アイドル、アーティスト、俳優として活躍し、創作意欲は底を突かない。大の映画好きでもある中島健人が人生に影響を与えた作品の主人公に扮し、新しい表情を見せる。

『Superman』
スーパーマンのシークレットアイデンティティ、クラーク・ケント。「世を忍ぶ仮の姿は、真面目で内気な新聞記者。その雰囲気が出せたと思います」。グレンチェックのジャケットにタイの合わせがクラシカルなムードを後押しする。コート¥579,700、ジャケット¥540,100、シャツ¥92,400、ネクタイ¥25,300/以上ボッテガ・ヴェネタ(ボッテガ・ヴェネタ ジャパン) アイウエア¥70,400/ボッテガ・ヴェネタ(ケリング アイウエア ジャパン カスタマーサービス)
中島健人は一本気な人だ。裏表が一切なく、自分にも他人にも真摯に向き合う人間性は周知の事実。表現することに真っ向から対峙し、一等星のように唯一無二の光を放つ彼が、いつもとは異なる側面を見せるとしたら、果たしてどんなものなのか。そんな好奇心から、中島自身がインスパイアされたという5つの映画の主人公を軸にそのムードを纏ってもらった。
演じることは中島健人を形作る大切な要素のひとつ。
「素敵な機会をいただいて本当に感謝しています。作品選びは、ストーリーやその作品との思い出、そして衣装の雰囲気が似ないようにと悩みましたが、選りすぐりを挙げることができたと思います。今日撮影していただいて、あらためて映画とファッションの融合は興味深いということも感じましたね。"自分ナイズ"された表現にできたと思います」
スタイリングや撮影のことまで触れ、熱量たっぷりに語る。"ケンティー"とは、こういう人なのだ。プロデューサー目線があり、気配りができ、未来を見て物事を考える思慮深い人。
「いちばん好きな映画は、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』。楽しみにしていました」
アイドルの最愛映画としては意外性のある作品だ。本作は、若き実業家クリスチャン・グレイと平凡な女子大生アナスタシアの、特殊な嗜好と関係性を官能的に描いたラブストーリー。
「アブノーマルな描写もありますが、実は美しいラブストーリー。僕自身の創作活動へも影響していて、この映画からインスピレーションを受けて作った作品も多いです」
初めて観たのは10年ほど前。主演映画『黒崎くんのいいなりになんてならない』を撮る前の参考にしたと言う。
「ある種のS的な共通点が気になって観ました。性表現もあるし、人間の不埒な部分に焦点をあてた内容かと思いきや、誰しもが抱えるトラウマから生まれる人格や人との出会いによる変化、そのプロセスが非常に美しく描かれています。グレイは繊細で人間味もある、"かっこいい主人公"として記憶に刻まれています。自分にとっては宝物のような作品です」
『スーパーマン』は、家族との絆を感じるパーソナルな映画。クラーク・ケントとスーパーマン(カル=エル)、一人の人物でありながら持つふたつの側面を、彼らしさたっぷりに披露した。
「健人は、両親がクラーク・ケントからつけてくれた名前なんです。母が無類の映画好きで、小さい頃からクリストファー・リーヴ主演の『スーパーマン』のビデオを観ていました。恋人のロイス・レインといるとおどおどしているクラーク・ケントが、電話ボックスに入るとスーパーヒーローに変身する、そのギャップが好き。Sexy Zoneでライブ映像を手がけた時にそのオマージュで、公衆電話にメンバーが入って変身する演出をやったこともあるんです」
ロマンス映画に心奪われる、と中島。タキシードを颯爽と着こなしてみせた『ジョー・ブラックをよろしく』は、ブラッド・ピットが死神と素朴な青年の二役を演じ、死神の恋に落ちた悲哀や美しさを繊細に描いた作品だ。
「コーヒーショップで出会ったスーザンと青年が、お互い何度も振り返るけどタイミングがずれて、すれ違ってしまうシーン。好きですね。"人生の分かれ道"を感じる、あの時声をかけておけばよかったという後悔。勇気やタイミングひとつで人生は大きく変わることを学びました。一方で、『ショーシャンクの空に』は、泥水をすするような苦しみを乗り越えて、下水管を抜けたその先には地上で恵みの雨が降っている。脱獄劇ではあるのですが、あのラストシーンは人生のメタファーだと思っています」
「未来永劫残る作品は、狂気をはらんでいる場合がある」

