「齊藤工 活動寫眞館」について

齊藤工 活動寫眞館・番外編 齊藤工 in NY。後編

「齊藤工 活動寫眞館」について

俳優、斎藤工。そして、映画監督、齊藤工。表舞台であらゆる「男」を演じ、裏方にまわり物語をクリエイトしていく。齊藤工がいま見つめるものとは、何か。彼自身がシャッターを切り、選び出す。モノクロームの世界に広がる、「生きた時間」を公開していきます。今回はフィガロジャポン11月号発売に合わせた番外編の後編。齊藤がニューヨークでの北米最大の日本映画祭「JAPAN CUTS 〜ジャパン・カッツ!」に参加して感じたこと、そして今回を含め海外での作品発表について、いま思うこととは。

>>前編はこちら。

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『ラーメン・テー』で幕を開けた「JAPAN CUTS」の2日目の夜には、『blank13』の上映が控えていた。日中、齊藤はフィガロジャポンの連載「活動寫眞館」11月号(9月20日発売)のために、ニューヨークを拠点に女優・モデルとして活躍するTAOの撮影を敢行。その後ニューヨーク近代美術館(MoMA)へ向かったという。

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マンハッタンのビル群を臨むロケーションで、TAOを撮影。TAOは「JAPAN CUTS」の上映にも来てくれたそう。

「『blank13』プロデューサーの小林有衣子さんが美術の番組を担当していて、MoMAでどうしても観たい絵があるのは知っていたんです。昼頃からTAOさんの撮影を始めて、その後『blank13』の上映までに時間があったので、行きましょう!と僕から提案して。その日はユニクロがサービスをしていてタダです、と言われて、(*1)すごく素敵だなと思いました。そういう機会だからというのもあるのか、MoMAには子どもたちもいっぱい来ていたんですよ。ニューヨークならではなのかもしれないなと思いました」

*1 毎週金曜日16時から20時までのMoMA入館料を無料にするプログラム「ユニクロ・フリー・フライデー・ナイト」。

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MoMAで齊藤たちが観たかったのは、ピエト・モンドリアンの絵画だったとか。

海外に向けて、作品を発表することの意味。

目まぐるしいスケジュールの中でも、齊藤は監督作『blank13』が上演される映画祭には頻繁に足を運んでいる。映画祭について、ひいては国外の観客に向けて作品を発表することについて、いま思うこととは。

「間もなく、企画制作を担当するスプラッター映画『万力』がクランクインします。日本だとコンプライアンスでできないことも詰めこんだ作品ではあるんですが、スペインのシッチェス映画祭(*2)をゴール地点として目指そう、とプランニングしていたら、このあいだ撮ったHBOアジアのドラマ『Tatami』*3)が何とシッチェスに呼ばれて、ワールドプレミアが10月のシッチェス映画祭になったんです。

園子温さん、三池崇史さん、塚本晋也さんらも常連のファンタスティック映画祭で、キアヌ・リーブスもほぼ毎年来ていて、イーライ・ロスやギャスパー・ノエが会場近くで飲んでいるんです。以前参加して、この場所に戻ってきたいな、という思いもありました。結果的に、ということはあっても、ここを目がけて制作される映画って日本映画ではおそらくないんですよね。僕はハリウッドというよりはヨーロッパに向けて、何が日本的なんだろう、といつも考えます。アスガー・ファルハディの映画を観たりしながら(笑)。国外に向けて何を武器にしているんだろう、と。主演の女優さんがアカデミー賞授賞式への出席を辞退して(*4)、それがトピックスとなって映画への追い風になっていたりはすると思うんですけれど」

*2 シッチェス・カタロニア国際映画祭。ファンタジー映画やSF映画・ホラー映画・アニメーション映画などに特化した、ベルギー・ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭、ポルトガル・ポルト国際映画祭と並ぶ世界三大ファンタスティック映画祭のひとつ。

*3 HBOアジアが、アジア各国の監督6名を迎えて製作したドラマ「Folklore」に、齊藤が日本代表の監督として参加。タイトルは「Tatami」、北村一輝・神野三鈴らが出演。

*4 17年、トランプ大統領が「テロ懸念国」と指定したイランなど7カ国からの入国を禁止する大統領令に署名したことに抗議して、オスカーにノミネートされたアスガー・ファルハディ監督の映画『セールスマン』主演女優タラネ・アリシュスティがアカデミー賞への出席を辞退するとツイッターで発言。ファルハディ監督も授賞式を欠席した。

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地下から立ち昇る蒸気は、マンハッタンの象徴的な光景のひとつ。

「でも、僕らにも日本のソースはいっぱいあるじゃないですか。ただそれを使って日本国内に向けて作ろうとすると、すべてマイルドに、滑らかになっていく。日本は映画を観るのにもチケット代が世界一高くて、観る人のベースが辛口になってしまうのは日本のシステムにも原因があるんじゃないかなと思います。自分はもっと外に向けてものを作っていこうと心に決めて、そういう意味ではエリック(・クー)を通じて映画セールスの側面をかなり勉強させていただいたなと思いますし、そんなエリックの作品がニューヨークという場所でどう受け止められるのか気になっていましたが、とてもいい上映だったなと思います。エリックは翌日の『blank13』上映の宣伝までしてくれて(笑)」

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ジャパン・ソサエティーが位置するストリート。

「今回、通訳の方に付いていただいたんですけれど、この状況ではまだまだ自分はダメだなと思いました。通訳の方なしでちゃんと英語でコミュニケーションを取れるようにしていかないと、クリエイターとして、プレイヤーとしても、僕が目指しているところには行けないなと感じましたね。翻訳アプリなどは進化しているけれど、やっぱり僕の世代なんかはまだ、ちゃんと言葉でアイデンティティを表現しないといけないな、と思います」

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『blank13』上映後のQ&Aにて。ジャパン・ソサエティーのスタッフが、齊藤や樹木希林ら日本からのゲストをサポート。photo : MIKE NOGAMI

『ラーメン・テー』では言葉や文化を超えてニューヨーカーたちの心の琴線に触れ、そして彼らのリアクションを直に感じてきた齊藤は、その経験を糧としながらさらに遠くへ飛び立とうとしているようだ。再びこの街に戻ってくる日はいつ、どんな作品を携えてなのか。写真に刻まれた光景もまたその時には違った表情を彼に見せるのかもしれない。

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>>齊藤工 in NY。前編はこちら。

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TAKUMI SAITOH
移動映画館プロジェクト「cinéma bird」主宰。監督作『blank13』(18年)が国内外の映画祭で7冠獲得。アジア各国の監督6名を迎えて製作されたHBOアジアのドラマ「Folklore」に日本代表の監督として参加。企画・プロデュース・主演を務める『万力』が20年に公開予定。www.b-b-h.jp/actor/saitohtakumi

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