TAO'S NEW YORK NOTES

【TAO連載vol.8】LAでの新生活

TAO'S NEW YORK NOTES

ニューヨークと比べてLAはスローだとよく言われるが、いま身をもってそれを実感中である。

大きなビジネスのヘッドクォーターや有名なランドマークはたくさんあるけど、ニューヨークと比べるとやはり田舎である。もともと東京から来た私には、少し”ゆっくり”過ぎるのだ。

とはいえそれは百も承知で越して来た。
自分に合わないとわかっていたからこそ、いままでもニューヨークに留まっていた。

LAは公共の交通機関があまり充実しておらず車移動が主であり、それは私のいちばんの心配であったが、意外にも運転にはすぐ慣れた。逆に乗りすぎて運動不足にならないようにニューヨークにいた時よりもなるべく歩くようにもなった。

ただ、やはりニューヨークのように道を歩いているだけで、ふらっと入ったバーで友だちに出くわしたりすることは減るだろう。
それは私がニューヨークの大好きなところだ。無計画に動いてもいろいろなことが起きる、不思議な街。片やLAは前もって計画しないとなかなか人には会いづらい。毎朝晩起こる渋滞にはまるとふだん車で30分の距離が倍の1時間になる。
ニューヨークは狭い地域にびっしりと店や学校や住居がはびこっているが、LAはひとつひとつの間隔が大きいし、広範囲にいろんなものが点在する。スペースの使い方が絶対的に差を生んでいると思われる。

もうひとつの懸念材料はロスの人たちが”Superficial:うわべだけ”と言われる点であった。

カフェやレストランに入ると空っぽの笑顔で「こんにちは! 調子はどう? 今日は何をする予定なの? あなた、肌がきれいね~」などと中身のない会話が始まる。いままでは、(私がどんな1日を送っていようと本当はあなたは何の興味もないくせに!)と思っていた。

映画やテレビ関係者にミーティングなので会いに行くと、照れてしまうぐらい私を褒めちぎり、「一緒に仕事ができることを楽しみにしてるわ!」なんて、お決まりで言うのだがその後何かに実際に発展することはほぼ皆無だったりもした。

こんな正直に話をしてくれない人々の中で、私は一体誰の言葉を信じて生きていけばいいのだ? こんな街には絶対に住めない!と感じていた。

しかし今回来てから2週間の間に出会った人々の中には、うわべだけの人ももちろんいたが、親切な人がダントツに多かった。

これはLAの人々が昔と比べて変わったのではなく、明らかに私自身の変化であった。

ガツガツメラメラしていた20代までとは違い、肩の力を抜いて物事を見れるようになった30代の私だからこそ感じられたものだった。
他人の発信するものに惑わされるのではなく、自分で自己評価と選択をできるようになってきた。

そして何と言っても自然の影響は偉大である。

天気が人の性格に影響することに気づいたのは、17歳で、イギリスに留学していた時だ。
どういう経緯だったかは忘れてしまったが、ホストファミリーがオーストラリアから来た留学生を1週間だけ受け入れたのだが、ある日そのオーストラリア人留学生が散歩から帰ってきた時に青い顔をして「道で人とすれ違ったからハローって言ったのに、無視されたのよ。信じられる?」と大変ショックを受けていた。
私が、「あなたはその人と知り合いだったの?」と聞くと、当然のように「いいえ」と答えた。

その時、あぁ、年中お日様が出ているところでは顔を上げて歩くし、イギリスのように年中曇りや雨が降っている場所では、人は下を向いて歩くんだ。会話が生まれないのは当たり前だと思った。

東京も同じだった。知らない人に都会の道で「こんにちは」と声をかける人は希少だろう。

その後私はパリに移り住み、そしてニューヨークに引っ越してからも、街行く他人と会話をする癖が身に付いていった。もともと慣れてないことだったはずなのに、身に付くととすごく気持ちの良い習慣になった。

そんな東京に住んでいた頃から比べて、大分変化があった私だが、LAの人々の人懐っこさにはいまだに圧倒されている。

ただ今回は自分を新たに変えるのではなく、いままでに身につけた習慣にレイヤーを増やすような感覚だ。

こちらの人のカルチャーである、親切で往々にうわべだけっぽい饒舌に時に甘えながらも、ハッキリ自分の意見を言うことを恐れず、流されることなく生活していきたいと思っている。

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近所から見えるハリウッドサイン。毎日天気が良いのでよく見える。

TAO

千葉県出身、LA在住。14歳でモデルを始めた後、2013年『ウルヴァリン:SAMURAI』のヒロインとして女優デビュー。以降、『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16年)やドラマ「ハンニバル」「高い城の男」(ともに15年)など話題の映画やテレビドラマに出演。18年はHBOドラマ「ウエストワールド」に出演、日本では『ラプラスの魔女』や『マンハント』が公開され、国内外で活躍の場を広げる。
※TAOのオフィシャルインスタグラムでは、この連載で読みたいテーマを随時募集中。コメントまたはDMにてお知らせください。@taookamoto

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