパル、フランチェスカ・ヘイワードだ。本作でスクリーンデビューを飾り、映画界でも注目を浴びることになった27歳の新人女優に、いまの心境を聞いた。

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女優としては初来日となるフランチェスカ・ヘイワード 。

――英国ロイヤル・バレエの公演で5回ほど来日しているそうですが、6回目となる今回は映画のプロモーションのためとなりましたね。

ええ。昨日の朝、着いたばかりだけれど、昨夜の特別上映会で天皇皇后両陛下にお会いする機会があり、とても光栄でした。最高の気分だったわ。

――この作品は、あなたのスクリーンデビューになりますが、この挑戦は何がきっかけだったのでしょうか。

8歳くらいの時に、『キャッツ』の舞台を収録したビデオを観て、ヴィクトリアの役が大好きになってしまったの。何度も繰り返し観て、ヴィクトリアの真似をしてリビングで踊り回っていた。実は、舞台版は観たことがないのだけれど。そうしたら数年前に、映画が作られると聞いて、ヴィクトリア役をぜひやってみたいと思ってオーディションを受けたの。

――自らオーディションを受けたのですね。その様子は?

1回目のオーディションの時は本当に緊張したわ。私はバレエのステージで緊張したことは1回もない。けれど、たったひとりのキャスティングディレクターの前で、全身が震えるくらい緊張した。何とかそれを突破して、2次、3次と進んでフーパー監督に会い、その時にヴィクトリアの役がオリジナルよりももっともっと大きな役になると知ったの。

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フランチェスカが『キャッツ』で演じるのは、人間に捨てられた臆病な子猫ヴィクトリア。

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テイラー・スウィフトが、自ら歌って聞かせてくれた。

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女優に初挑戦したフランチェスカの初々しい魅力がヴィクトリアのキャラクターに重なる。ロビー・フェアチャイルド扮する兄貴肌の猫マンカストラップ(右)と。

――とても美しい声をお持ちですが、音楽のキャリアはあるのですか?

いいえ、全然。実は、学校の授業の合唱で歌うくらいで、まったくトレーニングを受けたこともなかったの。

――この作品のために特訓を受けたのですね。

ええ。映画全体のリハーサルが一昨年9月から始まって、8月くらいからボイストレーニングを受けたの。毎朝9時にロンドンのパラディウム劇場に行ってボーカルトレーニングを受け、それからロイヤル・バレエに行っていた。9月から12月の映画のリハーサル期間もずっとトレーニングは続けた。12月末から撮影が始まったけれど、その間も続いていたので、トータルで半年以上は受けたわね。撮影中は、6時半に起きてバレエのレッスンを9時まで受け、その後、スタジオに行って映画の撮影をし、撮影が終わるとバレエのレッスンに戻るという日課だったわ。

――すごくハードなスケジュールだったんですね! ステージでは緊張したことがないそうですが、カメラの前ではいかがでしたか?

ダンスシーンは、撮影だからといって緊張することはなかったわ。ただ歌に関しては、たくさんのクルーやキャストの前で歌うことはとても緊張した。しかも、多くはジェニファー・ハドソンとのシーンだったのでなおさらだった。加えて、アンドリュー・ロイド=ウェバーとテイラー・スウィフトが、私が歌うのを聞いていた時もあったし。

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テイラー・スウィフトは妖艶なボンバルリーナ役で出演。

――テイラー・スウィフトとロイド=ウェバーは、あなたの役のために歌を作りました。素晴らしいことですね!

最初にテイラーが書いた詞を読んだ時、自分が演じるヴィクトリアの一瞬、一瞬の感情を完璧に捉えきった歌詞だったので、彼女の作詞家としての才能にあらためて感嘆したわ。

――テイラーとは何か話しましたか?

最初に曲が出来上がった時、トム・フーパーと私の前で、テイラーが自ら歌ってくれたの。彼女はとても優しい人で、歌い終わった時に、“これで大丈夫?”って私に聞いてくれた。あのテイラー・スウィフトが、大丈夫?って私に聞くなんて、なんだかおかしな気がした。それから3人で、どういった感情を込めて歌うべきかを話し合ったの。

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初の映画出演体験について生き生きと話してくれたフランチェスカ。

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大物俳優たちとの共演から得たこと。

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猫たちから尊敬される長老猫、オールドデュトロノミーを演じたジュディ・デンチ。役柄と同様、フランチェスカを温かく見守ってくれたという。

――この作品にはジェニファーやテイラー以外にも実力派俳優がたくさん出演していますね。彼らも歌い、踊っています。彼らとの共演はどんなものでしたか?

