ダーク、時々ファニー!? 若者の心を代弁するポッププリンス。

コナン・グレイ｜シンガーソングライター

「アメリカで、半分日本人として生活するのは容易なことではなかった。自分をどう生活にフィットさせたらいいのか混乱していたよ。だから、ずっと孤独を抱えていたんだ。いまはそれが自分の特徴だと思えるようになったけど、あの頃抱えていた思いが自分の創作活動に大きな影響を与えているのは確かだね」

これまで発表したシングルやEPなどでは、悲しい印象のエレクトロニック曲が多かったが、リリースしたばかりのアルバムではバンドサウンドも駆使し、カラフルに自身の人生を表現した。一方通行な思いを綴った歌詞が、恋愛だけではないさまざまな心情にもリンクし、最後には甘美な余韻を与えてくれる。
『Kid Krow』（Universal Music）デジタル配信

幼い頃から抱えていた孤独や不安を吐露した動画を公開し、一躍有名になったコナン・グレイ。日本人の母とアイルランド人の父を持つシンガーソングライターだ。2017年に初めて楽曲を発表すると、多くの音楽誌やファッションメディア、ビリー・アイリッシュやBTSから賞賛を受けた。「サッドポッププリンス」と呼ばれる彼の曲は、ダークな感情と向き合ったものが多い。

孤独や悲しい経験を、カラフルな曲に昇華。

「残念ながら僕はまだ交際経験がないから、恋愛については描けないんだ。曲を作れたとしても、『どうして自分に目を向けてくれないの？ 悔しい！』という感情をぶつけるくらいかな（笑）。でも僕はほかの人よりタフな経験をしているはずだから、それを音楽で表現するのが好きなんだよね。ハードルを乗り越えて、ベターな状態だからできることだよ」

リリースしたばかりの初アルバム『Kid Krow』は、辛い状況を吹き飛ばすようなエネルギーを閉じ込めた作品になっているという。

「親友が、僕のことをカラスみたいだって言うんだ。ダークだけど、ちょっとおどけた雰囲気もあるからって。確かに、僕はどんなことも最後には笑い飛ばせるタイプだし、とことんネガティブではない。人間って辛い出来事があると、真剣に受け止めすぎて暗くなってしまいがちだけど、それを楽しいポップソングにして人を笑わせたいと思うんだ。アルバムでは僕自身の悲しい経験や人生を綴りながらも、最後には笑顔になることができる内容にしたかった。最後の曲を聴く頃には、リスナーにとって、僕はベストフレンドになっているはずさ（笑）」

サウンド同様、ビジュアルにもこだわる。ネイルやメイクも施し、ジェンダーレスでカラフルな印象を纏う彼の姿は、見ていて気分が華やぐ。

「男女の区別って、現在ではそんなに重要な要素にならなくなったと思う。僕も性別で何かを分けて考えたりしないしね。要は、自分が自分であればそれでいいんだよ。何がスタンダードかなんて決まっていない。それを認め合える社会を作る手助けもできたらと思っているんだ」

＊「フィガロジャポン」2020年7月号より抜粋

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