等身大の現代女性を演じる、サラブレッドなパリジェンヌ。

アナ・ジラルド｜俳優

メラニーは失恋の痛手から立ち直れず、マッチングアプリで知り合った男たちと一夜限りの関係を繰り返している。倉庫で働くレミーは職場で知り合った女性とデートするが、うまく距離を縮められない。アパルトマンの隣人同士だが、お互いの存在を知らないふたりはそれぞれセラピーに通い始めて……。『パリのどこかで、あなたと』は恵比寿ガーデンシネマほか全国にて公開中。

フランスの名優イポリット・ジラルドとイザベル・オテロを両親にもつアナ・ジラルド。ニューヨーク留学を経て、本格スクリーンデビューを果たした主演作『消えたシモン・ヴェネール』（2010年）がカンヌ国際映画祭で脚光を浴び、舞台やテレビでもキャリアを築いてきた。最新作は、『スパニッシュ・アパートメント』（01年）に始まる青春三部作でフランスを代表する監督、セドリック・クラピッシュの『パリのどこかで、あなたと』である。

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出会い系アプリにハマる！？ 私自身は怖いけれど……。

決して器用とはいえない30歳の男女の日常を通して、今日の都会における出会いと恋愛を描き出す、優しさに満ちたラブストーリー。クラピッシュ監督の前作『おかえり、ブルゴーニュへ』（17年）でワイナリーを切り盛りする役を演じたアナだが、本作ではがん治療の研究者というやりがいのある仕事に情熱を傾けるいっぽう、マッチングアプリで恋人を探そうとする主人公を演じた。

「出会い系アプリは使ったことがないけど、驚くほど多くの友人が使っています。機能はすごいと思うけど、怖さも感じる。人は実際に会って接する中で、自分のフィルターを通して友だちや恋人を選ぶもの。そのフィルターが利かない分、危険だと感じる。人と人との出会いはもっと人間的なものが必要だとも思う」

『猫が行方不明』（1996年）、『パリ』（08年）と同様、パリの素顔を描くこともテーマの本作は、移民も多く住む庶民的な街18区が舞台だ。

「18区は二極化しているの。サクレクール寺院のあるモンマルトルのような観光名所もありながら、移民が多く住む庶民的なエリアもあり、映画に登場するような地下鉄の駅が地上に出ていたり、独特の雰囲気がある。家賃も安めで若者が住みやすい。パリの若者たちの実像を描くうえでは本当に適していた。私は静かな場所に住むのが好きだけど、この賑やかな街での撮影は楽しかったわ」

脚本の本読みで監督の自宅を訪れたついでに見つけたアパルトマンを購入し、現在は監督とお隣同士。裏方をやってみたいという願望があり、今年は短編映画の監督も務めた。

「フランス映画界は女性に開かれていると思うけど、送られてくる脚本に描かれている女性キャラクターが固定観念に縛られていると感じるのも事実。女性の個性がもっと前に出るような、そんな物語も必要よね」

現在32歳。俳優としても脂ののってきた時期だが、作り手としての活躍にも期待できそうだ。

＊「フィガロジャポン」2021年2月号より抜粋