犬山紙子がいま思うこと

私はしっくりきたいだけ

犬山紙子がいま思うこと

文:犬山紙子

私は最近似合う、似合わないをしっくりくる、しっくりこないと言うようになった。人の肌や性別や体系や年齢や顔立ちで本当に似合う、似合わないって決まっちゃうんだろうかとどうしても思ってしまう。似合う、似合わないと断言して良いものなんだろうか。もうちょっと主観的な言い回しの方がいい気がする。あくまでこれは私の感覚の話だけれども。

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photo : iStock

パーソナルカラー診断を否定する話ではないのです。心理学的理論に基づく審美感を指標として、コスメや服選びが随分楽になった人もいるだろうし、新しい魅力を見つけた人もいるんだろう。それは人の知恵で「この色にしなさい!」と強制をするものでもない。ポジティブにその理論を利用している人を見ると素直に素敵だなと思う。

でもこの色私には似合わないはずだけど、好きだな......と思っていたり、この服、私の体系だと似合わないよね......と思っていたり。似合う似合わないからこぼれ落ちた好きをどう処理したらいいんだろう? 私自身ずーっと「青が好きだけどあんまり似合わない」「ノースリーブやハイネックが苦手」という気持ちを抱え続けていた。

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例えば6、7年くらい前に赤リップがばーっと流行った時に、最初「私には似合わない」と思った人は結構いるのではないのかなと思うんです。私もそうで理由は簡単、慣れてないから。それまではヌード系のリップだったり、グロスでテカテカとピンクに輝かせていたから急な赤の鮮烈さにたじろいでしまった。こいつを私はつけこなせない、私に赤リップは似合わないって一度思った。それでも、憧れの女性たちがつけているのが素敵だったし諦めたくもなかった。結局指先でポンポンと輪郭をぼやかすことで私は赤リップをつけて外に出られるようになったし「しっくりきたなあ」と思うに至った。今はむしろヌードリップにチャレンジしたいがまだしっくりこずに右往左往している。太眉の時も同じような気持ちだったっけ。

同じ人でも、慣れだったり心構えでしっくりくるしっくりこないは変わってくるんだなとその時私は思ったのです。コンプレックスをさらけ出すこともしっくりこないカテゴリに入れがちだったりするのですが、じゃあ私がコンプレックスに思っている太い二の腕をばんと出してノースリーブドレスを着こなすマダムが変かというと、それはもう最高にかっこいいわけで。彼女たちの姿を見続けることで、いつか私もノースリーブがしっくりくる日がくるのかもしれない。コンプレックスを急になくせやしないけど、勇気はこうやってたくさんもらえるものですからね。

青だって、これを書いているいま青のアイラインをピッと引いてみたらとってもかわいいじゃないですか。ああ、白シャツにカラーアイライン合わせるのこの春たくさんしよう。

しかしハイネックはしっくりくる日が来ないような気がする。これは首回りに何かがあるのが苦しく感じちゃうという理由があるから。黒のハイネックのノースリーブに白のワイドパンツ、髪は刈り上げ、なんてスタイルに憧れるけど、それは素敵なお姉さま方を見て「きゃー素敵」なんて騒いで楽しむことにします。

犬山紙子

イラストレーター、エッセイスト。1981年、大阪府生まれ。2011年『負け美女 ルックスが仇になる』(マガジンハウス刊)にてデビュー。

日本テレビの「スッキリ」をはじめ、コメンテーターとしても活躍。2017年に1月に長女を出産。

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