皆、素晴らしい俳優やダンサーだということはもちろん、以前から知っていたわ。けれど、それ以上に人として素晴らしい方々だったことに感動した。謙虚で、エゴがない。全員がベストを尽くして、みんなでひとつのものを作っていこうという姿勢に感銘を受けたの。

今回はあえて、私のような歌ったことのないダンサーに歌わせたり、ある意味、全員これまでの領域から飛び出してチャレンジしようという精神があったので、そういった意味でもとても団結が強まったと思う。ジュディ・デンチやイアン・マッケランは、見ているだけで勉強になり、見事な演技に刺激を受けた。

ジュディは、とても親切に接してくれた。この映画を撮り終えた後にロイヤル・バレエに戻り、『ロミオとジュリエット』に出演したのだけど、公演を観にきてくれたの。私の家族や友達は、ジュディ・デンチが目の前にいるものだから気が散ってしまって、みんな私を見ないでジュディを見ていたくらい(笑)。ジュディもイアンも優しく、地に足がついていて、それにユーモアのセンスもシャープで、とっても面白い方たちだったわ。

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特撮用のスーツをまとって演技した俳優たち。CGによって猫の毛が本物そっくりに再現された。

――スクリーンで見るとみなさん猫の毛に覆われていますが、モーションキャプチャーで撮影されたそうですね。実際には、どんなふうに撮影が行われたのですか。

衣装というものはなく、CG処理なので、現場ではモーションキャプチャーのためのボディタイツのようなスーツを身に着けていた。3人の人に手伝ってもらって着なけらばならないような、ピタピタのものなの。さらに、シンクロさせるために全身にワイヤーを張り巡らせていて、さらに両脚と両腕にバッテリーが付いているのでけっこう重く、動きがかなり制約されたわ。

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もっともっと新しいことに挑戦したい。

――今回のチャレンジを通して、新たに発見したことはありますか?

発見のひとつは、意外と歌えるかもしれない、ということ。やってできないことはないな、という自信がついた。かといって、またミュージカルで歌いたいかというと、ちょっと……。カメラの前でどういう演技をすべきかということは今回の撮影で学んだので、機会があればまた映画には出演したい。

――ミュージカルでないとすれば、どんな映画に出たいですか?

次回は、人間の役がいいわね(笑)。この映画を通して、どんな可能性にもオープンでいることの大切さをあらためて感じたから、何にでも機会があれば挑戦したいわ。

――英国ロイヤル・バレエのプリンシパルになってから数年経ちますが、バレエのキャリアをどう考えていますか?

プリンシパルに昇格した時も、到達したというより、ここからがスタートだと思ったけれど、いまもそう思っているの。私は常に進化し続け、前に前に進み続けたい。ここまでいけば満足、という到達点はない。これはダンサー特有のメンタリティかもしれない。バレエに関していえば、まだやってみたい役柄や出演してみたい演目がたくさんある。クラシックだけじゃなく、モダンやコンテンポラリーなど、もっともっと新しいことに挑戦したいと思っている。何といっても、2年半前にはこんなふうに映画に出るなんて思ってもみなかったのだから!

――具体的には、やってみたい演目や役柄はありますか?

『白鳥の湖』のオデット役が数カ月後に控えているわ。これは『くるみ割り人形』のクララとともに、私が長い間夢見ていた役。テクニック的にも肉体的にも大変な役だけれど、楽しみにしている。『うたかたの恋』の主演もいつか演じてみたいと思っているわ。

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バレリーナとして、そして女優としても、フランチェスカのさらなる挑戦に期待!

フランチェスカ・ヘイワード Francesca Hayward
1992年ナイロビ生まれ。2歳の時にイギリスのウエスト・サセックスに移り住み、バレエと出合う。2003年、11歳で英国ロイヤル・バレエ・スクールのロウアースクールに入学。08年にアッパースクールに進学し、10年に英国ロイヤル・バレエに入団。当初から頭角を現し、14年にソリスト、15年にファーストソリストに昇進、16年にプリンシパルに任命された。『くるみ割り人形』のクララや『眠れる森の美女』のオーロラ姫、『ジゼル』のタイトルロールなど、数々の作品で主要な役を踊る。18年、同じく英国ロイヤル・バレエのプリンシパル、スティーヴン・マックレーとともにサバティカル(研修休暇)を取り、『キャッツ』に参加した。
『キャッツ』
●監督・共同脚本/トム・フーパー 
●出演/ジェームズ・コーデン、ジュディ・デンチ、ジェイソン・デルーロ、イドリス・エルバ、ジェニファー・ハドソン、イアン・マッケラン、テイラー・スウィフト、レベル・ウィルソン、フランチェスカ・ヘイワードほか
●2019年、イギリス・アメリカ映画
●109分
●配給/東宝東和
© 2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.
https://cats-movie.jp

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photos : AYA KAWACHI, interview et texte : ATSUKO TATSUTA

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