attitude クリエイターの言葉

タハール・ラヒムが語る、優しさにあふれた最新出演作。

インタビュー

演技のインスピレーションは、日々の暮らしの中にある。

タハール・ラヒム|俳優

黒沢清監督がフランスで制作した『ダゲレオタイプの女』(2016年)や、『ある過去の行方』(13年)などで知られるタハール・ラヒムは、人懐っこい笑顔と気さくな性格で、こちらの警戒心をすぐに解いてしまうような俳優だ。映画界で10年以上のキャリアを築き、フランスでは幅広い人気を誇るというのに、その佇まいは昔から変わることがない。

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誰かを助けることで、自分も気持ちよくなれる。

そんな彼の新作は、『幸せになるためのイタリア語講座』(00年)で知られるロネ・シェルフィグ監督が、初めてニューヨークを舞台にした『ニューヨーク 親切なロシア料理店』だ。

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暴力的な夫から逃れるため、子どもとともにあてもなくニューヨークに来たクララは、古風なロシア料理店に紛れ込む。個性的なオーナーの店には、刑務所から出たばかりの新米マネージャーや孤独な看護婦など、訳ありの人間が集まっていた。限りない優しさをもって描かれた群像劇。
『ニューヨーク 親切なロシア料理店』は12月11日より、シネスイッチ銀座ほか全国にて公開。

 

弟の身代わりで入った刑務所から出所し、寂れたロシア料理店を立て直すためマネージャーとして雇われるマークは、子どもとともに暴力的な夫から逃れてきたクララと出会う。

「マークが刑務所に入っている間に弟は死に、誰からも見放される。だから出てきた時は人間不信になっているんだけど、もともとは誠実な男だったと思う。親切なオーナーや彼以上に苦労しているクララと出会うことで、人間性を徐々に取り戻していくんだ。原題『見知らぬ人の親切』のとおり、他人同士が助け合う中で本当の絆や愛を発見していく。ロネらしい希望と優しさにあふれた物語だと思うよ」

本作がワールドプレミアを迎えた時、批評家の中には「生ぬるいおとぎ話」と評する者もいた。だが、彼はこう反論する。

「誰かを助けるということは、自分自身も気持ちよくなれるもので、それはギブアンドテイクな関係だ。お金の問題ではなく、ただ注意深く他人に目を向けて話を聞いてあげたり、何かアクションを起こすだけでも人助けはできる。たとえユートピアにすぎないと言われても、いまの世の中で、それはとても大切なことだ」

実はラヒムには、こうした「いい話」を信じる理由があるという。

「貧乏な学生時代、寮でいつもお腹を空かせていた。友人とカフェに行った時、隣席の人と話が盛り上がって連絡先を交換したんだ。その後、電話をもらってね。『いま学生寮の前にいるから出てこないか』と言われて行ったら、彼がトラックにたくさん食品を積んで待っていた。食品会社のドライバーで、余りものを持ってきてくれたんだ。まさにこの映画に出てくるような出会いだったよ」

演技のインスピレーションは常に人生の中にあると言うラヒム。だからこそ、偽りのない彼の芝居が人々の胸を打つのだろう。

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Tahar Rahim/タハール・ラヒム
1981年、フランス生まれ。映画学校を経て映画界へ。『預言者』(2009年)でセザール賞最優秀男優賞と最優秀有望男優賞をダブル受賞し、俳優としての地位を確固たるものに。Netflixで配信中のTVドラマシリーズ「ジ・エディ」も話題。

*「フィガロジャポン」2021年1月号より抜粋

interview et texte : KURIKO SATO

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