【パリのインテリア】パリジェンヌの食器棚は、見せ方に美学あり!
Interiors 2025.06.14
自分の感性をもとに、知恵と工夫を凝らして日常を楽しく過ごす、フランス流の暮らしの美学「アールドゥヴィーヴル」(Art de Vivre)は、パリジェンヌの住まいのあちこちに息づいている。日常使いする器やグラスを収納する食器棚は、その人のライフスタイルを映し出す鏡。飾って収納するテクニックはもちろん、リメイクで唯一無二の食器棚を作るアイデアもぜひ取り入れたい。
ガラス雑貨は、フォルムを引き立てる白い棚に整然と並べる。
ジュマナ・ジャコブ(料理家)
色とりどりのグラスやカラフは、すべてフランスのヴィンテージ。目的別に2段に分けたうえで、最も綺麗に見える角度で配置する。photography: Mari Shimura
レバノン出身のジュマナのアパルトマンは、白を基調としたエレガントな空間に多国籍な要素をミックスさせるのが持ち味だが、自慢のガラスコレクションを展示する食器棚だけはパリシックな佇まい。色やフォルムを際立たせるため、棚は白が絶対条件。色の重なりを楽しんだり、差し込む光の加減でガラスの表情がうつろうのを愛でたり......。そんななにげない時間が人生を豊かにしてくれる。
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よくあるストレージを、隠し扉の食器棚にリメイク。
ソレーヌ・エロワ(装飾アーティスト)
ソレーヌのインテリアコーディネートのテーマは色彩。互いを際立たせる強い色の組み合わせを考えるのが巧みだ。photography: Gaëlle Le Boulicaut (Madame Figaro)
壁面装飾を生業とするソレーヌは、自宅にも鮮やかな色を効果的に取り入れている。階段下に設置した戸棚を開けば、そこはクラインブルーに塗られた食器棚というからくり。青い色が透けて見えるようにグラスを置き、いつでも取り出せるようにスタンバイさせている。食器棚の中のゴールドと床のオブジェの色を揃えて、統一感を出す手腕も見事だ。
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素朴なアンティーク棚には、日常使いの食器をラフに置く。
アリス・グルニエール=ヌブー(画家・女優)
50年代の絵柄のジアンのアンティーク皿やカフェオレボールを収納。モノトーンの陶器の中にひとつだけ佇む赤いマグカップが印象的。photography: Yusuke Kinaka
ブローニュの森の近くにあるアリスのアパルトマンは、昔からアーティストが暮らしてきたアトリエ建築。部屋はブロカントで見つけたものか、祖母から譲り受けた家具を中心にレイアウトしている。お気に入りは、祖母が愛用していたアンティークの食器棚。「無垢なウッドの質感が好きで、わざとガラスは入れずにラフに使用しています」
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テーブルウエアを白に統一することで、すっきり美しく収納。
マリーヌ・ド・ケヌタン(イラストレーター)
エピュレ(ピュア)をテーマにした食器棚にあるのは、白の食器とガラス製品のみ。家族の写真を飾ったり、スタッキングした器を一定の距離に分けて並べることで、独特のリズムが生まれる。photography: Ayumi Shino
白壁に繊細な彫り飾りの装飾があしらわれた、パリらしいアパルトマンに暮らすマリーヌ。インテリアも白を基調としたフェミニンなディテールのものを集めて楽しんでいるが、収納法は実にシンプル。好きなものほど見える収納を心がけているという。毎日使う食器は白で統一しているからこそ、ジアンの磁器や、ブルターニュのシードルカップなど、テイストも形も異なるものでも、すっきり美しく収納できている。
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見せない収納棚は、周りをデコレーションして個性的に。
オンディーヌ・サグリオ(「CSAO」アーティスティックディレクター)
赤のアクセントカラーをちりばめたキッチンに、白い食器棚がしっくりなじむ。天井のガラスランプは、近所のブロカントで見つけたもの。photography: Mariko Omura
セネガルの女性たちを支援するフェアトレードブティックのCSAO(サオ)で活躍するオンディーヌ。自宅には新品の家具がひとつもなく、もっぱらヴィッド・グルニエ(ガレージセール)で見つけてくるものばかり。素朴な白い食器棚も例外ではなく、35ユーロで入手した掘り出し物だ。このように隠すタイプの収納棚なら、フォルム自体に存在感あるものを選ぶのがコツ。脇の壁や最上棚にデコレーションを施せば、自分らしいスタイルが完成する。
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雑多に集めたコレクションは、白い棚に飾ってハーモニーを楽しむ。
カミーユ・ヨレーヌ(インフルエンサー、モデル)
「私たちの持つものには、すべてストーリーがあるんです」と語るカミーユにとって、食器すべてが宝物。水差しは花瓶にもなるので、つい集めてしまう。好みが明確なので、各地から集めた雑多なものでも、並べると自然と調和する。photography: Lucie Cipolla
パリ20区、昔ながらの風情が残るエリアに暮らすカミーユ。ボーイフレンドと一緒に購入したアパルトマンには、ふたりがヨーロッパ各地で見つけたブロカントや、家族から譲り受けた思い入れのある品でいっぱい。白い食器棚には、絵皿と一緒に、カミーユ自慢の水差しコレクションが鎮座している。「田舎のブロカントは安いのが魅力。中でもアルザスのブロカントは、自分のルーツがあるからか、何を買ってもインテリアにマッチします。ブロカント選びのコツ? 考えたりせずに直感で買うこと!」
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快適な食生活には十分な収納が必須! 見せる棚と隠す棚を使い分ける。
ジャンヌ・ドゥロー(ビューティージャーナリスト)
ダイニングキッチンのオープンシェルフの一角。奈良美智の作品はアパルトマンのあちこちに飾られている。photography: Mariko Omura
カラフルでグラフィックな壁紙を駆使した、ジャンヌのアパルトマン。キッチンは黄色と白のストライプで覆われて、明るく陽気な雰囲気だ。食事の時間を大事にする彼女は、料理をするにも人を招くにも、快適な環境と収納が必要と考えた。オープンシェルフには、自慢の食器、調味料、食材に加えて、お気に入り作家のオブジェも飾り付け。一方で背の低い食器棚には、さほど目に美しくないものを隠すことにしたが、このアイデアが大成功! 好きなものだけが視野に入るプライベート空間に整った。
低い食器棚の上には、アート作品と一緒に果物をディスプレイ。photography: Mariko Omura
*この記事は、madame FIGARO.jpの2017年10月~2024年10月の記事を再編集し、制作したものです。
editing: ERI ARIMOTO