クリエイターの言葉
レインボーカラーのユニフォームに思いを込めた、同性カップルのサッカー選手。
インタビュー
差別反対を、ユニフォームに掲げて。
アンナ・ブレッセ & ララ・ディッケンマン|サッカー選手
ドイツ女子プロサッカーリーグのトップチーム、VfLヴォルフスブルクで活躍する現役の選手、アンナ・ブレッセとララ・ディッケンマン。それぞれ、ドイツ代表、スイス代表選手として国際大会にも出場するふたりは、実はプライベートでは、同性婚をしているパートナーでもある。2017年から同性婚が合法化されているドイツで結婚したふたりだが、ララの出身地であるスイスでは同性婚が認められていない。ドイツでも、まだ出産や養子縁組などの点でレズビアンのカップルに対する権利は同等ではなく、差別は存在する。アンナは、ホモフォビア(同性愛嫌悪)や自分らしく生きることをテーマにした漫画の原案を提供したり、ララもテレビのインタビューでカミングアウトを行うなど、よりオープンで多様性のある社会を実現するための活動を続けている。
「自らのセクシャリティに直面して悩んだ13歳くらいの頃に、社会にお手本にできるような人がまったく見当たらなかったんです」
ララは、テレビでのカミングアウトを決断した理由をこう語る。
「私が外に出てカミングアウトすることで、悩んでいる人の足がかりになればいいなと思って。それに、オープンにすることによって、さまざまな人が交流して学び合う機会も生まれて、憎しみや差別が減っていき、社会全体がよくなっていくんじゃないでしょうか」
アンナも、インスタグラムのフォロワーからの「あなたのおかげで公表する勇気が出た」というコメントをとても誇りに思っていると言う。彼女自身は、19歳から所属するVfLヴォルフスブルクが、同性愛に限らず、あらゆる差別を許さないオープンなチームであることに助けられてきたそうだ。ララとの結婚についても、チームメイトや監督だけでなくCEOからも祝福のメッセージをもらった。
3月には、ダイバーシティウィークに合わせて、男子も女子も差別反対の意思表示としてレインボーカラーのユニフォームを身に着けて試合に臨んだ。キャプテンマークは虹色のアームバンドだ。これは17年に女子チームのキャプテンがつけ始めたもので、翌年からは男女、そしてジュニアもそれに倣っている。

ドイツ・ヴォルフスブルクに本拠地を置くサッカークラブ、VfLヴォルフスブルクが制作した、ダイバーシティ推進や差別反対を表明するレインボーカラーのユニフォーム。50枚限定で、VfLヴォルフスブルクのファンショップで販売したところ、あっという間に売り切れたが、試合での装着自体は今後も行っていくというので要注目だ。ドイツの国内サッカーリーグ、ブンデスリーガ20-21シーズンは、男子チームの全試合をスカパー!で独占生中継中。
引退を考えているというアンナとララだが、今後は一緒にさまざまな場に出て、対話によって平等と反差別を促していきたいと言う。
「いまだにカミングアウトするには勇気が必要ですし、異なるセクシャリティを持つことは、肯定的であれ否定的であれ、特別視される傾向にある。だからこそ、保守的な人と話して理解してもらいたい。愛は、愛! それ以上でも以下でもない、ってことをね」
アンナ・ブレッセ(写真左):1987年、旧東ドイツ生まれ。ディフェンダー。2004年、U-19ドイツ代表で優勝。現チームで13、14年チャンピオンズリーグも優勝している。instagram:@anna_blaesse9 ララ・ディッケンマン(写真右):85年、スイス生まれ。ミッドフィルダー。02年からスイス代表、オハイオ州立大学で政治学を学ぶ。15年から現チーム。instagram:@ld_21
*「フィガロジャポン」2021年7月号より抜粋
text: Hideko Kawachi