attitude クリエイターの言葉

仕事も子育ても奮闘する、リアルな女性宇宙飛行士の物語。

インタビュー

働くことと子どもを育てること、母の葛藤を宇宙飛行士に託して。

アリス・ウィ​ンクール|映画監督

監督デビュー作『博士と私の危険な関係』(2012年)でセザール賞新人監督賞にノミネートされたアリス・ウィンクール。長編第3作『約束の宇宙』は、新プロジェクトのクルーに抜擢されるもシングルマザーとしてまだ幼い娘を地球に残して旅立つことに葛藤する、宇宙飛行士サラ(エヴァ・グリーン)と娘の物語だ。

「子どもの頃から宇宙に憧れていて、宇宙飛行士はスーパーヒーローだと思っていました。でもアメリカ映画で描かれる女性宇宙飛行士は、子どもの存在が希薄。だから、仕事も子育てもするリアルな母親としての彼女たちの姿を描きたかったんです」

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欧州宇宙機関(ESA)で訓練中のフランス人宇宙飛行士のサラは、「プロキシマ」というミッションのクルーに選ばれ、夢だった宇宙行きが決まる。旅立ちまで約2カ月。同僚の宇宙飛行士らと合流するため、離婚した夫に7歳の娘ステラを託すが、学習障害を持つ彼女を置いて旅立つことへの不安を募らせる。『約束の宇宙』は、TOHOシネマズ シャンテほか全国にて公開中。

実娘との経験を反映した、リアルな感情ドラマ。

本作は、欧州宇宙機関の全面的な協力によって作られている。ロケ地としても実在の施設が登場するが、アリスは脚本を書く段階でも、施設を訪問し、多くの宇宙飛行士に取材したという。

「特に印象に残っているのは、カナダのジュリー・パイエットですね。彼女は離婚してひとりで子育てしていて、この物語に共感してくれました。前向きで、母親であることはいくつものことを同時にこなすいい訓練になるとも言っていました」

主人公サラには、同時に自分自身も投影しているという。

「サラの娘ステラは7歳という設定ですが、私にも同じ年頃の娘がいます。映画の撮影やプロモーションで長い間家を空けることも多く、サラの葛藤は私の葛藤でもあるんです。この映画を作るために、8カ月くらい娘と離れていましたし。娘からは『宇宙に行くより長いんじゃない?』って言われました。実は、娘のためにこの映画を撮ったという面もあり、娘をステラ役で出演させたかった。でも、娘から『違う人の映画なら出るけど』って断られましたね。彼女の主張は正しい。彼女には彼女の世界がありますから、親の夢に付き合わせるのは勝手というものです」

お互いが自立し、自らの生き方を選んでいく。子どもをひとりの人間として見る彼女の視点は、経験に基づいているだけあり、説得力がある。

「母親が娘を守ろうとしてしたことでも、それは自分の願望でしかないとも言える。サラはそんな自分から解放され、自由になっていくんです。地球から宇宙を眺めるようにと娘に望遠鏡をプレゼントしますが、娘はそれを使って地球上の男の子の姿を追いかけるんです(笑)」

サラとステラの母娘が葛藤の末に辿り着く結末に、多くの女性たちが共感するはずだ。

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アリス・ウィンクール/Alice Winocour
1976年、パリ生まれ。名門フランス国立映像音響芸術学院を卒業後、『博士と私の危険な関係』(2012年)で長編監督デビュー。アカデミー賞外国語映画賞候補になった『裸足の季節』(15年)では、セザール賞最優秀脚本賞を受賞した。

*「フィガロジャポン」2021年6月号より抜粋

interview et texte : ATSUKO TATSUTA

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