TAO'S NEW YORK NOTES

【TAO連載vol.6】ディベートが変える世界。

TAO'S NEW YORK NOTES

先日日本人の友だちと、日本政府が国際捕鯨委員会から脱退を表明したことについての話題になった。

ちょくちょく海外に出張に来るその友人は、「こっち(アメリカ)に来るとよく日本人だからってその話題に触れられるんだよね、ちゃんと実態を知らないのにバッシングをされるから嫌だ」と話していた。

もちろん早口の外国語でそう言った内容の話をされれば、バッシングを受けていると捉えてしまいがちだと思う。しかしそうではないのだ。

こちらは小さい頃からディベート(討論)ができるようになるように教育を受けているとよく聞く。実際に教育現場を見たわけではないので断言しかねるが、周りの外国人と接しているとやはり噂ではなく、しっかりとその能力を備えている人が多い。

それは堅苦しい場所だけではなく、パーティやディナー、飲みの席といった日常で繰り広げられるのだ。

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最近仲良くしているソチオリンピックアメリカ代表のシブタニ兄妹は、日系だけどアメリカで育っているためディベートが上手。まだ20代なのにしっかりした意見にいつも感心させられます。

かたや日本人は言わずもがなとても苦手である。だからこういうトピックになると、「攻撃されている」と思ってしまう。そして反対意見を言うことも苦手なので、その場の誰かが言った発言になんとなく同調してしまう。

こちらの人がしたいのはひとりの日本人を相手に日本が悪い国だと罪悪感を持たせたいわけではなく、自分の聞いた情報といま現在の自分の意見を踏まえ、実際に日本から来た一日本人がどういう考えを持っているのか知りたいだけ。それは攻撃ではなく、興味であり、探究心なのだ。

ここで間違いを起こしやすいのが、「油だけ取って鯨を廃棄していた国の人たちからは言われたくない」なんていう反撃の仕方である。
これではひとつの国の人々はみんなが同じ意見だというありえない見方で概括的に相手を見ているし、同じように日本政府が決めたことを日本国民全員が賛成していると思われるのと一緒になってしまう。それは本望ではないはずだ。

もちろん海外の人にもディベートの上手い下手があり、ちゃんと相手の意見を尊重し踏まえた上で丁寧に自分の意見を言える人もいれば、やはり攻撃的になってしまう人もいる。相手の意見を聞けない人は反則負けとして、無視してもいい、という私の自己ルールがあったりする。

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ただ本当に「知りたい!」という意味で「なぜ日本はあの決断をしたの?」と聞かれたら、私の知る範囲で、私というひとりの人間の意見として答えさせてもらう。

またここで犯しがちな間違いは、「よく知らないから喋らないほうがいい」と思ってしまうことである。
もちろん理想はちゃんと勉強をして正解を知っている状態でそのディベートに立ち向かうことだが、何かの真実を全部知るなんてことはとうてい無理な話である。専門家であったって一生をかけて研究したりするものなのに、素人の私たちが隅から隅まで全情報を持っているなんて、まずありえない。

だからといって「喋らないほうがいい」は何も生み出さない。
「私はこう聞いたよ、こういう文献を読んだよ」という姿勢で話すことができれば、相手だってそれが100%確信の持てる話ではないけど、そういう報道があったり、それによって自分なりにどういう答えを導き出したのか伝わるものだ。

「ちゃんと知らないのに、いい加減な発言をしないでほしい」なんていうのもよく聞く話だ。
全部の事実を知らないと発言してはいけないなんてなると、誰も口を開けなくなるし、つまらない会話しか生まれないだろう。

そもそもほとんどの場合が白か黒かで判別できるわけではなく、Aの意見もBの意見もそれぞれに理にかなっていたり正義があるもので、AもBも世界全人類(動物や環境も)が幸せになれる答えというのは、残念ながら存在しないのではないかと思うのだ。だからこそお互いの主張を聞き、知り、考えて自分の「正義」を見つけることがとても重要なのだ。

「ニュースでこう言ってたから、誰かにこう聞いたから」というだけで自分の意見を持てないでいる人を見ると、社会人らしくないなと思ってしまう。

最近では沖縄米軍基地問題に対し芸能人たちが自分の意見を発言し、「芸能人のくせに軽々しく政治に発言するな」なんていう非難を受けているのを耳にした。

とっても残念な話である。政治の話は政治家にしかさせてはいけないのだろうか? 自分の住む社会、国なのに、役人たちが決めたことに黙ってついていくだけでいいのだろうか?

事実その問題に興味のなかった人たちに「彼らが話している問題って一体なんなのか?」という疑問を持たせるだけでも、大きく社会貢献していると思う。
それを鵜呑みにしてしまうのではなく、興味と探究心を芽生えさせることができればいいのだ。表に出る人たちの発言は「結果」ではなく「きっかけ」なのだから。

自分の意見をはっきり言ったり行動に起こしたりする人を、日本ではキツい人とか、過激な人などと煙たがる傾向がある。逆に波風を立てないように自分の発言を控える人、または持たない人を「平和主義者」なんて表現したりする。

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本当にそうだろうか? そんな人たちが世の中を平和にできるのだろうか?

自分には関係のないこと、よく知らないこととして無視する人が多くなってしまうと、日本はますます国際社会から遅れをとってしまうだろう。

次にこのような機会があったら周りに流されず、「私はこう聞いたからこう思ってたんだけど、どうなのかな?」と発言してみてはいかがだろう。
もし自分の知らないトピックであっても、知らん顔せずに、チャンスだと思って耳を傾けてほしい。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥である。

もちろん小さな集団の中で話されることがいきなり世界を変えることはないだろう。けれど言葉を交わすことによって、自分自身が思いやりのある豊かな価値観を持てるようになるし、何より自分自身の世界を変えることができるのだ。

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実際に沖縄に行って米軍基地についてインタビューをした時。自分の目や耳で確かめられると自分の発言にも自信が持てるようになる。

TAO

千葉県出身、ニューヨーク在住。14歳でモデルを始めた後、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』のヒロインとして女優デビュー。以降、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年)やドラマ「ハンニバル」「高い城の男」(ともに15年)など話題の映画やテレビドラマに出演。18年はHBOドラマ「ウエストワールド」や、日本では『ラプラスの魔女』や『マンハント』が公開され、国内外で活躍の場を広げる。
※TAOのオフィシャルインスタグラムでは、この連載で読みたいテーマを随時募集中。コメントまたはDMにてお知らせください。@taookamoto

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