attitude クリエイターの言葉

謙虚さを持ち、希望を育てる音楽を提供し続けたい。

インタビュー

カナダの異才が、絶望を超えて音楽を紡ぎだす理由。

アレックス・ヘンリー・フォスター|シンガーソングライター

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「何より大事なのは人の命であって、エンターテインメントは二の次だよ。大切な人や仕事を失い、希望をなくしかけている人が大勢いる中で、音楽やアートは商業的な機会として提供されるべきじゃない。スーパースターだろうとインディペンデントなアーティストだろうと、いまは謙虚さが必要な時だ。ただ、音楽が心の傷を癒すことはできると思う。すべては希望を育てるためにあるべきだし、ひとりの市民という立場で、僕は正直な愛の提供者であり続ける必要があると思っているんだ」

地球規模の危機的状況を前にミュージシャンは何をすべきと考えるかという問いに、アレックス・ヘンリー・フォスターはこう答えた。カナダ出身のミュージシャンで、ポストロックバンドであるユア・フェイバリット・エネミーズのフロントマンだ。

モロッコのタンジェで、自身に向き合って制作。

彼は、アムネスティ・インターナショナルとともに性差別やストリートギャングの増加の問題に取り組み、支援をしている活動家でもある。「自分にとって、音楽は社会との関わりの中にあるもの。音楽を始めたのは、いまの社会システムによって希望を持てずにいる子どもたちと繋がりを持ちたかったからなんだ」

そんなアレックスが一昨年カナダで発表した初のソロ作『ウィンドウズ・イン・ザ・スカイ』が、3月に日本を含む世界で発売された。モロッコのタンジェに2年間滞在し、そこにスタジオも設置して作った作品だ。

「好きな作家や画家がタンジェの街に影響を受けていたので、興味が湧いた。父の死で心に穴があいた時、タンジェに向かおうと直感で決めたんだ。タンジェの人々の人生はカラフルで純粋に感じられた。僕は苦悩と孤独の中にいたけど、その街で風や光やアクティブな人に触れて自分を取り戻し、心に正直になることで再び音楽が降りてきたんだ」

嵐や大波のように荒ぶる轟音的なサウンドと彼のポエトリーは重々しくダークだが、確かにここには正直さがあり、望みを捨てずに生きようとする強い意志が感じ取れる。

「嵐のような音は僕自身の中にある怒りだ。父の死による辛さ、後悔、懺悔の気持ちも反映されている。でも同時に、解放への望み、光の中に浸りたいという願いも映し出している。とにかくその時の自分の感情をありのまま表現することに重きを置いたんだ。これを作って、僕は人として成長できたと思う。聴く人にとっての個人的な旅路のようなものに、この作品がなってくれればうれしいね」

Alex Henry Foster/アレックス・ヘンリー・フォスター
カナダ・モントリオール出身。2006年に結成されたバンド、ユア・フェイバリット・エネミーズでボーカルとギターを担当。活動家としても知られ、東日本大震災の際には、Hopeプロジェクトを立ち上げて支援に動いた。

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2018年にカナダでリリースされて大ヒットした初ソロアルバム。昨年7月のジャズフェスでのライブを収めたボーナスディスクとの2枚組で、日本でも3月にリリースされたばかり。自然の怒りのようにも思えるカオティックな轟音にポエトリーリーディングっぽく言葉を乗せ、深い絶望と希望に対する希求を表現する。『windows in the sky』(MAGNIPH)¥2,640

*「フィガロジャポン」2020年6月号より抜粋

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interview et texte : JUNICHI UCHIMOTO

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