『Joker』
ホアキン・フェニックスが演じた『ジョーカー』を象徴する、狂気的な階段のダンスシーン。「忘れられない衝撃を受けた作品です」。鮮烈なカラーブロックとレトロなリネン素材のヴェルサーチェのルックは、陶酔の演技を加速させた。ジャケット¥407,000、パンツ¥200,200(ともに参考価格)、シャツ(参考色)¥220,000、中に着たタンクトップ¥100,100、ベルト¥95,700、ネックレス(参考色)¥517,000/以上ヴェルサーチェ(ヴェルサーチェ ジャパン)
映画から受けた感動や学びが血肉となり、人生やクリエイティビティに発揮されていく。最高傑作と讃える『ジョーカー』は、主演のホアキン・フェニックスが第92回アカデミー賞で主演男優賞を獲得した作品だ。
「大道芸人のメイクは表情を隠すけれど、メイクをしているから黒い涙が落ちてくる。その描写に感情が爆発しました。僕の『ピカレスク』という曲で"ジョーカーの眼から堕ちる 黒い涙と笑みは嘘かわかるでしょ"と書いた歌詞は、この作品から取らせていただいています」
各作品を掘り下げていくにつれ、もしかすると、中島健人は狂気や哀愁がはらんでいる世界観が好きなのでは?という思いがよぎる。
「確かに、そうかもしれないです。影があるものに惹かれますし、未来永劫残る作品にはそういう要素があるのかなとも思います。僕、全然"陽キャ"じゃなくて、社交的な"陰キャ"なんです(笑)」
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アイドルを全うする、覚悟と矜持。
ソロアルバム第2弾として2月に発売する『IDOL1ST』は、中島自身の核である"アイドル"をテーマに据えた意欲作だ。作詞を手がけ、作曲にも携わった『XTC』のほか、セカンドシングル『IDOLIC』も収録。
「ナンバーワンアイドルというプライドを持って作ったアルバムです。全国ツアー中に『JUST KENTY☆』という曲が生まれて、自分を前面に出して曲を表現する楽しさを知って、このテーマに繋がりました」
自らの名前を歌詞に入れるアーティストはなかなかいない。そこにはアイドルとしての矜持と覚悟が宿る。
「僕かBLACKPINKのジェニーぐらいですよね、きっと(笑)。最初、アイドルをテーマにという話になった時に、難しいのではないか?と思いましたが、自分のいまの情熱を込めて制作しました。『XTC』は先にトラックが浮かんで、そのままイントロにして生まれた曲です。『IDOLIC』が表のアイドルの姿だとしたら、『XTC』はアイドルというベールを脱いだ姿。アイドルという究極の光に対して、神秘の影を表現しています。アイドルである以上、ある種の仮面は被っている。一方でその仮面をはがして人間らしく生きなくてはならない。その道を選んだ人間ならではの光と影があり、アイドルという宿命から逃れることはできない。これは僕の本音を書いている曲でもあるんです」
歌詞にも出てくる"仮面"。それは絶対的なヒーローとしての"光"と、その"影"にある深い苦悩を持つ『スーパーマン』にも通じる。
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生み出せない苦しみでなく生みの苦しみを味わいたい。
「まさに、スーパーマン的な要素がある曲です。もがいて悩む"影"の部分を歌にしています。冒頭のFlash という歌詞は、撮影でのカメラのフラッシュでもあるし、いわゆる好奇の目で見ている人間たちの目線でもある。スーパーマンでいうと、クリプトナイトなんですよね」
創作活動には、生みの苦しみが伴うもの。苦しいと楽しいならどちらの比重が大きいかを聞くと、こう返ってきた。
「生みの苦しみは、幸せ。生み出すことができない環境が、自分にとってはいちばん不幸だと思うから。『XTC』も香港行きの機内の5時間で書き上げたのですが、書いていると楽しくて興奮していました」
「アイドルという宿命から逃れることはできない」

ラストを飾るのは、スーパーマン中島健人。胸に燃える闘志のロゴに、アン ドゥムルメステールの戦い抜く兵士の姿勢とミュージックシーンへのリスペクトを融合させて、デフォルメした現代のスーパーヒーローだ。「スーパーマンがファッショナブルな姿で現れたら、こんなスタイルかもしれないですね」。ジャケット¥391,600、デニムパンツ¥159,500、スニーカー¥108,900、ベルト¥72,600/以上アン ドゥムルメステール(エム) Tシャツ¥8,580/ラボラトリー アール
アーティストたちとの交遊も広く、2024年にユニットを組んだキタニタツヤをはじめ、大森元貴、YOASOBIのAyase、ちゃんみならと公私ともに親しい。
「一昨年から一気に交流が増えて、気付いたら友だちになっていました。それこそ『IDOLIC』の曲については、藤井風くんから『2番のジャジーな感じがすごくセクシーだったね』と感想をもらってうれしかったですね」
悩んだり心が折れたりする時も彼らが支えになるという。
「悩みを相談できる人がこれまでずっといなかったんです。でもいまはキタニティーにもAyaseにも何でも話せる。笑いながら、大変だなぁ、と明るく受け止めてくれるんです。あとは家族と話すことと、とにかくよく寝ることでリカバーしています」
見事なコミュニケーション力と記憶力と探求心の持ち主であり、分析力のあるプロデューサーであり、プロフェッショナルを貫くアイドル。やはり、中島健人はスーパーアイドルの姿をしたスーパーマンなのかもしれない。
▶︎このほか、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』、『ジョー・ブラックをよろしく』、『ショーシャンクの空に』の主人公に扮した撮り下ろしカットは本誌をチェック!
1994年3月13日生まれ、東京都出身。アイドル、アーティスト、俳優など、マルチに活動する。主な出演作に世界配信ドラマ「Concordia」(2024年)、映画『知らないカノジョ』(25年)、『ちるらん 新撰組鎮魂歌』(今春公開予定)など。情報番組「中島健人 映画の旅人」(WOWOW)に出演中。2ndアルバム『IDOL1ST』を2月18日リリース。全国ツアー「"IDOL1ST 中島健人"LIVE TOUR 2026」も控える。
ヴェルサーチェ ジャパン
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ケリング アイウエア ジャパン カスタマーサービス
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*「フィガロジャポン」2026年3月号より抜粋
photography: Yuji Watanabe styling: Mayu Yauchi hair & makeup: Chie Ishizu text: Naho Sasaki




